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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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197「それぞれの現状報告(1)」

 ウィンダムの豪華な旅館で寝て起きたら、例のごとくオレの部屋。


 明日向こうでは早起きした方がいいかなあ、とか思いつつ目覚めを迎える。

 こちらでは、今日は朝からランチタイムが終わるまでバイトに入って、そこから先は夕方まで玲奈とのデート。

 実に充実した夏休みだ。


「てか、お盆もバイト?」


 今朝も妹の悠里から話しかけてきた。

 このところコミュニケーションが普通に取れているのは、お盆で勉強少なめだからストレスフリーのせいだろう。


「書き入れ時だからな」


「じゃあずっと?」


「ほぼシフト埋めてる」


「そんなに稼いでどうすんの? キモいオタクグッズでも買うの? アニメのキモい人形とかだけは止めろよ」


 ジト目で、本当にキモそうな口調だ。

 けどオレは物欲が薄いせいか、悠里の言うところのキモい人形は持っていない。あるのは、子供の頃に買ってもらったハリウッドの格好いいヒーローくらいだ。

 それにポスターとかも、オタクっぽいものは張ってない。


 中学時代の竹刀とかちょっとした筋トレグッズがそのまま転がっているので、部屋の見た目は体育会系っぽい気がする。

 オタクらしいのは本棚の中くらいだけど、本やマンガもスマホの電子書籍がかなりを占めるので、妹様の評価はかなり厳しいと思わなくも無い。


「格好いいやつで、ちょっと欲しいのあるけどな」


「うわっ、さすがキモオタ。だからそんなに稼ぐのかよ」


「学校始まったら、あんま稼げないからだけだって」


「翔太、9月からお小遣いいらないんだって〜」


 妹と話してたら、キッチンからマイマザーの密告だ。

 おかげで妹の悠里が怪訝な表情になってしまった。


「何考えてんの?」


「塾じゃなくて家庭教師にしてもらったし、バイト代は夏休み間だけで今までの小遣い1年分以上になるからな」


 我ながら実に合理的な判断だ。

 しかし、妹様の評価は違っていた。


「何言い訳してんの。そんなの聞いてないっての」


「そんなに悠長にしてていいの、今日は早いんでしょー」


「あっ、やっべ。じゃ、今日は晩飯には帰るから」


「働け働け。あっ、バイト代でたら何か買ってねー」


「おう、任せろ!」


 勢いで出たオレの言葉に、冗談のつもりで言ったであろう悠里が目を丸くしていた。

 こっちはけっこう本気だったんだけど。



 そしてこの日は朝からバイトなのだけど、着替えなどがあるので15分前には到着。まだまだ新米なので、遅くとも5分前までには仕事に入れるようにしている。

 そうして着替えていると、タクミも更衣室に入ってきた。


「うーっす!」


「うーっす。朝からテンション高いな」


「おうっ。昨日もちゃんと前兆夢あったぞ」


 そう言ってサムズアップだ。

 そしてそのまま、グーを出して来たので応えてやる。


「そりゃあ何より。で、何か変化は?」


「何か、もやもやした小さい人型の何かと戦った」


 両手で背丈とかこんな形、みたいなゼスチャーが添えられる。


「なるほど。みんなもそんな事言ってたな」


「マジか。他に何か有益な情報は?」


「なるべく前兆夢で粘れ。その分だけ、最初から強くなるし、職業の幅が広がるらしい」


「誰情報? 常磐さん?」


 口調と視線が、何か探る感じだ。


「色んな人から。……タクミって、あっちの話だと最近はまずシズさんって言うようになったな」


「そりゃあショウ以外で、唯一向こうの人って知ってるからな」


「美人だからだろ。けど、やめとけ」


「何でさ。ま、まさかーっ!」


 めっちゃわざとらしく驚いている。

 思わず苦笑しそうになる。


「いや、オレの手が届く相手じゃないぞ。高嶺の花ってだけ」


「けどショウは、向こうでは一緒に行動してるんだろ」


「うん、成り行きでな。めっちゃ頼りになるし」


「そんなに?」


 少しでもシズさんの情報を知りたいのが丸分かりだ。

 こういうタクミは少し珍しい。


「オレが知る限りって、まあ大して知らないけど、それでも一番すごい魔法使い」


「へーっ。まあそういうの抜きに、向こうで会ってみたいな」


「驚くぞ。他にも驚くこと多いと思うけど」


「そんな事言っても、もう羨ましくないぞ。一ヶ月後を待ってろ」


 そこで思い出す事がある。前兆夢の出現期間だ。


「あっそうだ。もう一つ」


「何?」


「大量召喚での前兆夢は、緊急召喚で期間が短いらしいって言ったけど、早いと1週間って場合もあるから、尚の事粘れるように踏ん張れよ」


「ラジャ。情報サンキュ」


「ユゥアーウェルカム」


 着替えたり身だしなみを整えながら話していると、そろそろバイトの時間だ。

 その日のバイトは、お盆でも帰省しない暇人が多いらしく盛況だった。

 おかげで休憩もろくにできず、しかも客足の関係で上がるのが15分も超過してしまった。


 当然、玲奈を待たせることになった。

 「彼女さん、来てもう30分くらい経つよ」と、ホール担当の女子大生の先輩に肘で小突かれつつ、いそいそと着替え一旦裏から外に出る。

 そして外から店に入り直す。



「お待たせ〜」


「お疲れ様」


「どうする? 移動する?」


「この後どうするか、相談してからお店出ない?」


「それ名案。ごめんな、この後のプラン全然立ててないんだ」


「私も」


 普通ならプランなしのデートとかマジ怒りの対象だろうが、一応昨日の夜に予防線を引いてたお陰か、玲奈はごく当たり前に受け入れてくれた。

 というわけで店員から客になって、ドリンクだけ頼んでこの後のプランを練る。


 と言っても、懐はあと2週間ほど寂しいし、夕食までとなると4、5時間しかない。それに高校1年生が行ける場所などたかが知れている。


 行楽地も都心の繁華街も相応の距離があるし、行くなら朝からじゃないと難しい。

 そうなると、カラオケ、ファミレス、ファーストフード、ボーリング場を中心にしたアミューズメント施設、それに諸々のあるショッピングモールが精々だ。


 彼女の趣味に沿えば図書館という選択肢もあるが、図書館だと話ができない。

 何にもないけど何でもできる、あちらとのギャップを思わず感じてしまう。

 というわけで相談の上での選択は、ゲーセンや大きめの本屋もあるショッピングモールとなった。


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