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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第2部

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158「巡礼先(2)」

「天の三柱のコンプリートが魔法使いの理想だな」


「そういう属性は、生まれつきや出現時に決まるんですよね」


「そうだ。『ダブル』でもこっちの人でも、自然に理解出来るよ。私は月、星、炎で、気温操作系の魔法が得意と言うことになる」


 なるほど、シズさんが炎が得意なのにも理由があったのだ。

 もっとも、なぜそのチョイスを与えられたのかという疑問があるが、魂、つまり性格等に左右される等諸説あるも、誰にも分からないと言われている。


「レナは1つだけか?」


「そうだよ。ボクは専門職じゃないから空の神様だけー」


「属性は、基本0から3つまでだ。ショウは魔力相殺の力があるから、もしかしたら月の属性があるかもな」


「じゃあオレも魔法使えるんですか?」


 これは意外な言葉だった。てっきり何もないと思い込んでいたが、思い込みはいけないらしい。

 逆に期待してもいけないのは、今まで十分学ばされてきたけど。


「なくても、努力すれば第二列までは使えるわよ」


「まあ旅は長くなるだろうし、魔法は地道に覚えていけばいいだろう」


 やはりそうだった。そう、勉強して頭に、記憶に刻みつけないと意味ないのだ。


「あっ、すっかり脱線してたわね。それでウィンダムには、水の女神の総本山があるのよ」


 そう言って、『ダブル』の知識で作られた、あまりこの世界らしくない地図の一点を指し示す。


「あっちと同じで、芸術の都って話しだよな」


「水皇は水以外に美、芸術、工芸を司るからな」


「それで世界でここだけ、と」


「日本の神社のような分社とでもいえる神殿は各地域に存在しているから、総本山といっても巡礼のための神殿とも言える」


「行ったら、何か特典やご利益があるとかは?」


「水皇の魔法は学びやすいわよ。知識や技術も豊富だし、そういう魔力の集まりは確かにあるから」


 実際の恩恵が無くても、迷信的なものはあるだろうという程度の質問だったが、意外にちゃんと恩恵があった。


「なるほど。そりゃ神様を信じもするな」


「そういう事ね。私の治癒魔法も、水の神様の系列のやつもあるくらいよ」


「じゃあ、ここで勉強を?」


「ええ。聖地は土地の魔力も豊富だから、魔法の修得に向いてるのよ」


「その聖地って、だいたいユーラシア大陸にあるんだよな」


「邪神大陸、つまり北米の遺跡の中に沈んでいるヤツもあるよ。上空からしか行ったことないけど」


「よく行けたわね。流石疾風の騎士」


 口にしたハルカさんだけでなく、シズさんも感心している。


「エヘヘ。あと『帝国』のある浮遊大陸にもあるね」


「だいたいは人の住む場所にあるが、噂レベルだと南米の魔龍大陸、南極、豪州にも、さらに古い時代の神々の総本山が遺跡の状態で存在していると言われている」


「行った人はいないんですね」


「記録や伝承それに噂では、行った者はいるらしいがな」


「それ神々の塔と同レベルの噂よね」


 お、重要ワード出た。天界や天国のように、神様が本当に住んでいると言われる場所だ。


「ネット上の話しだと、眉唾っぽいけど」


「幻術の魔法とか分厚い雲で隠されている、と言われているものね。私も噂しか知らないわ。レナ知ってる?」


「フッフッフッ、片方には近づいた事あるよ」


 わざとらしい笑いとともに腕を組んで自慢げだ。

 顔も作ったドヤ顔で、自慢したいオーラを放っている。


「レナは、どこにでも行ってるんだな」


「冒険がボクを呼んでいるからね」


「それで、何かあったのか? 確定的な情報としては塔の『影』しか確認されていないが」


 シズさんも興味深げだ。何度か会っていても、意外にそれぞれの事は話していないみたいだ。


「見るには成層圏まで上る必要があって、流石にボクとヴァイスだけじゃないと無理だから、みんなと空からは行けないよ」


「何を見たんだ?」


「遠くの雲の隙間から見えたのは、円形状の小さな山脈みたいな景色。周りは風が強すぎて近寄れなかったから確証はないけど、石じゃないみたいだった。強いて言えば大理石みたいに山全体が光ってた。それに凄く切り立った山ばっかりだったね」


「それは初耳だわ」


「私もだ。その外観だと火山の火口か小さな外輪山みたいだな」


 二人が心底驚いているのだから、よほどの情報なのだろう。

 二人の驚きは「情報は公開しなかったの(か)?」と、即座にハモって聞いてしまうほどだ。


「ボクじゃリアルの方で出来ないし、行きたいから行って見てきただけだからねー。ボクの宝物の一つだよ」


「へーっ。話してくれてありがとな」


「どういたしまして。あと地上からだと、海の上にあるうえに周りはずっと酷い嵐で海流も強いから、普通だとまず近寄れないよ」


「そういう話しだな」


「どこにあるんですか?」


「ボクが行ったのは、インドじゃなくてレムリアの先っぽのずっと沖合」


 広げてあった『ダブル』が作った世界地図を指差す。

 この世界地図は縮尺や正確さは今ひとつだけど、『ダブル』がもたらした画期的な知識の一つだ。


「あと一つは、日の光で動く影から魔龍大陸、南米のガラパゴス諸島の辺りだと特定されている。もっとも、あの大陸自体に行くのが大変なので、塔の側まで行けるかどうかすら不明というのが一般説だ」


「そこにも行くのか?」


「もし行って証拠を持ち帰ったら、歴史的な伝説になるわね。けど大丈夫よ。大巡礼はそこまで求められてないから」


「そんな場所より、魔界化って言われるくらいに魔物の巣窟になっている邪神大陸の大神殿探す方がマシだろうねー」


「まあ、それより先に、人の領域にある場所だろう。この世界の成り立ちなどの知識がある可能性も高そうだしな」


「あと一つ。行くところがあるけどね」


「ノヴァか」


 シズさんのノヴァという言葉に、オレは頭の上にクエスチョンマークを浮かべてしまう。

 『ダブル』の街にも聖地があるんだろうか。

 と思ったオレの頭の中の疑問を、ハルカさんは口にするまでもなく察してくれる。


「一応だけど、ノヴァには聖人はいても聖地はないわよ」


「まあ『ダブル』が街を復活させるまで、魔の大樹海に沈んでいた場所ではあるがな」


「大巡礼とは関係ないですよね」


 そこで全員に何言ってるのな顔をされる。


「私を向こうで復活させるための知識を探すのが、そもそもの目的なんでしょ。大巡礼はその口実と、神殿の知識を得やすくする方便じゃない」


「そうだ。だから行く先々の魔導師協会の各支部や大学などでも、情報を得るつもりだったんだが」


「ボクはだいたい世界中は一回は回っているから、ただの案内人だよ」


「し、神殿や神々の話しばかりになってたから、つい」


 三人の視線が少し痛い。そう、単にトリビアを聞いているのではなかったのだ。


「つい、ね。まあいいわ。ノヴァには、大勢の『ダブル』がこの20年ほどで世界中の遺跡なんかから集めて回ってきた知識や情報、さらには一部物品があるのよ」


「それに、世界の研究をしている物好きも何人かいるから、そいつらからも話しが聞けるかも知れない」


「同じ話しを聞くにしても、この世界の偉い人達に聞くよりも聞きやすそうだよね」


「そうだな、多少は知り合いも残っているだろうからな」


 そこでハルカさんが、心象風景的にポンと手を叩く感じでシズさんに向く。


「ねえシズ、今更でちょっと聞き難いんだけど、ノール王国に仕える前というか今の体になる前の冒険者登録とかどうなってるの?」


「ノール王国に仕える時点で、魔導師協会も冒険者ギルドも抜けている。預け入れ金や物品も全部引きあげた。どちらにも、あったとしても過去の記録くらいしか残っていない筈だ。それがどうした?」


「シズの籍が残ってたら、少なくともノヴァの大学とかに入りやすかったかなって」


「この格好で、昔の登録が使えるんだろうか?」


 そう言うと、シズさんがお約束で耳と尻尾を動かす。もうかなり慣れた感じだ。


「血で登録するから、意外にいけるかもって思ったんだけど」


「この世界で血液型やDNAの判定できるんですか?」


「ノヴァに行けば、電子機器とか電子顕微鏡が必要なレベル以前の現代医療はだいたい揃ってるわよ。外科は魔法と治癒薬でだいたい何とかできるから、薬学と内科中心だけど」


「それと登録証は、魂の登録だと言う説もあるが、恐らくDNAかそれに近い個人情報の登録だろうな」


「うん。それでね、クロがシズの肉体を作る過程とか見ていると、それこそDNA情報を元にしてそうじゃない」


 ハルカさんが、首元から冒険者ギルドの金属プレートを取り出して、指で「チン」と音を鳴らす。

 そう言えば、ギルドでランクの審査などしていないのでAランクのままだ。


「なるほどな。だがもう登録プレートなどは破棄されているから、比べようがないな。少し残念だ」


「そっか。まあ、知り合いもいるから、ある程度は何とかなるでしょう」


「と言うことは、ウィンダムの次がノヴァ行きでいいのか」


「方角的にもそっちだね」


 そう言いつつ、ボクっ娘が地図の上を指でなぞらえていく。それが、今回の経路と言うわけだ。


「他の大学とか魔導師協会は寄るのか?」


「途中のラーグにあるミッドラントの中央魔法大学は、少し寄ってみたいかもな」


「魔法と言えば、イギリスじゃないんですか?」


 魔法使いの学校と聞いて、誰もが思い浮かべるのはやはりアレだろう。

 サキさんなんてまんまな格好だったし、ハーケンでも同じ姿は散見したほどだ。


「この世界だとそうでもないのよね。あの魔法学園シリーズのファンの娘が、随分がっかりしてたわ」


「ノヴァに著作権に引っかかりそうな学園作っちゃったけどね」


「黒カラーの灰かぶり姫の城とかもな」


 二人とも口にするも苦笑い気味だ。


「へーっ。どれもマジあるんですね。今から楽しみです」


「けど、遊びに行くんじゃないのよ。分かってる?」


「イエス、マム」


「オーケー。取り敢えずよそ見しないで、フォローミーよ」


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