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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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200「巡礼(1)」

 ウィンダムで目覚めると、早々に巡礼の準備を始める。


 現実での事は、妹の話は誰かに話す事でもないし急ぎでもないので、当面放置でいいだろう。

 それよりも、こっちでの今日の儀式とかに集中したいところだ。

 そして当面の方向性を決めたので、隣の部屋の様子を音だけで伺ってみる。


 相変わらずオレは早起きみたいで、リビング用の部屋に入っても誰かが起きた気配はなかった。

 しかし早すぎるという事もなさそうなので、取り敢えず自力でできる準備だけ全部済ませていく。


 そうして一通り終えるとリビングの扉が開いて、軽快な足音が別の寝室へと向かった。

 そして扉が閉まる音を確認して、リビングへと入る。

 そうすると、もう一つの寝室からはガヤガヤと話し声が聞こえてきていた。


「オレ、一人でできる準備終わってるから、朝食頼みに行こうかー?」


「朝ご飯は運んでもらうようにさっき言ってきたから、そこで待っててねー」


「リョーカーイ」


 ボクっ娘はヴァイスの様子を見に行った時に、言ってきてくれたようだ。

 そうして待っていると、朝食が運ばれてすぐにも髪の毛から化粧から、しっかりと整えてきた3人が部屋から出てきた。


「おーっ!」


「感想は?」


 ハルカさんがドヤ顔だ。

 と言うより、こうした誰かに見せるという時は堂に入っている。


「いや、マジ、言葉が出てこない。マジ綺麗」


 普段は殆ど化粧もしないというか、したくてもなかなか出来ないので、衣装やアクセサリーも合わせて見違えた。

 普段でも十分可愛いし綺麗だけど、今はオレのボキャブラリー不足が恨めしい。

 シズさんが、何だかやり遂げた感じの表情で何度も頷いているで、髪や化粧はシズさんがやったんだろう。


「別にショウにだけ見せるもんじゃないんだけどねー」


「私も捨てたもんじゃないだろ」


 ボクっ娘は少しだけ顔に朱が刺していて、シズさんは自分の事に対してはいつも通りの自然体だ。


「捨てたもんどころか、どこかのモデルか女優さんとしか思えません」


「そりゃあ、シズさんはモデルさんしてるもんねー」


「レナ」


 シズさんの声が、怒ったりするほどじゃないが軽く咎める雰囲気を纏っている。

 それにボクっ娘が、ハッとなる。


「あっ、ご、ごめんなさい!」


「あー、今のは聞かなかったことにします」


「まあいいよ。隠すほどのことでもないし、そのうち話す事もあるだろうからな」


 そんなちょっとばかり微妙なやり取りもあったが、手早く朝食を済ませてオレの鎧をつけるの手伝ってもらうと、さっそく水皇の神殿へと向かう。

 と言っても、宿は神殿からほど近い場所で、真っ直ぐ歩いて10分ほどで神殿の凱旋門のような巨大な正門へと至る簡単な道のりだ。


 しかし、そうはいかなかった。

 馬車を呼んであったので、沿道で客寄せパンダになったりはしなかったが、神殿の門前で降りる時にアースガルズ王国の都ほどではないが野次馬が待っていた。


 それ以前に、宿を取った時点でハルカさんは記念のサインまでさせられている。

そもそも上級神殿巡察官という、神殿組織内でもウルトラレア級に少なく位が高い役職なので、ウィンダムのような宗教都市では注目を集めやすいのは仕方ないところだ。

 出る時も、宿の従業員が総出でお見送り状態だった。


 そして噂が広がっていたのか、昨日よりも注目を集めていた。

 それでも広い神殿内だと歩くのを邪魔されるほどではないし、声をかけられたりもしない。

 それに見物人連中は、上級神殿巡察官が大巡礼をしているという点に注目しているのであって、個人を見ているのではない筈だ。


 しかしオレ以外は、まあ美人揃いのせいか注目度はすごく高いように思える。

 添え物のオレは、顔が見えない全身鎧で良かったと思えるほどの注目度だ。

 3人は慣れたものといった風で、ボクっ娘など子供に手を振り返したりしている。疾風の騎士は、神殿関係だと特に人気が高いからだろう。



「ボク達人気者だね」


 ボクっ娘が周囲に愛想を振りまきつつ、3人だけに聞こえる小声で話しかけてきた。

 オレを含め3人も、時折同じように話しつつ道を進む。


「ボク達と言うより、人気なのはハルカだろ」


「そうですよね。偉い神官だし」


「そうでもないと思うわよ。大巡礼は過酷な旅って思われてるから、同行者もどんな人か見られるのよ」


「アースガルズじゃ、腕まで確かめられたしな」


「オレは、アクセルさんとガチで試合できて楽しかったですけど」


「なにその男の友情的発言。そういうキャラだった?」


 ハルカさんはちょっとご機嫌斜めな声色だけど、本気ではなく軽くからかっているだけだ。

 この2か月ほどの間に、そのくらいのことは簡単に察せるようになった。


「違うけど、楽しいものは楽しいよ」


「ボクも空での模擬空中戦とか大好きだね。ノヴァに行ったら少しして良い?」


「ええ、最低数日は滞在するだろうし、自由行動で良いと思うわよ」


「よしっ! それにしてもあれだね」


「あれって?」


 ボクっ娘が、雰囲気を少し変えてそれぞれを見る。何か気づいたことでもあるんだろうか。

 他の二人も、それが気になったようだ。


「神官のハルカさん中心の一行だから、三蔵法師の出てくるお話っぽくない?」


「西遊記か。確かにちょうど4人だな」


「でしょ。でもボクは、三蔵法師を乗せるお馬さんポジションな気がするから、もう一人お供が欲しいところだね」


「何にせよオレが豚役だな」


「ショウは、ハルカと一番深い主従契約しているのだから、一番弟子の斉天大聖のお猿さんだろ。私は魔法使いだから、それっぽいカッパの妖怪だな」


「沙悟浄って妖艶な美女でも似合いそうだねー」


「じゃあ、あと足りないのは豚さんだけど、一人スカウトしないといけないわね」


 (女子に豚とは言えないし)というオレの深謀遠慮の末の発言は、さらっと流されてしまった。

 確かに3人とも、豚という単語から随分遠いスタイルだ。

 まあ豚役は、すでにどこかにいるであろう悠里か、これからやって来るタクミでいいだろ。


「2週間もしたらタクミが来るから、声かけてみるか」


「それは歓迎だけど、旅の合間に鍛えるとなると忙しそうね」


「鍛えるの前提なんだ。流石ハルカさん」


 オレはウンウンと頷くも、ボクっ娘が地味に引いていた。

 ハルカさんも、ボクっ娘のツッコミに僅かに動揺が見られた。

 二人して自覚がないのは、ある意味いつも通りだけど、タクミ相手なので加減が必要かもしれない。


 そんな事を考えている間に神殿の大聖堂に到着。

 流石に立派で圧倒される大きさと荘厳さってやつだったが、客寄せパンダ状態なので建物を見ている余裕はあまり無かった。

 それなりの数の人がいる中を進んで、祭壇にいる聖地を治める大神官よりのお言葉をいただく。

 そして参拝や巡礼としては、かなり仰々しいやり取りが行われる。


 しかしオレ達の一番の関心は、その祭壇の奥にある大きく立派な金色の聖杯だ。

 いつ輝き出して、ハルカさんを聖女認定するのか気が気でなかった。


 かなり光ったときは焦りもしたが、幸い聖人を示す輝きや反応は見られなかった。

 おかげで巡礼自体は、昨夜ハルカさんが言った通り、短時間でつつがなくというか呆気なく終わった。

 事前に多めの賄賂、もとい寄進をしたおかげもあるかもしれない。


 そして巡礼の証として、アースガルズ王国の大神殿で既に貰っていた黄金製のアミュレットに嵌められた9つの魔石のうち一つが、見るからに特別な水皇の神殿だけにあるという聖杯を用いた魔法で藍色に染まり、巡礼の証となる。

 このネックレスの魔石のうち3分の2、6つ以上をそれぞれの聖地で染めれば、大巡礼は成功となるそうだ。


 世界を半周するほどの旅なので、空の旅で巡っても相当な日数がかかるが、これを陸路と海路だけで何年もかけて行う巡礼者もいて、そういう人は生涯を巡礼に捧げる場合もある。

 そんな過酷な大巡礼だけど、ボクっ娘とヴァイスにかかれば「最速で3ヶ月」だそうだ。

 移動手段の違いで、随分と落差のある旅でもある。


 そしてオレたちの場合は、調べ物もあるので半年程度はかけたいというのが当面の予定だ。

 もっとも、このウィンダムの水皇の神殿では、調べ物をする予定はない。


 と言うのも、『ダブル』達が散々調べ上げた資料がノヴァにあるのと、ハルカさんはここでかなり勉強したりして資料にも目を通しているので、目ぼしいものはないと判断しているからだ。


 それに水皇は、水以外に芸術や工芸、美しいものを司るというだけあって、あんまり知識を溜め込んだり、古い記録が残されていたりしないらしい。

 残っていても芸術関連のものばかりで、神官やその他諸々の関係者も、そう言った浮世離れしたものに興味が向いているそうだ。

 なんとも気楽なことだ。


 水が強く関わる魔法だけは例外だけど、そもそも無から有、つまり何もないところから水を生み出したり作り出したりする魔法が存在しない。

 どこかの異次元や異世界から、簡単に水を喚び出したりも出来ないし、精霊などの便利な存在もない。魔法で近くの水を移動させる事は出来るが、誰かが遠くから水を持ってきてくれたりもしない。

 周囲から水蒸気や地中の水分などの水を集めるという魔法はあるが、周りの湿度に左右される上に、少しの水を集めるのがやっとだ。


 また氷を作り出すのは、温度変化の魔法の一種なので水とは直接の関係がない。

 そして水と同じ様に、何も無い状態から氷を生み出したり出来るわけでもない。

 ただ究極の氷系というか冷却系の魔法は、相応の時間が必要な大規模魔法ながら地域一体を温度変化によって寒冷化するので、非常に危険で強力なのだそうだ。

 伝承では、大国を滅ぼしたという逸話もある。


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