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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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493 「塔の中(1)」

 夕方の少し前、再び神々の塔の近くまでやって来た。

 戦いの後片付けや負傷者の治癒、治療がこれからなので、『帝国』の飛行船1隻と、『帝国』兵を半分ほど残して3隻でやって来た。


 そして前と同じ位置まで近づくと、白い大型龍が神々の塔から近づいて来る。

 数は5体と変わらない。

 全体の数が5体以上いて、応対するだけなら一度に5体出てくるとかなんだろう。


『よく来た資格を持つ者達よ。持てる魔導器の数だけ、塔の中に入る事を許そう』


 前回と応対が大違いだ。

 しかし魔導器の数だけとは、かなり厳しい気がする。


「飛行船でそのまま塔まで行きたいのですが、問題ないんですよね」


『構わぬ。それでは船ごと我らについて参れ』


 それだけ伝えると、白い大型龍達が背を向けて、比較的ゆっくりした速度で移動を始める。

 艦橋の全員が頷き、さらに左右の斜め後ろに陣取る他の飛行船にも伝え、神々の塔へと向かう。


 約1時間半ほどかけて神々の塔の裾野までやって来る。

 そこはちょうど、富士山のような一定のなだらかな斜面になっている。

 けど、全てが人工物で無機的だ。

 斜面にもその先から天を貫いている塔も、白無垢で表面は何か幾何学的な、魔方陣か電子回路のような模様が全面に刻まれている。

 レイ博士曰く、光を屈折させて周囲への影響を逸らしているんじゃないかとの事だ。


 そして斜面の一角に、一定の広さの平面があった。

 そこを白い大型龍が指し示し、うち1体が降り立っていく。

 他の4体は、オレ達の動きを見守るだけだ。

 警戒しているのだろう。

 けどその心配はご無用だ。何しろ直前まで近づいた時点で、無数の大型龍が山の斜面のような場所の各所に鎮座しているのが見えたからだ。

 数は10や20ではない。見えているだけで数百という数だ。


 だから、大型龍はなるべく思考の外に追いやって、着陸すべきところへ注目する。

 屋根から突き出したテラスと言ったイメージだけど、その大きさは飛行船3隻が降り立っても、まだまだ余裕のある広さがあった。


 そしてその巨大なテラスがテラスに見えるほど、神々の塔は巨大だった。

 上を向くと、口をポカンと開けて見続けてしまいそうになる程巨大で、もう圧倒しかされない。

 超高層ビルとか巨大タワーを真下から見ても、ここまで感情を持っていかれないだろう。


 けど、ポカンとしているわけにいかないので、無数の白い大型龍に見られつつ3隻の飛行船が順次巨大なテラスに降り立つ。


 降り立った時点で、真ん中に降りたオレ達の船の前に、主な人々が集まる。

 全員に白い大型龍の『声』は届いているので、無駄にたくさんの人が船から降りてきたりはしない。

 また大半の者は、腰に剣をぶら下げる程度で、武装もほとんどしていない。


「さて、最初にショウ達が入るとして、神々の塔へ入って無事な者はどれだけいる? どうやって判断する?」


「すでに魔導器に選ばれている者は問題ない筈です。他は、魔導器に判定してもらえば、そちらも問題ないでしょう」


「主人を選んでも、判定とやらが出来るのか?」


「こいつらは、相性とか恩義とか長年の持ち主とかで選ぶ場合もあるみたいですけど、基本魔力総量の多い者を選ぶんですよ。だから、魔力総量はいつでも判定できます。なあ、クロ」


「左様にござます我が主人。そしてマーレス第二次皇子殿下」


「そうか。では、入れる者を選んでくれ」


「クロ、頼む。あと、他のキューブも、この場にいない相応しい人を連れてきてくれ」


「畏まりました」


 クロが代表して答えると、クロ、アイ、ミカン、キイロ、それにスミレさんが動き出す。

 そして周りに詰めかけている人達から選んで、オレ達の前へと連れて来る。

 なんだか借り物競争でも見ているようだ。


 そうして選ばれたのは、オレ達は既にキューブの主人となっているオレ、ハルカさん、シズさん、トモエさん、レイ博士に加えて、ボクっ娘、それに悠里も合格だった。

 けど、尻尾が4本あるホランさんは足りなかった。


 他は、『帝国』はマーレス第二皇子だけ。ゴード将軍がいれば、多分合格だっただろう。

 それと少し意外なことに、殿下の側近の近衛騎士アーバスさんは選ばれていなかった。技量は十分だろうけど、魔力総量が判断基準だったらしい。


 『ノヴァ』勢は、空軍の6人ともSランク認定されているけど、キューブに選ばれたのは空軍元帥、火竜公女の二人だけ。

 そして最後に浮遊大陸の冒険者ギルドから、真面目な勇者様ことヒイロさん一人。

 ジョージさん達は、マリアさん辺りはいけるかもと思ったけど全員ダメだった。ヒイロさんのお仲間達も同様だ。


「我が友の仲間達は流石だな。そちらは7人確定でちょうどだな。残りは、ワシを含めて4人か。本当に他はおらんのか?」


「申し訳ありませんが、皆様相応しい魔力総量には達して御座いませんでした」


『その魔導器が選んだ者以外が入っても構わぬが、責任は負いかねる。恐らく塔から出てくる事はないだろう』


 クロの言葉を白い大型龍が補足する。

 案外ちゃんと説明してくれるので助かる。

 そこでふと思った事が口に出た。


「なあ、昨日の昼にここに来た魔物は、入る資格はあったのか?」


「魔物は生ける物にあらず。よって資格以前の問題だ」


「それで門前払いしたら、ブチ切られたんだ」


 ボクっ娘がいらない言葉を挟む。

 まあ、みんな聞いてみたい事だけど、今聞く事でもないだろうと思ったが、普通に答えが返って来た。


『拒絶した直後に、我らの1体に不安定に稼働している魔導器が投げつけられ、そのまま乗っ取られた。このような事は、2700年前以来だ』


「へーっ、そんな前からこの塔ってあるんだ」


『塔自体がいつからあるのか、我らも知らぬ。だが1万年以上なのは確か。それよりも、最初に入る者が決まったのなら、あの淡く輝く場所に入るがよい。他の者は、この場にて待て。大した時間はかからない』


「だってさ。あ、そうだ、どうして乗っ取られたのに、奪い返したりしなかったの。それにボクら倒しちゃったよ」


『我らは、塔より一定距離以上は離れられない。また大型龍同士は戦う事を禁じられている。また、あの乗っ取られた個体を倒した事で、咎を受ける事はない』


「そうなんだ。よかった。(マジよかったね。ちょっと気になってたんだよね)」


 言葉の途中から、オレの耳元で囁く。


「(向こうが言わないんだから、触れなくてもよかったんじゃないのか。ドキドキした)」


「(ドキドキは、ボクかもう一人の天沢さんと二人きりの時にしてほしいな)」


 こんな場所で、冗談でもよく言えるなあと思わず感心してしまう。

 そして下らない事を言いつつも、恐らく塔の入口へと向かう。

 ボクっ娘が妙にじゃれて来たのは、むしろ緊張しているからだ。

 かと言ってみんなの前、ハルカさんの前で抱きついたり手を繋いで気持ちを落ち着けるわけにもいかないので、冗談で気を紛らわしたのだろう。


 そして他のみんなも大なり小なり緊張している。

 だから少し早足になって、一番前へと立つ。オレにはみんなの前に立つくらいしか出来ないかからだ。


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