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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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211「音速爆撃(2)」

「で、作戦と呼べるものでもないんだけど、明日なら魔法も全力で使えるし、倒すのではなく救出が目的だ。だから、魔物は全滅させる必要ないだろう」


 昨夜の作戦会議で、シズさんはそう切り出した。

 そう、昨日の夕方は、一気にノヴァへと向かうためヴァイスに高速飛行してもらうため、みんなの魔力や魔石の魔力を注ぎ込んで、こっちは半分以下、多分2、3割ほどしか魔力がなかった。

 だから、少し地味な戦闘をせざるを得なかっただけだ。

 その事は全員もう了承済みだ。


「それもそうね。で、どうするの?」


「こちらは少数だし、敵に合わせてやる必要もないだろう。地下施設があるなら、籠られたら厄介だ。

 そうだな、まずは空中から威嚇して、慌てて出てきた連中が集団を作るのを待って空から叩こう」


「ドラゴンゾンビ戦みたいにですか?」


「そうだ。向こうは数が多い。それにある程度の集団戦を行うだろうから、多少違うだろうがな。

 で、そこで魔力を使い切るまで空から攻撃して、一旦後退。魔物が人質を連れて拠点から逃げないかだけ監視しつつ、魔力が多少回復をしたら反復攻撃を繰り返す。魔物が減ったのを確認したら、そのまま乗り込んで博士をかっさらって撤退という流れでいいんじゃないか?」


 身振り手振りも加えて話すので解りやすい。


「何にせよ、遺跡に籠られると厄介そうね」


「とは言え、こちらの数は少ないから、まずは空から叩いて、その後は相手に集団戦をさせないようにしないと面倒だぞ」


「あのー、一つ手があるにはあるんだけど」


「ん? いつになく歯切れが悪いな」


 小さく手を挙げつつのボクっ娘の言葉に、オレは理解できないが二人は何となく察したようだ。

 微妙な顔をしている。


「それは、止めた方がいいと思うわよ」


「条約違反を気にしてるのか?」


「条約? 何か禁じ手があのか?」


「うん。禁じ手、条約違反。ボク達の先輩諸氏が、魔の大樹海を広げる原因になった戦争で使いまくったせいで、人同士の戦いでは絶対使っちゃダメな技があるんだ」


 初耳だ。けど、ルール無用な『ダブル』ならではの行動の結果というなら、納得も出来る話だ。

 と思っていると、みんながオレの為にトリビアしてくれた。


「その技は、オクシデントというか神殿の威光が及ぶ地域全体で、人に対して使う事を禁じられているわね」


「そうなんだ」


「うん。ほら、疾風の騎士って人同士の戦争には基本関わらないから、今までこの世界で問題にならなかったんだ。でも、昔の『ダブル』にそんなの関係ないでしょ。

 だから、敵対した国と軍隊に使いまくったら大問題になって、神殿巻き込んだ諸国間会議ってやつで、改めて使っちゃダメってことになったんだよ」


「けど、それはあくまで人同士の戦争、争いに対してだ。魔物相手で、魔の大樹海の上だから条約には引っかからない筈だ。それに、他に誰も見ていないだろうしな」


 そんなトリビアしてもらっても、具体的に何をするのかはオレの理解の外だ。

 表情にも分からないと書いてあると思うが、ここは口にするべきだろう。


「それは分かったけど、何をするんだ?」


「ショウは、もう一部は見てるよ」


「見てる? て事は、ソニックブームか?」


「正解。あれを地面スレスレで、一瞬じゃなくて長時間叩きつけるんだよ」


 何かすごい技を紹介されたが、今ひとつピンとこない。

 オレの間抜け面を見た三人も、もう少し説明が必要だと感じたようだ。

 そしてシズさんが反応した。


「さて、ちょっとした物理の時間だ。地上スレスレで強い衝撃が発生したら、その間にある地面のものはどうなると思う?」


「吹き飛ばされる?」


「真下だと吹き飛ぶ先は地面しかないぞ」


「……押し潰されますね」


「正解ね。よほど頑丈か、高位の防御魔法で固めてないと、岩でもない限りプレスされたみたいにペシャンコになるらしいわ」


「ちなみに、今から助けに行くレイ博士も、かつての行いの目撃者の筈だ」


 そういえば『賢者』と言うからには、10年以上前なら直に見ていても不思議はないだろう。


「レナは使ったことあるの?」


「訓練と、ちょっとした規模の魔物退治で何度かしてるよ。魔力はバカ食いするけど、する事自体は大して難しくないからね」


「魔力による使用可能時間だけが問題か」


「昨日ぶっ飛んできた時と同じくらい魔力が使えたら、最大10秒以上でもいけると思う」


「それはもう、伝説級の攻撃になるな」


 シズさんが苦笑するからよっぽどなのだろう。


「そうなんですか?」


「音は1秒間に何メートル進む?」


「あ、なるほど」


 確かに呆れる程の規模だ。

 音は秒速で340メートル進む。10秒もあれば、3キロ以上彼方だ。しかも実際はマッハ1以上出すので、もう個人で戦う規模の距離ではない。


「けど、そんな大技出すほど魔物がいますかね?」


「そうだな。それだけいたら、もう紛れもなく軍勢や軍団だな」


「じゃあ、短時間使うくらいでいいかな?」


「どちらにせよ、敵がまっすぐ並んでくれるように、おびき寄せたいところね」


「それならば、良い案がございます」


 話を聞いていたロリッ娘猫耳メイドが小さく挙手する。

 クロもそうだけど、こいつらが無駄な事は言わないのは皆の共通認識だ。


「聞こうか」


 だからシズさんが、小さく頷いて促す。


「現地はすでに開発の手が一部に入っており、魔物が拠点にしている遺跡も、元主様達が再利用できるように整備途中のものでした。ですが、一旦工事を保留したスキに魔物に乗っ取られました。

 しかし残念ながら、私が来る以前の事ですので、私は内部の詳細は存じ上げません」


 うん。なかなかに重要な情報だ。しかしスミレさんの言葉は続く。ここからが本命らしい。


「また、遺跡から数キロ手前の地点に戦闘にも適した切り開かれた場所があります。以前、遺跡の開発拠点となっていた場所で、一面が川に面しており小さな船着き場もあります。そしてそこの一角は、丸太の塀で囲われ中に小屋や見張り櫓がありましたが、魔物がそのまま砦として使っています。

 そして遺跡、開発拠点、そして森の外からそれらに至る場所には、かつての道路を再生する形で、ゴーレムに作らせた馬車が通れる道が伸びています。

 そしてこの開発の進展が、魔物の過剰反応を呼び込み、現在の戦闘の発端ともなりました」


 話しつつ、地面に木の枝で簡単な略図を書いていく。

 略図なのに、やたらと正確無比というか無機的な感じなのは、魔導器だからだろう。


「広場にいる魔物を叩いて、遺跡の本拠地にいる敵の主力をおびき寄せて、その道を進んでくる敵を一網打尽って事だね」


「そんなにうまくいくかしら?」


「広場の小さな拠点は、魔物達が使っている事は確認済みです。そして皆様が元主人様を攫った魔物の群れを壊滅させましたので、警戒していると予測されます」


「では、まずはそこを派手目に攻撃して、敵の本拠から増援が出て来るところを空から叩くという事でいいだろう」


 これで基本案は固まったと思うが、そんなに上手くはいかないだろう。

 みんなも同じような事を考えているようだ。

 それにオレとしては、この世界の大規模な集団同士の戦闘、いや戦争について知識が無さ過ぎるので、その点からも色々と分からない。

 だからここで聞いてみる事にした。


「なあ、空から攻撃するのはいいとして、その軍隊みたいな魔物から攻撃されたりしないのか? 普通は対策取ってるだろ?」


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