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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第2部

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163「作戦会議(1)」

 中身が玲奈なレナを一旦ベッドに寝かせると、テーブルに戻って3人で相談を開始する。


「とにかく、旅は一旦延期ね」


「決めるのは早計じゃないか? レナの様子をもう少し見てからの方がいいだろう」


「けど、ヴァイスと今のレナとの相性というか、そう言うのはどうなんだろ?」


「連れて行って確認するしかないだろうな」


 こればっかりは、当人が再び目覚めて調べてみないと分からない。と言うのが分かっただけだった。

 そして3人それぞれ視線を交わし合うと、現実的な話へと移った。


「どっちにしろ、今朝ここを発つのは中止しましょう。そうなると、私一応神殿に挨拶行かないと」


「そう言う面倒も出てくるのか。冒険者ギルドへは必要か?」


「あそこは用がない限りいいでしょ」


「飛行場にヴァイスの滞在と世話の延長依頼もいるよな」


「レナが目覚める前にさっさと済ませて、後はなるべく側に居よう」


「ですね。じゃ、飛行場はどっちが行きます?」


 方針は決まったが、そこでシズさんが少し考える仕草を見せる。けど、すぐにもオレの方を向いた。


「ヴァイスはショウの方が親しいだろ。レナは私が見ているよ」


「そうね、シズの方がレナも安心するでしょうし」


「けどさ、ドラマとかのお話だと、こういう時って待っている人が襲撃されて攫われたりするよな」


「不謹慎な事言ってるのはどの口?」


「イ、イラクナイ。ジョウランらよ」


 空気を軽くしようとしたら、ほっぺを思いっきり抓られた。

 おかげで痛みを感じないが、ハルカさんは絶妙の力加減を知っているので、これは相当本気のつねり具合と言う事だ。

 オレの場を和ませるジョークは、ハルカさんには通じなかったらしい。痛くもないのに、お約束の言葉まで返したのに。

 シズさんは苦笑してたけど。


 それでも行動開始の号砲にはなったようで、「では、魔法で部屋ごと封鎖しておくので、合い言葉だけ決めておこうか」とシズさんが場を取りもって行動開始となった。




(そう言えば、ギルドに行く時間が取れたら、オレに因縁つけてきた3人組がどうなったかの確認くらいしとくか)


 宿を出て気が付いたが、まずは念のため剣だけ持って飛行場へと向かう。

 オレが一番遠いので歩くと手続き込みで往復1時間以上かかるし、何より2週間ほど前のマフィアの事があるので、丸腰というわけにはいかなかったからだ。

 それに剣を持つくらいだと、この街は特に咎めたりしない。戦闘装備とみなされるごつい鎧を着込む方が問題になる。


 また念のため、フード付きのマントを羽織って外に出た。

 同様にハルカさんも最低限の武装で神殿へと赴いているが、こっちは街の中心で人が多い場所での短い移動距離なので、そこまで心配もいらないだろう。


 飛行場は島の外縁部、金持ち区画の城壁の外側にあるので、普通に歩くと20分くらいかかる。かといって、運動能力に任せて街中を走るというわけにもいかない。


 なるべく早く歩くに止め、15分ほどで飛行場へと到着。

 大抵のことは金で解決する自由都市だし、公の組織が疾風の騎士の巨鷲を粗略に扱うという事は普通あり得ないので、手続き自体はスムーズに終わった。


 とりあえず3日間の滞在延長の手続きを済ませて、ヴァイスにも会って簡単に現状報告すると、すぐにも宿へと戻ろうとした。

 ヴァイスはオレの言葉を黙って聞いていたが、何か困惑している感じがした。


 そしてその帰り道、いつぞやのように誰かに見られているもしくは尾けられている気配を感じ取った。

 行きではなく帰りに感じたという事は飛行場で張られていた可能性があり、出来れば連れ帰りたくはない。


 行きも尾けられていた可能性もゼロじゃないけど、もうハルカさんが戻っている筈だから宿は二人に任せて大丈夫だろう。

 それに宿の部屋は魔法の守りがかけてあるので、街のチンピラが部屋に押し入ったりすることは不可能だ。


 そこでオレは、わざと人気のない場所へと足を進め、相手を誘ってみた。

 因縁を付けて来たヤツらが捕まって牢屋に入れられても、オレたちが金を持っているという噂は残っていると思ったので、最悪チンピラくらいなら適当に絞めておけばいいだろうと考えたからだ。


 そして人気のないところで一気に屋根の上へと跳んで隠れると、そこに一人の男が走ってやって来て、周囲をキョロキョロと見回すとその先へ消えていった。

 見た感じ、街の下層にいるようなゴロツキといった風体だ。魔力持ちでもない。


 金を持っているという噂だけでなく、オレたちの外見までが広く知られているとなると、かなり面倒かも知れない。

 そう感じたので、帰る途中で冒険者ギルドへと足を向けた。


 ギルドに着くと、受付カウンターへと向かう。こういうのは現実世界と似ているので、分かりやすくて助かる。


「すいません。自警団の方とお話しできないでしょうか」


「冒険者の方ですか? それなら登録証の提示をお願いします」


「あ、はい。これでお願いします」


 言葉とともに細いチェーンで首に下げている冒険者登録証を取り出し、そして提示する。

 金属プレートには、名前と職そしてランクが記載されている。

 オレの場合は、ショウ、戦士、Bランクとなる。これだけだと、どこにでもいる冒険者だ。


 ただ、冒険者ギルドの前に来たくらいから、チラチラと見られている気配をかなり感じた。

 受付も、登録証を見てさらにオレの顔を拝むと、態度が少し変わったように感じた。


「御用件は何でしょうか?」


「二週間ほど前、こちらの牢獄に入れられた冒険者たちについて少しお話を聞きたいのですが、自警団の方と話せますか?」


「何方か、ご指命の方はいらっしゃいますか?」


 そこでウェーイ勢二人組の名前を出す。彼女がいるのがハルトさんで、いないのがトールさんだ。ちゃんと覚えていてよかった。

 けど残念ながら二人はいなかった。そこで事件の結果だけでも聞きたいと言うと、別室に案内されてしまった。


 そして事務的な簡素な部屋で待つこと数分、やって来たのは歓迎会で後から合流した男女5人組みの一人で、確かリーダーのアインさん。

 彼らが自警団だったことを街を出る直前の捕り物で知ったが、ウェーイな二人よりもこの人とその連れの方が、自警団な雰囲気を持っている。


「ご無沙汰してます」


「こちらこそ。それで、あの事件のその後を知りたいとの事ですね」


「ええ、この街に数日滞在予定なので、念のためどうなったか聞いておこうと思いまして」


「なるほど。当事者の方ですので、分かる限りお話ししましょう」


 対応が専門家っぽいと思っていたら、あっちで警察官をしていると途中で苦笑混じりに答えてくれた。

 こっちでくらいエンジョイすればいいのにと思ったが、性分らしい。


 それでアインさんから聞いた話では、オレたちを襲った3人組は、1週間ギルド地下の牢獄入りしたあと街を出て行っていた。

 協力者の地味なテンプレ4人組は3日牢屋入りした後は、心を入れ替えてギルドで奉仕中。それを切っ掛けに、他の『ダブル』との交流とかも増えたそうだ。


 また、オレ達に懸けた賞金などが無くなった事は、それなりの筋で通知済み。

 ただ、金を持っているという噂と伝えられた人相書きや風体の情報が残っているので、相応に注意した方がいいだろうとの事だった。


「それと、あなた方は少し有名人になりつつありますね」


「この街で騒動起こしたからですか?」


「いいえ、旧ノール王国からここに来た『ダブル』が、あそこで何があったのかを伝えた影響です。随分ご活躍だったそうで。それに」


「まだあるんですか?」


「アースガルズ王国王都での話しも、主に上流階級に話しが伝わって来ていますね」


「じゃあ大巡礼も?」


「大巡礼? いえ、それは何も。伝わっているのは、あの国で活躍したという神官とその従者達が、随分な力の持ち主だという話しです。ノール王国での活躍と合わせて、情報が回りつつあります」


 魔物退治で活躍したから、金を持っているとでも追われたのかもしれない。


「マフィアにも情報伝わってますよね」


「そう考えるのが妥当ですね。ですが、街の中心部に滞在され、人目のあるところで行動されれば特に問題はないでしょう。それに何かあれば、すぐに連絡を下さい」


「アドバイス、ありがとうございます」


「いえ、とんでもない。それよりもあの時の歓迎会では素性を隠していて、申し訳ありませんでした」


 言いつつ軽く頭を下げる。そうした仕草が日本人っぽい。


「得体の知れない新参にわざわざ話す事でもないでしょう」


「そうかもしれませんが、新しい方を見定めるためとは言え失礼しました」


「全然気にしてませんよ。それよりも、情報ありがとうございます」


 それで自警団のアインさんとは別れ、滞在先の宿へと戻る。

 どちらも大広場を挟んだ大通りに面しているので、途中で昼飯代わりの軽食を広場の屋台で買い込んで、部屋へと戻る。


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