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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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191「友人の前兆夢(2)」

「ああ。こっちじゃできない冒険にも挑戦しやすそうだからな。ショウだって、そうじゃないのか?」


「いいや。オレ、絶対向こうじゃ死ねないよ」


「ショウにしては、えらく言葉が強いな。向こうの現地人と何かあったとか?」


「それは秘密。取り敢えず、前兆夢突破してこっち来いよ。そうしたら話す機会があるかもしれない」


「うわっ、ショウのくせに上から目線だ」


 言葉はあれだけど、口調は冗談だと伝えている。

 こう言う会話ができるのも、男友達ならではなのだろうか。

 ボクっ娘はそうでもないが、ハルカさん、シズさんだとこう言う会話は多少の慎重さを要するのは、今までの経験で学ばされた。


「当たり前だろ。これでやっと、向こうのオレに後輩ができるんだから」


「へーっ。向こうだと、そういうのあるのか?」


「いいや。そんな小さい事に拘るやつは、あっちじゃ長続きしないと思うぞ」


「それじゃ、ショウは長生きできないな」


 タクミはジョークとして軽く返してるが、そろそろ真面目に言っといた方が良さそうだ。


「だから、ただのジョーク。けど、それなりに覚悟だけはしておいてくれ」


「何の? ショウの話す通り、意外に過酷な世界だからか?」


「それもあるけど、オレ達と一緒に旅するつもりだったら、まずは鍛えてもらう事になると思うから」


「なるほど。確かにボクが後輩になるわけだ」


 タクミは意外に納得している。そこまで思って後輩と言ったわけじゃなかったのに。

 けど、備えあれば憂いなしだ。


「まあ、なるべく厄介ごとは避けたいけど、オレってなんか騒動を引き寄せてるみたいなんだよな」


「ショウの話は、ネタが尽きないもんな」


「あれでも話してない事はけっこう多いぞ」


 みなまで言うなとタクミの表情が語っている。

 この辺りの間合いの取り方は、タクミはうまいと素直に思う。


「それじゃあ、その辺も向こうに行ったら聞かせてくれ。それで、ショウのこっちでのお盆の予定は?」


 向こうの話はこれで終わりらしい。

 意外に引き際があっさりしているが、タクミから話せるネタがないせいだろう。


「バイト」


「家庭教師は?」


「さすがに休み。ちなみにお盆の帰省とかうちはしないし」


「それじゃ、あとはデートくらいか」


「それは秘密」


「けど、何かあるんだろ。今日のショウ、油断したら顔が緩んでる」


(ヤバい。それはヤバい。こっちの玲奈には絶対見られたくないぞ)


「あれ、違うのか? それとも向こうで良いことあったのか?」


 今の表情で何か察せられたのだと、さらに焦る。

 多少肝は太くなったという自覚もあるのだけど、この辺りは全然ダメなままなのを実感させられる。


「えっと、その辺りは向こうに行けてから聞いた方がいいか?」


 流石タクミ。話のわかる男だ。思わず頭をコクコクと上下させてしまう。


「まあ、ある程度予想はつくけど、ほどほどにしとけよ」


 そうだった。向こうでは女性3人とパーティー組んでるのは、タクミには周知の事だった。

 こっちの関係を知れば、さらに話がややこしくなりそうだけど、これは今後の課題だ。

 ただ、弁解はしたい。切にしたい。と思っていたら、口が滑っていた。


「いや、大丈夫。マジ大丈夫。公認だから」


「何の公認だよ。どうせ、可愛い獣人奴隷でも買うなり保護でもしたんだろ」


 流石に苦笑された。

 さらに軽くジョークが出てきたが、それはオレ的に否定しないと行けない事だ。


「いいや、流石にそれはないよ。そういう情景も見たことないし」


「あれ? 奴隷ハーレム作ってる『ダブル』もいるんじゃないのか?」


「まあ、あっちの世界じゃ、奴隷は財産の一つくらいの扱いだからな。金があれば、してるやつもいるらしいよ」


「けど、ショウは違うんだ。じゃあ、やっぱりハーレムか?」


 ニヤリと笑いかけてくる。仕方ないとはいえ、そこは否定しないとみんなに失礼だ。というのが、冗談交じりに口から滑り出る。


「それは、ちょーハードル高いって。オレのヒエラルキー最下位だぞ」


「だよな。まあ何にせよ、天沢さん泣かすなよ」


「それは分かってるし、大丈夫。泣かせても嬉し涙だ」


「なにその歯の浮く台詞。全然似合わねー」


 かなり本気で笑っている。いやこれは本気笑いだ。勤め先だから、大声を我慢してるだけだ。


「うるさい。それより、そろそろ着替え行こうぜ」


「おう。ちょい早いけど、もう直ぐ時間だな」



 そしてその日は、夜9時まで、途中休憩を挟んでガッツリとバイトに勤しむ。お盆休みなので、かなり忙しい。

 しかしこの時期だけ時給が少し上がるので、お盆期間は稼ぐ予定だ。

 逆に言えば、それくらいしかすることがないとも言える。

 あんまり虚しいので、夜にこっちのレナ、天沢玲奈にSNSでメッセージを送ってみた。

 するとすぐにも返事がある。


《今日はバイト?》

《さっきまで1日入ってた》

《お疲れ様》

《そうでもないよ、それより》

《何?》

《電話にしていい。声聞きたい》


 そこで一瞬間が空く。告ったとはいえ、ズケズケと書きすぎたかもしれないと、焦り始めたところで返事があった。


《いいよ》


 30秒か1分経った後で書き込みがあり、すぐにも電話の呼び出し。

 天沢玲奈の表示。


「こっちからかけようと思ったのに」


「いいの。私のスマホかけ放題だから」


「そっか。それで、レナってお盆何か予定ある?」


「ううん。うちは田舎が自分ちみたいなものだから、年の離れた親戚の子が遊びに来るくらい。ショウ君は?」


「バイト三昧。けど、休みもある。店長がシフト入れすぎてもダメって言うから」


 そこで小さく笑う声がする。


「ショウ君って、やり始めると、グイグイ行き過ぎるもんね」


「そうかな。できると思ったことしかしないけど」


「そうかな。あ、それで、いつお休み?」


「昼間だと、明日の2時以降くらいかな。お盆終わったら、バイトも少し緩めになるし家庭教師もあるからレナには会えるけど」


 講演会はお盆明けの水曜なので、ちょうど一週間後だ。お盆が挟まるので2週間開いている。


「じ、じゃあ、明日昼から、その、」


「うん。会おう」


 一気に押して言ってみたが、正解だったようだ。


「う、うん。それじゃ、2時にバイト先のファミレスまで行くね」


「そりゃ悪いよ。迎えに行くって」


「けど、その分会える時間短くなるよ。晩ご飯までだから」


「それもそうか。あ、それでなんだけど、ちゃんと会って話したいことが結構あるんだ」


 晩ご飯までと、夜の予定は自動的にキャンセルされたのはちょっと残念だけど、高校生の付き合い始めなんだからこれが普通だろう。

 向こうで起きてる事の方が、少し進みすぎているのだ。


 オレが一瞬考え事をしたのもあって、玲奈も一瞬沈黙した。

 しかし玲奈の沈黙は明確な気持ちの切り替えだ。少し声のトーンが変わっていた。


「もう一人の私の事? それとも」


「向こうのレナと、それともの両方。ちゃんと話しておきたい」


「じゃないと、ハルカさんに怒られる?」


 ちょっとからかい口調だ。なんか、こっちでも尻に敷かれつつある気もするけど、それはそれで心地よいのでオレ的にはウェルカムだ。


「マジそれ。私との距離を縮めたければ、レナとの関係も進展させてくることって釘刺された」


「ハルカさんらしい。じゃあ私からも、ちゃんとハルカさんとの関係を進めてきてね」


「リョーカイ。二人からとか、すげープレッシャー」


「えっ? ご褒美じゃないの?」


「うん。ご褒美すぎて、逆にプレッシャー」


 二人して笑いあうが、あまり今までの玲奈らしくないやりとりが、その後も続いた。人として一皮むけたような印象を受けるほどだ。実際そうなのかもしれない。

 そしてその後もかなり遅くまで電話で話して、眠りについたのは深夜をかなり回ってからだった。

 こんなことは今までなかったが、とても自然なことに思えた。


 結局、明日話すつもりだった事のかなりを話してしまったけど。


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