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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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458 「目覚めた後(1)」

 今日は色々あったけど、まだ過去形で語る時間じゃない。

 早朝に攻撃開始し、すぐに儀式を始め、昼過ぎに魔物の群れが襲来、そして昼にハルカさんが目覚めて敵を撃退。

 その1刻(2時間)ほど経って、ようやく自分たちの船に戻ってきた。

 ちょうどおやつタイムだ。

 すでに、ルリさんが運び込みハナさんが治療していた『帝国』の兵や騎士も、自分達の船に戻っている。


 そしてゴーレムの見張りもあるし、時間的に船の当直はまだ不要なので、ハルカさんが全員を食堂に集める。

 現実の方でハルカさんが眠ってる間に分かった事については、夕食後にでも話せばいいだろう。

 一応彼女にも、彼女の事情を知るものだけで話しがあるとだけ伝えておいた。



「今回は心配かけました。それに、本当にありがとう御座いました」


 集まって一番に、ハルカさんが立ち上がり全員を見回した後、頭を深々と下げる。

 ダークブロンドのロングヘアが床につくほどだ。

 そして3つ数えたくらいに頭をあげる。


「気にするな。持ちつ持たれつだよ」


 シズさんが静かに口にして、みんなも頷くなりして自分の意思を示す。

 後ろの方に座る家臣の人達は恐縮している。


「そうかもね。けど、本当にありがとう。と言っても、倒れる前の戦闘から一気に記憶が飛んでるのよ。だから神殿の大聖堂の中で目覚めた時に魔物の大群と戦闘中って聞いて、まだ飛行場の敵と戦ってるんだって思ったくらいなのよね」


「なるほど。それで、眠ってる間の意識とか記憶とかそう言うのは一切ないんだな?」


 シズさんの言葉に首を左右に振る。


「取り留めもない夢は沢山見たと思うけど、それだけ。お話みたいに、誰かの呼びかけが聞こえた気はしたけど、多分夢ね」


「体の調子は?」


 オレの質問に少し顔をしかめる。


「私自身は快調そのものって感じなんだけど、詳しいことはクロが知ってるらしいわ。正直聞きたくない気もするんだけど」


「と言うことだ、クロ」


「ハッ」


 戦闘終了後はすぐに飛行船内に戻していたクロが、給仕役を止めて全員に向けてお辞儀する。

 けどクロにしては、すぐに話し始めようとはせずに体ごとハルカさんに向く。


「皆様の前でお話しして構わないのでしょうか、ハルカ様?」


「そこまで重要な話なの?」


「ハイ。世界そのものと「客人」の方々に関わるお話になりますので、聞かれたとしてもこの場で忘れる方が賢明な方もいらっしゃるかと」


「だそうです。聞きたい人だけ残って下さい」


 聞いて即立ち上がったのはホランさんだ。

 続いて、アイパッチを弄っていたフェンデルさんも立ち上がる。


「嬢ちゃんが元気になったって分かっただけで十分だ。俺達は聞かない方が身の為だろう。行くぞ、お前ら」


「俺達も行くか」


「申し訳ありません」


「気にすんな」


 そう言って家臣の人達が出て行く。

 こっちとしては、頭を下げるしかない。

 家臣の人とは少し違うが、リョウさんは「僕が聞いて良い話だけ後で教えてください。その間、神殿の中とか描いてきていいですか?」と半ば自己完結で出て行った。

 それを関西弁の人が目で見送りつつ隣を突っつく。


「うちらええの? ほとんど部外者ちゃうか?」


「ハルカちゃんの事を聞くんだから当事者でしょ」


 お友達の二人は意見が分かれてるが、普段元気なルリさんがハナさんにそのまま説得されていた。

 それとは対照的に、レイ博士はかぶりつき状態で、早く話しを聞きたそうにしてる。

 そして最後にシズさんが魔法を構築する。

 防音の魔法だ。

 そしてハルカさんの頷きを見て、クロが口を開く。


「それでは、可能な限り短くお話させていただきます。

 結論から申し上げると、ハルカ様の状態は依然として不完全です。問題点は二つあり、その片方しか解消されておりません。

 ですから今回の目覚めも一時的で、問題の根本部分が解消しておりません。また、長期の眠りに落ちる可能性が高いとも予測されます」


「解決方法や原因は?」


 シズさんが短く問う。


「問題の片方、しかもより深刻な問題は、我々の感知できない異界にある可能性が非常に高くあります」


「その事を、クロは感知できているわけだな?」


「左様です。問題は異界にあります。ハルカ様の依り代は、我々同種の魔導器全てが調べた限り、最良の状態にあります」


「クロの言う通り」


 ハルカさんの後ろに居るミカンが、珍しく強い語調で、さらに強く頷く。

 シズさんの隣ではトモエさんが、懐からキイロを取り出して人化させ、小声でコントをしつつもキイロも調べている。

 似たような事は、レイ博士とスミレさんもしていた。

 シズさんの後ろのアイも、目を閉じて何かを調べてる。


(て言うか、キューブが5つも揃ったのか。7つ集めたら何でも願い事が叶うのかな?)


 思わず間の抜けた事を思ってしまう。

 けどそう思えるのは、クロの言う異界の事情を少し分かってるお陰だ。

 けれどもそれはハルカさんはまだ知らないので、少し眉を寄せる。


「それでクロ、いつ再発するの?」


「次がいつ起きるか、正確には分かりません。ですが、今日明日では御座いません。この点は断言できます」


「来週以降は分からない、とか言わないでね」


「この状態であれば、年単位で問題ございません」


 クロの言葉に、「そう」とハルカさんが安堵のため息を漏らす。

 安堵したのは全員同じだ。

 けど、年単位と言った。


「あのさ、来年以降は分からないって事だよね?」


 いち早くトモエさんが、次の疑問を口にする。


「左様です。異界側での問題を根本的に解決する必要が御座います」


「まあ、異界の方は今はいい。それで、こちら側で解決できた事は?」


 シズさんの言葉にクロが素直に頷く。


「ダンカルク様が行われたのは、ハルカ様を目覚めさせる為、邪魔をしていた魔力の淀みと流れを正常にするべく、わたくしが行う依り代を用意する際に用いるのと似た処置を体に施しております」


「えっ? じゃあ何? この体、前と違うの? 蘇生的な事をした、とか?」


 ハルカさんの顔に少し焦り浮かぶ。

 思わずと言った感じで、両手を上げて下を向き、自分の体をキョロキョロと見渡す。


「ダンカルク様達の儀式魔法によって、ハルカ様の体内で余剰して流れを邪魔する魔力を、安定した流れに再配置されておりました。

 その際に、全体として魔力総量の増加と、それに伴う身体能力の向上、魔法能力の向上が見られる筈です」


「ハルカが長い眠りに落ちた原因の一つは、魔力の流れが不安定だった事が、お前達の言う所の魂に悪影響を与えていたと考えれば良いのか?」


「左様です。戦闘などによる一時的な魔力の激しい増減が、魂と異界を結ぶ面に悪影響を与えていたと考えられます」


 シズさんの言葉に、クロがさらに説明を加える。

 けど、ちょっと疑問が出てきた。


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