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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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473 「同乗者選び(1)」

 『夢』も現実も忙しい一日が過ぎて、次に目覚めると昨日と似た感触に半身が包まれていた。


(男を抱き枕にしたところで、ゴツゴツしてて抱き心地悪いと思うんだけどなぁ)


 幸せな感触と匂いに包まれつつ、起き抜け一番に思った事は、相変わらずしょーもない事だった。

 そしてオレを抱き枕にしている彼女は、まだ気持ち良さそうに寝息を立てているので、しばらく今日やるべき事を考える。


 外は明るくなり始めているので、いつも通りならボクっ娘や悠里は起きて相棒の元だろう。

 耳を澄ませば、船の外で人が動く気配や音を感じ取ることもできる。

 そして昨日と違って空気は軽い。

 完全に魔物の脅威は去ったと見ていいだろう。


「となると、出発の準備か」


「……ん。らんのじゅんび?」


 呟きで彼女を起こしたようだ。


「おはよう。まだ寝てていいよ」


「……うん」


 何のひねりもなく、彼女がそのまま二度寝に入った。すぐに小さく可愛い寝息が、耳のそばで聞こえてくる。

 数日前まで眠り姫だったけど、好きにさせることにした。

 それに起きたら、この幸せな状態も解除されてしまう。


 その後、彼女の二度寝は思いの外長く、次に目覚めたのは多分小一時間ほどしてからだった。

 その間オレは二度寝する事もなかった。色々考え事をした後で、片方が寝ている間にオレの方から魔力の移動ができるか試していたからだ。

 そしてそれはうまくいったようだった。

 少しだけ移動して、彼女が寝ながらも気持ち良さそうな声で軽く喘いでいた。


 そして彼女、ハルカさんは目覚めると、着替えると言ってオレを外に出してしまう。昨日は何かのご褒美か何かだったようだ。

 仕方ないので船長室を出て、厩舎を抜けて飛行甲板へと出る。


「おはよーっ! 昨日はちゃんとエロい事した?!」


 飛行甲板では、ボクっ娘がヴァイスとじゃれていた。

 ライムと悠里の姿は甲板にはないが、少し遠くの空に青い飛龍が見える。

 他にも何体かの飛龍が飛んでいるのが見える。見た感じ、訓練というより空で遊んでいるらしい。


「朝から大声で何言ってんだよ。それに昨日は、疲れ切ってたから部屋に入ったらそのままベッドに倒れたっての」


「その割には嬉しそうな顔して。おはようのキスでもしてもらった?」


「そういえばしてもらってない」


 思わず口に手を当ててしまう。

 それを見てボクっ娘が笑う。


「まっ、みんな疲れてたからね。でも、すっきりした顔してるよ」


「まあな。そのすっきりの原因で話があるから、ちょっと来てくれ」


「何?」


 そうしてボクっ娘を連れて船長室へ。

 こっちは無言だったが、ボクっ娘も察したらしく無言で付いて来る。

 そしてそのまま、船長室の扉をノックする。


「もう終わった?」


「ええ、良いわよ」


「おはよー、ハルカさん」


「おはよう。どうしたのレナ?」


 ボクっ娘は答えとしてオレを視線で指し示す。

 するとハルカさんの表情も真剣味を増す。


「二人に話があるから連れて来た。あ、でも、トモエさんも一緒の方が良かったな」


「トモエさんならここに居るよ。で、今話すの?」


 後ろから、部屋から出てきたところのトモエさんが立っていた。


「朗報は早い方がいいでしょ」


「二人きりの時に話さなかったんだ」


「ちょっと悩みましたけど、一蓮托生ですからね」


 そう言いながら部屋に入る。

 続いて2人も入ってきて、思い思いの場所に陣取る。

 そしてオレは、ハルカさんとボクっ娘を交互に見つめた後、ハルカさんに視線を据える。


「朝から驚くだろうけど、昨日向こうでハルカさんのお母さんに会って、見舞いの話を付けてきた。他の二人も、もう伝えてある」


 そう言うと、ハルカさんが少し大きめに目を開いて小さく驚き、少しの間黙り込んで下を向く。

 ボクっ娘は無言で、聞き手に徹するようだ。

 そして数秒後、ハルカさんが顔を上げた。

 落ち着いた表情だ。


「それで、いつ私に会うの?」


「それはまだ。けど二週間後から11月以内に会う予定」


「そう……あーあ、私に会うのか。ちょっと嫌だなぁ」


 真剣に答えたすぐ後に、少しおどけた感じの声。

 本気ではないと言う事なので乗ることにする。


「えーっ、せっかくお見舞いに行くのに酷くない」


「ねーっ、彼氏がやっとの思いで辿り着くのに」


 トモエさんも乗ってくれたが、ハルカさんの表情は少し苦笑いだ。


「だって、1年半も意識不明の寝たきりよ。きっと、やつれてガリガリで土気色した肌の酷い姿よ。でも、ちゃんと見てきて」


「は、はい、必ず」


 最後に凄く真剣な表情なので、真面目言葉で返してしまった。

 それに周りがクスリと笑う。


「ショウだけじゃ頼りないから、トモエもよろしくね」


「もちろん。それにお見舞いはそれなりの人数で行っても大丈夫そうだから、みんなでお見舞いに行くつもり。特にレナちゃんと聖魔タカシだっけ? そいつを連れて行かないとね」


「あっちで魔法を使うかどうかの算段は後回しだな。先に神々の塔で聞ける限りの話を聞いてからだ」


 後ろから眠たげな顔のシズさんが、寝間着姿のまま入ってきた。

 そしてオレ達の飛行船内での朝食の時。



「うわっ、私のいない時に話すとか、マジクソだな。このクソめ!」


 妹様の罵声が飛ぶ。

 戦闘中とかは結構普通に話してくるので、平和になったのだなと逆に安心する罵声だ。


「向こうで伝えたし、話してあるからいいだろ。それに、シズさんとトモエさんは、話す時に偶然起きてきたから居合わせただけだ」


「で、でも、朝飯の時に話すって思うだろ、普通。ねえ、ハナさん、ルリさん」


「そうかもね。でもショウさんも、少しでも早く二人に、ううんハルカちゃんに話したかったのよね」


「二股以上やのに一途とか。何べんも聞くけど、ホンマええんか、ハルカ?」


 二人の言葉通り、ハナさんはオレ達の関係に肯定的だけど、ルリさんは少し否定的だ。

 そして女性陣の勢力が強いので、すでに事情を話しているが部外者なレイ博士とリョウさんは沈黙してる。いや、聞こえない振りをして朝食に勤しんでる。レイ博士など動きがバレバレだ。


 なお、オレ達同郷同士の話があるという事で、ホランさん、フェンデルさん達エルブルスの人達には席を外してもらってる。

 まあ表向きは、地表にあるとは言え飛行船としての当直など関係というのもあるので、食事時間をずらしてもらってる。


「いいのよ、ルリ。私達が決めて、ショウに飲み込ませた事だから。それに、後のことは後で考えるからね」


「まあ、ハルカがエエんやったらエエねんけどな。ショウ、あんたもしっかりしてや」


「しっかりというのは私も同意見。それで、これから神々の塔へ向かうのよね」


「ええ、そうです。神頼みするわけじゃないですけど、あそこがこの世界とオレ達の関係を一番知ってる奴がいそうですからね」


「そこで何も分からんかったら、タカシはんの出番か?」


「情報集めてから判断したいと思ってます。まあ、欲を言えば、自然治癒で普通に目覚めてくれるのが一番ですけどね」


「出来るものなら、私もそうしたいわよ」


 ハルカさんが軽くおどけて言葉を継ぐ。

 その言葉でみんなの空気も軽くなる。

 そしてこっちの意思統一は済んだので、次は同行者だ。

 当面は、『帝国』と他の『ダブル』達がどれだけ神々の塔へ向かうつもりなのかを聞かなければならない。


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