表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

360/402

478 「航海(1)」

 地皇の聖地を飛び立ったのは、マーレス第二皇子の宣言通り四刻(午前8時)だった。

 それまでのゴタゴタがあったのが半刻程前で、そこから大急ぎで準備を進めた。

 クズ勇者様一行の残り2人の処分は、武装解除の上でギルドの人達が面倒を見る事で解決した。

 最終的には帰りのノヴァの船に乗せて、そのままノヴァ送りだそうだ。


 船の方については、昨日の段階からレイ博士やフェンデルさん達が整備や補修をしてくれていたので、オレ達の船は特に問題はなく出発する事が出来た。

 他4隻は、援軍で来た船なので特に問題はない。

 人の乗り換えや乗り込みも問題なく進んだ。


 なお、せっかく来た地皇の聖地の巡礼儀式をしてない事を思い出したので、僅か10分ほどで慌ただしく済ませると言うハプニングまがいの出来事も出航間際にあった。

 しかしこれで巡礼用のアミュレットは、3つ目の宝玉に色がついた。



 一方で、『ダブル』から旅の同行者を選ぶ話の方も、もう一悶着あった。

 『帝国』特にマーレス殿下の『ダブル』に対する心象が悪くなったので、真面目な勇者様ことヒイロさんの提案を実行する事が躊躇われた。

 だから、オレ達の船の厩舎の片方を臨時の客室代わりに使う案は没。


 なお、オレ達の船もノヴァの船も、三ヶ月分の食料を搭載していた。水は魔法で浄化すれば、海水からでも使った汚水からでも得る事が出来る。

 生鮮食品は沢山ないけど、うまくいけば、道中に入手する事もできるだろう。特に生肉や魚は期待したいところだ。


 そして地皇の神殿から神々の塔までの距離は、直線距離で約5500キロ。飛行船だと10日の行程だ。

 普通なら11日だけど、途中から貿易風に乗るので少し早く着くらしい。


 とにかく、これから10日以上は空の旅だ。

 そして邪神大陸の東部沿岸を横断する形になるので、ここを一気に通過するべく、最初の4日は完全に無着陸でしかも夜間上空での停止(停泊)もしない旅程になる。

 だからその分だけ早く着くのだけど、オレ達の船はともかく『帝国』の船を引っ張る雲龍には負担が大きい。その分多い数に引かせるが、普通は行わない事だそうだ。



「それじゃあ最低限の取り決めと、船の役職を紹介します」


 飛行船内の食堂で、にわかに乗船客となった『ダブル』達への説明が始まった。

 地皇の聖地を後にして小一時間ほど経った頃で、その間待ってもらっていた。

 そしてその間の世話は、ルリさんとハナさんにしてもらっている。て言うか、もう船内の生活の事は、ノヴァを経つ頃からこの二人の担当状態だ。


 そしてまずは色々と概要を告げる。

 この船が、ノヴァトキオのエルブルス辺境伯領所属である事。オレが領主で船長である事。ハルカさんを中心とした大巡礼の最中である事。こっちの世界の人も多数乗っている事。

 大きくはその辺りだ。

 けどこの辺りの情報は、オレの話がネットにアップされているのでほぼ必要なかった。


 次に船の役職。

 要するにオレが船長、レイ博士が機関長、みたいなやつだ。

 レイ博士が細かい一覧を事前に用意していたけど、そこには取り敢えずと言った感じで全員の名前が書かれてる。

 そして調理担当のルリさんが、船内の実質的支配者だ。

 胃袋担当が強いのは自明だし、ノヴァで大量の日本食を運び込んだ功績は偉大すぎる。

 そして食堂には、先に乗り込んでる仲間達は、半数程度しかいない。


 対して、説明を受ける乗船者は9名。

 しかもうち4人はマリアさん達なので、主な説明相手は残り5人に対してとなる。

 そしてその5人も、ヒイロさん以下真面目な勇者様ご一行だけだ。この人達は行儀も物分かりも良い人達なので、説明なども最低限で済みそうだった。


 なお、結局神々の塔への『ダブル』の同行者は、20名に達しなかった。ノヴァの船にも8人が便乗してるだけだ。

 減った主な理由は、クズ勇者様達とオレ達との戦闘の影響だった。

 旅を主導しているのが『帝国』で、しかも指揮官がマーレス殿下で、その殿下がクズ勇者様に雷を落としたことで、多くの人が尻込みしてしまったのだ。

 何しろ『帝国』は3隻も船を出すので、数の上の主力だ。


 また、オレ達がクズ勇者様達を軽く一蹴したのも、ぶっちゃけドン引きされていた。 

 オレ達くらい強くないと行くのは危険だと考えた者と、オレ達みたいな凶暴な連中と一緒は嫌だというのが半々と言ったところだろう。


 もっとも、あの連中は横柄で勝手で我儘なので、『帝国』の冒険者ギルド内でも嫌われ者だったらしい。

 一方で、古参で強いし装備もいいし、何より『ダブル』は現代日本人なので妙なところで遠慮するので、ああいう口のでかい連中がのさばってしまったのだそうだ。


 それと、クズ勇者様が悪魔が弱いと思っていた理由も聞くことができた。

 何でも『ダブル』が活動する、というか活動できる邪神大陸の東部沿岸には、精々下級悪魔しか出ないのだそうだ。

 出ても、せいぜいAランクに届くかどうかの強さ。だからAランクパーティーが集団でかかれば大したことないのは道理だ。

 しかも主な相手も、せいぜいBランク。Cランクが多いので魔力が稼ぎやすいのが、邪神大陸沿岸部の特徴らしい。

 なんだかオレが想像していたのとは違うガチぶりだ。


 真面目な勇者様達も、上級悪魔とはノヴァ南方の魔の大樹海でしか戦った事はなかった。

 真面目な勇者様達の分析では、邪神大陸の非常に強い悪魔は、内陸部に行かないと存在しないという。それはオレ達が妖人から聞いた情報とも合致していた。

 そしてクズ勇者様達は、何か勘違いしてたんだろうと話を結んだ。


 真面目な勇者様達は、そんな事の経緯を掻い摘んで説明した上で、頭まで下げてきた。

 彼らがオレ達の船を選んで乗ったのも、他の『ダブル』が遠回しに嫌がったからだ。

 そんなにドン引きされていたとは意外だったけど、真面目な勇者様達もオレ達みたいに「ガチ勢」と言われてるらしいので、似た者同士を思っておこうと内心を納得させた。


 なお真面目な勇者様パーティーは、男3、女2。前衛3人に、魔導師協会所属の魔導師と治癒職の神官それぞれ1人というバランスの取れた編成をしている。

 オレ達は飛行職が2人もいるので、むしろ今まで出会った中で一番のバランスの良さだ。

 前衛もクズ勇者様達同様に、勇者もとい魔法戦士、重戦士、弓手を兼ねた軽戦士と揃っている。


 そして強さも、真面目な勇者様が冒険者ギルドでのSランク認定だ。他の4人もAランク認定で、それに相応しいだけの魔力総量も持っているのが分かった。

 そんなんだから、物語の主人公を勝手に気取っていたクズ勇者様達とは仲が悪く、主に向こうから因縁つけてくるのが日常だったらしい。

 そのせいで周りにもギルドにも迷惑をかけていると思っていたらしく、それで強く出られなかったみたいだ。


「あんなのが相手だと、苦労しますよね」


「ショウ君達みたいに、もう少し自己主張するべきだったと、あれを見せられて反省しているよ」


「このところ他の『ダブル』から離れてたから、久々に『ダブル』がどんなのか、オレも骨身に沁みましたよ」


 苦労話を聞いた後、思わずそんな会話をしてしまったほどだ。


 そして真面目な勇者様達を載せたのは、もう一つ理由がある。パーティー内に女子が2人いる事だ。

 マリアさん達も2人なのだけど、この4人で神々の塔へ向かう女子全員となるからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ