表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/402

196「それぞれの現状報告(2)」

「25日にバイト代出るから、その後どっか行かないか?」


 共通の趣味の本屋を話しながら堪能し、彼女が興味を向けたオレには縁のないお店をを幾つか巡って、とりあえずフードコートの一角に陣取る。

 時間も中途半端なので空いていたし、デザート系の店もそこそこ充実しているので、高校生がお茶をするには丁度いい。


「ど、どこかって?」


「海はもう季節過ぎてるし、山は一応こないだ合宿で行ったけど、玲奈は行ってないも同然だよなー」


「う、うん。けど、あっちで色々したから。怖かったけど楽しかった」


「そっか。けど、ハイキングとかあんまりだよな。じゃあじゃあ、水族館とかどう?」


 野郎一人で行くと虚しいことこの上ないが、定番のデートスポット。

 前から色々リサーチした結果の選択肢の一つだ。彼女も気にってくれたみたいで、嬉しそうに頷く。


 そしてそれでこっちでの予定が決まると、早々に本来話したいことに移行する。

 そのために、他の人からもあまり聞かれない場所に陣取っていた。


 「話変わるけど、というか今日の本命の、もう一人のレナのことなんだけど……」と前置きして、一通り説明していった。

 彼女は相槌を打つだけでオレが一方的に話すことになるが、全て真剣に聞いてくれた。


「私、元々もう一人の私を意識できてなかったけど、ここ数日あった繋がりみたいなのが薄れたのは同じだと思う」


「そうか。じゃあ、完全に二人に別れるのかな?」


「私もそうなってくれたらと思う。消えたりとか、嫌だし」


「そうだな。けどさ、レナは向こうの世界に本当に未練とかないのか?」


「うーん、どうだろう。行った感想は、住む場所じゃないって気持ちは今も一緒だよ」


「また、行ってみたいか?」


 言葉は直球だけど、口調は慎重に話してみた。


「うん。今度はもう少し穏やかな時になら」


「確かに、こないだは騒々しかったからなあ」


 オレの言葉に玲奈は苦笑する。


「騒々しいどころじゃないよ。ショウ君、戦いとかに慣れすぎ」


「向こうの人たちにも言われてる。あ、そうだ、ハルカさんがもう会えないって残念がってたぞ」


「私も。もっと話もしたかった」


 そう言う玲奈の表情は、目元を中心に優しげだ。

 二人の関係が良いまま出会って別れたのは、オレとしても凄く嬉しいところだ。


「じゃあさ、今度は二重人格じゃなくて、別の人格同士で入れ替われるようになれないかチャレンジしたらどうだ?」


「えっ? そんなの無理だよ。今回だって、どうして入れ替わったのか判らないのに」


「けど、まだ繋がりは残ってる感じがあるんだろ。じゃあ、脈ありなんじゃないか?」


「ショウ君って、そういうの軽く考えるよね」


「同じ思うなら、そう思った方がいいだろ」


 玲奈はクスクスと笑うが、これはオレの心からの言葉だ。


「そっか、そうだね。もっと大変な事に挑戦しようとしてるんだもんね」


 天沢にはすっかりお見通しのようだった。これは、彼女にも頭が上がらない気がする。


「まあ、な。流石に殆ど無理だとはオレも思ってるけど」


「私は何もできないけど、応援してる。私もハルカさんにこっちで逢いたい」


「そっか。そりゃ心強な。じゃあ、出来ること、出来そうなことから進めていくよ」


「うん。あ、そうだもう一つサプライズネタがあるって言ってたけど、向こうの人達の事なの?」


 すっかり忘れるところだった。済まないマイフレンド。


「あ、そうそう。タクミが前兆夢を見始めたんだ」


「本当! すごいね!」


「マジ、虚仮の一念なんとやらだよな」


「いつくらいに合流できそうなの?」


「大量召喚っていう特殊な状況らしいから、早ければ1週間、遅くとも2、3週間後だろうってのが向こうのベテランさん達の予想」


「マリアさんたち?」


 (そうか。こっちの玲奈も、マリアさん達とけっこう話したりしてたから、無関係じゃないんだよな)と思いつつも、それが言葉や感情には出ないようにした。


「そうそう。もうハーケン離れたから、しばらく会えないけどな」


「あの街から離れたんだ。今は?」


「水の女神の聖地があるところ」


「ウィーンじゃなくてウィンダムだっけ?」


「うん。芸術と音楽の都。その辺だけこっちと一緒」


「やっぱり違うの?」


 そうやって聞いては来るが、こっちの観光地について聞いてくるのと似たニュアンスだ。

 その辺からも、向こうへ持つ感情がタクミとは違っている。


「でかい神殿と門前町みたいな芸術街と宿屋ばっかりなイメージ。けどやっぱり門前町っぽいかな?」


「聖地だもんね」


「神殿自体に行くのは明日だけど、今度の講演会で話すことになると思う」


「うん。楽しみにしてる。けどその頃だと、ノヴァにも行ってるんだっけ?」


「その予定だな。早ければ、ハーケンに戻ってタクミを探し始めてるかも」


「そういう話聞くと、私もちょっと行きたくなるな」


 そりゃそうだろうとオレも思う。

 だからオレの心の中の、やりたい事リストに書き加える事にした。

 レナを二人ともあっちで出現できるようにする、と。


「それじゃ、あっちのレナにもそう伝えとくよ」


「私達の間で、せめて話せたらいいんだけど」


「色々言ったけど、まだ二重人格の延長と考えたら、下手な事は思わない方がいいと思うぞ。別れられるのなら綺麗に分かれた方が、多分いいと思う。せっかく、体は二つあるんだし」


「体は二つ、か。確かにそうだね」


 その言葉には、色々な感情が含まれているように思えた。

 だから少し話しかけるのを止めたら、そのまま一旦会話が途切れてしまった。


 それに、そろそろ向こうのネタは、残すところ一つになっていた。

 そしてオレとしては、話さないわけにはいかなかった。

 いや、黙りでもいいかもしれないけど、それだと逆にオレの心が持ちそうになかった。

 一口、ドリンクに口をつけて心の準備をする。


「あのさ、オレとハルカさんの事なんだけど。定期的に何があったか話した方がいいよな」


「そ、それなんだけど、逆も同じって事になるよね」


 逆というのは、オレがハルカさんにオレと玲奈の事を話すという事だ。

 我が事ながら、何の羞恥プレイだって気になる。


「どうする? 本当に簡単に話すだけでもした方が良いと思うんだ。でないと、オレだけが互いの秘密の一部なりを抱えているのと同じ事になるから」


「そ、そうだよね。わ、私とハルカさんね、二人でショウを支え合おうって決めたから大丈夫。ウン」


 あんまり大丈夫そうじゃなさそうだ。だから今は、まあ少しずつでいいだろうと思った。


「オレも羞恥プレイ的な話はあんまりしたくないから、じゃあ少しずつって事でいいかな?」


「じゃ、じゃあ、それで。ううん、そんな言い方良くないよね」


「全然。まあ、他人の恋話聞くくらいに思ってくれ」


「そ、そうは思えないよ。でも、ちゃんと聞く」


 その後は一昨日のことを、ごく簡単に天沢に伝えた。

 特に恥ずかしい話の辺りを。けど、一線ってやつを超えたりした場合、どこまで話すのか考えさせられる。

 普通にファンタジー世界での事件を話すのとは訳が違うのは、今日話してみて嫌という程分からされた。


「うん。だいたい分かった。……ちょっと、羨ましいけど。あ、そうだ、ハルカさんには私とショウ君のことはどこまで話してるの? その、空の上でほっぺに、その」


 言わんとしているのは、先日の戦闘が終わった直後の話だ。


「そう言えば、何かあったとは察せられたけど、結局何も話してないなあ」


「は、話すの?」


 自分で聞いてきたのに、イザとなると恥ずかしいみたいだ。

 まあ当たり前だろう。


「もう今更だし、聞かれたら答えるくらいかな。何から何まで話さなくてもいいだろ」


「けど、その、私にとってはすごく大切なの。それに今話してくれた事は、ハルカさんとって凄く大切だと思うの」


「うん、確かにそうだよな。じゃあ、明日にでも話しておくよ。遅れて話したって、拗ねられそうだけど」


「ご、ごめんね」


「いいよ。悪いのオレだし」


「ショウ君は、悪くないよ。悪いのはむしろ私達だし」


 その言葉は嬉しいが、むしろ罪悪感が募る言葉だ。

 しかしオレも全部受け入れた以上、今の道を進んでいくしかないのだろう。だから、ハルカさんの伝言に等しい言葉も伝えることにした。


「それでさ、ハルカさんから関係を進めたかったら、レナとの関係も進めてきなさいって、言われてもいるんだ」


「す、すごいねハルカさん。私はそこまで言えないよ」


「何ていうか、妙なところで律儀というか真面目な人だからな」


 自分で評してなんだけど、そういう性格だからこそオレの面倒を見てくれたのであり、オレもここまで恩義を感じたり、一緒にいたいとも思わなかっただろう。そう再認識できた。


「だよね。でも、ショウ君とハルカさんのペースに合わせるの私じゃ全然無理だから、ショウ君は気にしないでね。ハルカさんにも伝えておいて」


「サンキューな。まあ、何だ、マイペースで行くしかないよな」


「そうだよね。けど、やっぱり、ショウ君とハルカさんは羨ましい。それは、ほんのちょっとでいいから、こっちにいる間だけ覚えてて」


 以前と違って、結構はっきり意思を伝えるようになったのは、天沢玲奈としては大きな前進なのだろう。

 それに少なくとも、オレも応えたいと思った。


「分かった。けどさあ、やっぱり向こうにも来られるように頑張ってくれー。オレ、このままやってく自信ないよー」


 応えようとは思えど、それが本音だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ