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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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471 「お見舞いの予約(1)」

 邪神大陸、地皇の神殿前広場での立食パーティーは、終始和やかでざっくばらんに進んだ。

 音頭取りは当然マーレス第二皇子で、神殿の上段を仮の舞台として、様々な人達を讃えたり紹介したりするのが、主な余興となった。

 オレ達は、マーレス殿下が「よいしょ」してくれたのだけど、舞台の上で一言とか、オレ的にはヤメてと内心叫びたくなるほどだった。


 もっとも、立食パーティー自体は1時間ほどで簡単に終わった。

 何しろ、援軍はともかくオレ達が疲れ切っていた。

 2日続けての激戦で、体力も気力も魔力も空っけつだ。

 オレがあんまり見てなかったけど、悠里は空で頑張り過ぎたらしく、食べ始めて30分くらいで端っこで座り込んで眠っていたほどだ。


 他のみんなも似たり寄ったりで、具体的な話は明日という事にして、オレ達は早々に飛行船に引き上げた。

 すぐ横では『ダブル』の「今日はこっちもハロウィンだ」などと騒ぎ声が聞こえていたけど、それも気にならないほど早く眠りについたほどだ。

 だからハルカさんとのダブルベッドも、お互い倒れ伏して終わり。ボクっ娘も、からかう言葉もなく部屋に倒れ込んでいた。




 そして眼が覚めると、いつものオレの部屋の天井。

 時間は夜明け前。11月に突入したので、外もまだ殆ど明るくない。

 こちらの体も昨日バイト漬けで疲れていたけど、向こうの体ほどじゃない。だからいつものように記録をする事から一日を始める。

 けど記録する事が多すぎるので、かなりの時間がかかった。おかげで、最近日課にしている簡単な朝のトレーニングは無しだ。


 朝食を終えて着替え、髪とか一応整え、そして財布の軍資金を確認すると玲奈を誘いに出る。

 その家の出鼻。


「ねえ、お兄ちゃん、お土産よろしく」


「文化祭だから、お土産になるようなもんはないと思うぞ」


「じゃあ土産話。ハルカさんの」


「良い返事もらえるよう精一杯してくるよ」


「うん。頑張ってこい」


「おう。じゃあ、行ってくる」


 そう、悠里の言葉通り、今日はハルカさんのお母さんと会って、こちらで眠り姫のハルカさんの見舞いをさせてもらえるようにお願いし、そして叶えるのが一番の目的だ。

 だから1回目に会いに行ってない悠里は行かないし、会うのはオレと玲奈、それにトモエさんだけだ。


 シズさんは今日は仕事だ。

 家の神社の秋祭りも終わり、大学の学園祭は九月中に終わっているので、学校のことで忙しいトモエさんに変わるように、仕事に精を出しているのだそうだ。



「それで、鈴木先輩なにか言ってたか?」


「ううん。金曜日顔出した時は何も。私に凄く気を使ってくれてるみたい」


「まあ、向こうで釘さしといたからな」


 玲奈と話しているのは電車内。横並びで座りつつ、当たり障りのない会話に興じる。


「でも、公民館でのアナザー会が賑やかになってきたね」


「その原因と結果が、昨日ようやく分かったとこだけどな」


「原因はともかく結果って?」


 彼女の疑問に対して、昨日の夜、向こうで起きた事をかいつまんで聞かせた。それが終わる頃には目的駅の近くだけど、朝にまとめていたお陰でうまく話せた。


「そうなんだ。じゃあ、リョウさんがカミングアウトするのも近いんだね」


「神々の塔の件が済めば話すんじゃないかな」


「そっか。けどカミングアウトしたら、タクミ君がまた残念がりそうだね」


「あいつの場合、理由はどうあれ復活のチャンス蹴ったから、半ば自業自得だろ」


「そうかもだけど。今回の中間タクミ君少し成績落ちたみたいだから、やっぱり堪えてると思う。だから」


「ちゃんとフォローしとくよ」


 少し嬉しそうに「うん」と答える玲奈を見ていると、最寄り駅を告げる車内アナウンス。

 そして最寄り駅から高校までの間、高校へと向かう人がそれなりに居るらしかった。


「意外に人が多そうだね」


「うちの学校じゃ、こうはいかないだろうな」


「普通の高校だもんね」


 その普通でどのくらい上位に上ればと思うと、先が思いやられる。なんてことをふと思ってしまったら、顔を覗き込まれてしまった。


「どうしたの? 考え事して」


「いや、オレ達はあと2年あると思ってるけど、トモエさんの高校だと実質高校生活の半分を受験勉強に費やすって言っててさ。差がありすぎて、比較すらできないなって」


「マイペースで頑張るしかないよ。でも、そんなに悪かったの?」


 心配げな表情がさらに覗き込んでくる。

 だから慌てて首を横に振る。


「いいや、今までで一番成績良かった。全教科大幅に点数も順位も上がった。玲奈は今回も張り出されてたな」


「あの古臭い習慣は、止めてほしいけどね」


「上位者だけとはいえ、やってる高校はもうあんまりないらしいな」


「トモエさんの学校は、結構してるらしいよ」


「ガチの進学校だもんな。けど、うちより賑やかそうだぞ」


「ホントだ」


 そう言ったところで学校に到着。

 手作りのアーチが正門でお出迎え、というのは他の学校と違いないらしい。

 ただトモエさん達の高校は私学なので、公立のうちの学校よりも賑やかだし派手だ。

 進学校だけに、こういう時は羽目をはずすからなのかもしれない。


 各クラス、各クラブも趣向を凝らしたといった感じだ。

 運動場の脇に野外ステージまで作られてるのは、かなり大掛かりだ。

 飲食の屋台はないけど、校舎内での各クラスの出し物の飲食率は高い。

 なんだか、お金をかけてる感じな出し物も少なくない。この辺りも、進学校とオレ達の通う普通の高校との違いなんだろう。

 けど、飲食系が多いのは助かる。

 何しろ今日は、ハルカさんのお母さんと会うのだ。何か買い食いしながらでもないと、間が持たない。


 とはいえ、ハルカさんのお母さんと会うのは昼からの予定なので、まずはトモエさんだ。

 もっともすぐに見つかった。

 何しろ目立つ人だし、服装が特徴的だった。


「どう、格好いいでしょう」


「す、スゴく凄く似合ってます! 一緒に写真お願いできますか!」


 オレが社交辞令する前に、玲奈のテンションが爆上がりだ。

 それもそのはずで、いわゆるタキシードっぽい男装の麗人スタイルなトモエさんは、単にプロモデルってだけじゃなくて、身長もあるし立ち振る舞いも男らしくできるので、周りを圧倒する似合い具合。

 まるで某歌劇団の男役みたいだ。


「どうして今日はその格好なんですか?」


「男女逆転ファッションショーの司会役なんだ。あと、司会を幾つか。無理だって言ったら、突っ立ってるだけで客引きになるからってさ」


 アハハと陽気に屈託なく笑う。


「いつですか? 見に行きます」


「3時。今日のクライマックスの一つなんだよねー。だから、ハルカのお母さんとの話が長引いたら、任せるかもしれないけど、構わないかな?」


「オレがしないといけない事ですから、トモエさんは文化祭の方頑張ってください」


「ごめんね。あ、あと、クラスの方の売り上げにも貢献してね。食べ物出してるから。これ割引券」


「あれ? ファッションショーは?」


「学校、というより生徒会主催」


「生徒会の役員とかしてるからですか?」


「いいや。生徒会に頼まれてね。まあ、有志ってやつ?」


「大変ですね」


「シズほどじゃないよ。シズは、大学で授業中にまで出てくれってしつこく言われて、ブチ切れそうになったってさ。丁度バズった次の週が学園祭だったから、飛び入り依頼とか断るのが大変だったみたい」


 大学だとプロをライブやトークショーに呼んだりするし、シズさんの行ってる学校はすごく大規模で賑やからしいから、有名人に何かさせようって向きも強いんだろう。


「で、何かしてたんですか?」


「いいや、ずっと仕事って事で逃げた。実際仕事だったし。まあ、あの性格だから、同級生がガキすぎて協力する気が起きなかっただけだろうけどね。

 それより、今時間あるから案内するよ。て言うかさ、私もまだ殆ど回ってないんだよね。昨日は仕事もあったから」


 相変わらず二人とも忙しいようだ。

 二人にとっては、『夢』の向こうは丁度いい気分転換の場になってそうだ。


 その後、トモエさんの案内で1時間くらい色々見たり、食べて回った。

 けど、お化け屋敷は二人に却下された。定番で2、3クラスでしてたけど、そもそも二人ともホラーは全く平気なタイプなせいだ。「面白くなーい」とかトモエさんに言われたら、別の事に時間を使うしかない。


 一方で、射的、投げ輪などは、トモエさんの独断場。

 出し物してる側が、目を丸くするレベルの正確無比さだ。この人のポテンシャルは、数字にしたら全能力値がカンストしてるんじゃないだろうかと疑うレベルだ。


 けど、オレの思い込みは間違いではなさそうで、2年、3年がしてたクイズ大会とか幾つかのアトラクションや催しで、トモエさんは出禁を喰らっていた。

 そして代わりにオレか玲奈がやって惨敗して、それをトモエさんがケタケタと笑ったり、写真や動画に撮っていた。


 また有名人で人気者なのは間違いなく、声をかけられて一緒に写真を撮ったりしていた。

 そして主に女子なのでトモエさんの方は気にならないけど、地味に玲奈も見られていたのが気になった。


 そしてトモエさんのクラスまで来たら店番交代でトモエさんは外れ、あとは二人で色々と回った。

 そうしてお昼もいらないくらい色々食べた頃、ハルカさんのお母さんからの電話。

 正門前で待ってるとの事で、トモエさんも途中で引っ掛けて急ぎ向かった。


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