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第1話

 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

「……どこ?」


 目が覚めると知らない天井だった。

 いや、ほんと全く知らない場所で変な汗が噴き出てくる。

 テンパりながら周りを見ると、どうやら病院のベッドに寝ているっぽかった。

 残念ながら近くには誰もいなく、就寝時間を過ぎているのか仕切りの白いカーテンは閉じられている。


「えっと、なんだこれ。記憶がなんか滅茶苦茶なんだが」


 昨日の事を思い出そうとしたら、浴びるように酒を飲んだ俺の記憶と、学校の階段で足を滑らせた僕の記憶が交じり合うように思い出される。

 いや、それ以上他の記憶を思い出そうとすると、俺の記憶と僕の記憶が次々に思い出され混乱してしまう。

 なんだこれ? この僕って奴の記憶ってなんだ? 何故か他人って気が全くしないんだけど。ってかラッキーみたいな感情がわいた後急速に僕の記憶が薄れていっていくんだが?


 訳も分からず、ともかく鏡で自分の姿を確認する事にした。

 何故なら俺と僕とでは年齢も容姿も全く違うからだ。

 そして、ベッドの横にある姿見に映る驚いた俺の姿を見て固まってしまう。

 どのくらい固まっただろうか、衝撃を受けすぎて時間の感覚がなくて分からないが。ショックから戻ってきた俺は口を開いた。


「この姿って僕じゃないか。って事は、俺って……前世って事なのか?」


 呟きながら、妙にしっくりきた。

 と言うかそうなのだろう。俺は小汚い中年のおっさんで独り身で……なんかたぶんあほみたいに酒を飲んで真冬の路上で寝っ転がって意識がなくなっているから。凍死かなにかしたんだと思う。

 なんていうか……情けなさが半端ないけど。そう言うのが吹っ飛ぶほど僕……今世の俺の容姿が良い。

 アイドルグループに居ても違和感ないくらい整っている……と言うと言い過ぎかもしれないが、少なくとも俺は格好いいって思える。

 前世の俺は182センチ身長があったが、今世では165しかないから小柄に感じるが。記憶をたどればまだ高校1年みたいだし、これからまだまだ成長するだろう。

 ちょっと中性的な容姿だけど、ただただ男臭い容姿だった俺は憧れの容姿になれて満足だ。

 いや、まぁ記憶辿ってたら中性的な容姿って女受け悪いみたいだから、そこは多少残念だけど。流石に前世のような不細工だとやっぱり今世でも嫌われているっぽいからそこはいいや。


 摩訶不思議が体験中だが、どうも自分に都合が良くてテンションが上がってきた。

 とは言え時間を見たら早朝4時みたいだ。流石にこの時間から動き回るのはよろしくないだろう。

 記憶をたどるに、どうも階段から落ちて入院していたみたいだし。少し不安もある。


「まあいいや、とりあえず記憶の整理をしなきゃな」


 そう呟きつつベッドに横になり、俺は改めて今世の俺の事を確かめる事にするのだった。





「さて、まずは名前とか家族とかから確認するか」


 こうして時折呟いた方が記憶の整理もしやすいかと、意識して口にしてみる。

 同室の患者さんに聞かれたら頭を心配されるかもしれないが……まあその時はその時だろう。

 えっと、俺の名前は上田うえだ誠一郎せいいちろう。母親と姉1人と妹2人の5人家族で、父親は全員精子バンクから……。


「えっ、まじか?」


 つい口から出てしまったが、慌ててその辺りを記憶を掘り返してみると。どうも精子バンク提供ってのは普通みたいだ。

 そのおかげもあり、男女平等の理念がある程度守られる要因にもなっているみたい。

 学校で習った記憶もあるので本当なのだろう……凄い世界だ。


「あれっ、じゃあ男女の恋愛って……ああ、大丈夫なのか」


 不安がそのまま口に出てしまったが、男女間での恋愛も結婚も今では普通のようだった。

 割合的に言えば……1対1の結婚はほぼ上流社会限定であり、上流社会はその血統性の為に1対1が当然みたいだな。

 で、普通はと言うと……あれ? 男女共に独身って割合も高いのか。

 教科書に載ってた割合だと、男50%の女25%と……あれ?


「これ、ヤバい……」


 びっくりするほど高い男性の独身割合に、慌てて原因を記憶から引き出す。

 その辺りも同じく学校でしっかり習っていたみたいだ。

 同時に、割と詰んでいる状態に血の気が引いていく。

 精子バンクの発達と共に優秀な遺伝子に人気が集まるようになったと、そこでモテない女子の救済が行われている。

 うん、これはどうでも良いな。いや、良くないけど。

 でだ、そもそも基本結婚する男は上流社会の例外を除けばほぼほぼハーレム状態であり、10名以上なのが当然っと。


「そっか、1対1で結婚できるって男の為だったんだな」


 勿論そんな簡単な問題じゃないとは分かっているものの、ついそう口にしてしまう。

 こんな事を口にしてしまいたくなるのも無理はないだろう。

 要は1人の男がいくらでも女性を侍らせる事が出来る反面、あぶれた男には惨めな末路しかないって事だ。

 まだ学生の身分だから詳しい所は分からないんだけど、あぶれた男の末路は男だけ集められた所で説明を受けているみたいだ。


 簡単に言えば、そう言う誰にも相手にされない男はゴミ同然であり、未だに爺捨て山なんてものがあるそうだ。

 いや、ガチで教科書に50過ぎて子供を1人も作れていない男は、一定以上の社会的貢献をしていない限り殺処分って書いているんだよ。

 しかも、説明していた先生が男女平等の仕組みを利用した無能共の為の法律で、50まで生かしてもらえる事を感謝しろって言ってたし。


 え? この世界って世紀末? 女性だって50までに子供を産めなきゃ、一定以上の社会的貢献を達成しなきゃ財産全部取り上げられた上の低賃金奉仕とか。ヤバくね?


「えっ、いや、えっ?」


 冷汗が止まらない。

 冷静に男の半数が独り身って事はそれだけの人数殺処分って事で、平々凡々な俺はモテる気が一切しないって事で俺も殺処分になる未来しかみえねぇ。

 ってか、記憶がはっきりしてきたけど、今世の俺って唯一仲の良かった幼馴染の女の子に、別に好きな人が居ますって振られてんじゃねーか。

 それで、死んでもいいやってくらいショックを受けてて、足を滑らせるほど前後不覚となってて……。


「おい、いや、まじか?」


 つまりだ、ほっとした感情から妙に俺の意識がはっきりしてきて。俺のテンションが上がるたびに今世の僕の意識が消えてったのって。殺処分の未来しか見えないから俺に全て押し付けて来たのか?


「待て待て待て待て、ちょっと待て」


 凄く嫌な予感がして改めて今世の俺の普段の行いを思い出してみると……、何こいつ暴君? ってかまともに相手してくれている幼馴染相手ですら暴言吐いてんじゃん。

 そりゃ誰にもモテねーよ。ってか家族にはチヤホヤされてんのな、だからついつい天狗になってたと。

 ヤバい、怒りを通り越して呆れて来た。俺こんな奴の尻拭いしなきゃなんねーの?

 なら生まれた瞬間から記憶持ってて欲しかったし、高校1年って言う中途半端なタイミングで記憶戻りたくなかったぞ。

 既に女子達には嫌われてて、唯一の希望の幼馴染からも振られて……。


「わ、笑えねぇ」


 めっちゃラッキーて思ってたけど、ラッキーどころかどん底からじゃねーか。

 もし楽しんでいただけましたら、作者のパワーになりますのでブックマークや評価をよろしくお願いいたします。

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