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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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454 「魔物の逆襲(1)」

「予想より随分早かったな」


「空からって事は先遣隊ですかね?」


「どうかな? 偵察では、確かに地表を進む内陸部の本隊が来るのは明日だ。相当集まっておるらしいぞ」


「アレは別の場所から?」


「我が友たちが祖国の連中の主力も叩いたから、もしかしたらかなり奥地から出てきた連中かもしれん。ここからでも、強い魔力を感じる」


「そうですね」


 横に並ぶマーレス第二皇子の言葉のうち、魔力に対してのみ同意した。

 空から急速接近中なのは、様々な空飛ぶ魔物を騎手とした集団。

 数は32騎。

 飛龍6、翼竜11、獅子鷲15。2体飛龍の乗り手からは、遠くからでも大きな魔力の放射を感じる事ができる。

 うち一つは、先日『帝国』で仕留め損ねたやつだ。


 あいつの取り巻きの強いやつは倒したけど、他の飛龍に乗ってる奴らも油断は禁物だろう。

 他もCランク以上の魔物の筈だ。

 加えて、それぞれの背に1、2体の魔物を載せてそうだ。

 つまり魔物の数は50体以上と見ていい。


 しかもさらにその後ろに、天馬や飛馬が淀んだ魔力で魔物化した魔天馬が100騎ほど追従してる。

 背中に魔物を複数乗せている場合、人型の魔物の数は200体にもなる。


 そして周囲を哨戒していて、運良く先に発見し、そして帰投した獅子鷲の騎士は、どの魔物も二人乗り以上だと報告している。

 その獅子鷲が迎撃されなかったのも、それぞれの飛行生物が複数の魔物を乗せていて重かったおかげだ。

 どうやら魔物どもは、オレ達の不意の聖地占領に随分お冠らしい。


 対するこちらは、ヴァイスとライム以外は獅子鷲が14騎。ヴァイスとライムが強いと言っても、かなりの劣勢だ。

 地上戦力は、飛行船2隻に『帝国』兵を中心に150の騎士と兵士が居る。けど魔物は、竜騎兵というだけで最低でもAランクの強敵だ。

 通常なら防御に徹しつつ撤退しかない。

 けど、ハルカさんの儀式魔法はまだ終わっていない。しかも時間から考えたら後少し、四半刻もない筈だ。


 なお、空から接近中の魔物を見つけた報告を受けたのは、この時点からさらに10分以上前。

 『帝国』軍は、すぐに動けば逃げようと思えば逃げられた可能性は十分にあった。

 オレ達が神殿から一度出てきた頃には、地皇の聖地周辺の魔物は倒すか逃げていたし、『帝国』のオレ達への協力は地皇の聖地に来るまでだ。


 けれどマーレス殿下は、一度奪回した聖地を簡単に明け渡す事は『帝国』の威信と誇りにかけて出来ないと将兵達の前で宣言していた。

 しかし本当のところは、こちらが詳細を伏せている儀式の完了を

待ってくれる為だ。

 性分だと言ったけど、後ろの側近の人が苦笑気味もしくは諦め気味なので、確かに殿下の性分なのだろう。


 だから『帝国』軍は地皇の聖地に止まり、その後は万が一を想定して防御陣地の構築した。

 2隻の飛行船も上空に待機して、魔物の襲撃に備えていた。

 そして一つの情報が、『帝国』とマーレス殿下が残った最大の理由になっていた。



「それは誠か?」


「事実だ。今行なっている儀式魔法が完成すれば、魔法の影響で一時的ではあるが地皇の聖地の中核部分の浄化結界が作動する可能性が高い。ただし、作動するかどうかは我々にも未知数だ」


 この言葉は、魔物が襲ってくると分かった直後、妖人の獅子鷲隊の隊長の言葉だ。

 武人っぽい人で特に名乗っていないが、やっぱりハリウッド俳優のような銀髪イケメンだ。

 ミスリルの鎧も魔法の弓も良く似合っている。


「ダンカルクさんから聞いてませんが?」


「作動しない場合もあるから、おさは慎重を期したのだろう。この大陸では、常に最悪を想定して動かねば、我ら妖人でも生き長らえられない」


「にも関わらず、なぜその言葉を我らに告げた?」


 マーレス殿下の言葉と表情が厳しい。

 淡い期待を抱くなと言って、期待を持たせる言葉をかけられたのだから当然だ。


「私も、期待したいのだ」


 ハリウッド俳優真っ青なイケメンエルフは、そう言った。

 セリフまでが映画みたいだ。


「どのくらいの確率ですか?」


「儀式をされる者に左右されるが、普通なら半々。ただしこれは妖人の場合だ。しかし今回儀式を施すルカ殿は、聖人に匹敵する魔力総量を有している。

 さらに先程までの戦闘で魔物の膨大な魔力が放出され、そのかなりが神殿の大聖堂に流れていた。

 これほどの規模は我々も想定外だけど、巨大な力の発現の可能性はかなり高まったと考えていいだろう。しかもこれから、ここには膨大な数の魔物が押し寄せる。それらも神殿にとっては、良い「贄」になるだろう」


「……勝算あり、しかも低くはない。よかろう、その話乗った!」


「で、殿下!」


 後ろで側近や部下の人達が悲鳴に近い呼びかけだ。

 まあ当然だろう。

 しかしオレは、最初からどうするかは決まっている。

 それが分かってボクっ娘が問うてきた。


「どうするの?」


「ハルカさんが目覚めるまではここを動かない」


「まあ、それしかないからな。私は出迎えの準備をしている。あとは任せた。アイ」


「はい、お供いたします」


 言うだけ言うと、既に神殿の奥から戻っていたシズさんが、臨時作戦会議の場を去って行った。シズさん的には、ハルカさんへの恩を返すってところだろう。

 けど妹のトモエさんはその場に残っている。

 他のみんなもだ。

 そこでオレは、我が友と言ってくれるマーレス殿下へと正対する。


「マーレス殿下、オレ達の指揮もお願いします。オレじゃあ、どのみち指揮とか無理なので、神殿の入り口で通せんぼするくらいしか出来ませんから」


「相分かった。貴殿らの指揮もとらせて頂こう。だが、ショウだけ楽をしようとしても、そうはいかんぞ。ワシと共に強い魔物を仕留めてもらうからな」


「バレましたか。では、殿下にお供します」


「うむ。では、差配だが……」



 そこから簡単に迎撃の為の配置がマーレス殿下から伝えられた。

 と言っても、この時点では魔物の勢力が正確には分からないので、ざっくりとした配置だ。


 ボクっ娘と悠里は、他の獅子鷲と共に制空権の確保。

 共同行動は難しいので妖人の獅子鷲が面の陣形で空を守り、『帝国』の獅子鷲は飛行船の防衛、二人が遊撃隊となる。


 地上は神殿の入り口前の両脇に飛行船を置き、さらに出入り口には最終防衛線として、博士のゴーレム隊を配置。

 その「コ」の字の場所を主な戦場として、一度に戦える数を魔物に限定させる。

 上空を抜けられた場合は、飛行船の弩と弓隊で対応。


 あと、レイ博士とリョウさんも、『帝国』の魔法使いと共に、比較的安全な各飛行船内から魔法で援護。

 レイ博士の側にはスミレさんがいるから、直接攻撃されても下級悪魔程度ならなんとかなる筈だ。

 フェンデルさん以下ドワーフ達は、錬金術師として魔法もそれなりに使えるので、多少荷が重いが飛行船の防御魔法を担当してもらう。

 ハナさんは、最初に飛行船の防御魔法の構築を手伝った後は、もちろん治癒魔法のために待機だ。


 そして神殿前の広場に、接近戦の騎士達が詰める。

 マレース殿下の配下は、騎士50、兵士100。Sランク級はマーレス殿下自身と、腹心の部下の近衛騎士が一人。そういえばこの人も、終始兜を被りっぱなしで顔を見ていない。

 それに『帝国』騎士には、兜かぶりっぱなしな人が多かったように思う。この場の騎士も、脱いだところは殆ど見ていない。

 それどころか名乗りも紹介もされていない。

 何かしらの決め事か縛りでもあるんだろう。


 それはともかく、オレ達の方はオレとトモエさんを中核に、ルリさん、ホランさんと獣人3人。

 数が少ないので、『帝国』軍が面で魔物を押しとどめ、オレ達は遊撃で強そうな奴を優先的に相手する。

 何しろマーレス殿下を戦わせるわけにはいかない。


 そしてとりあえずの配置を急いで終える頃に、魔物の群れが空からやって来たと言うわけだ。



「さて、強い魔物の相手だが、ショウらの手に余ると判断すれば、我かこの者が助太刀に入るが良いな」


「指揮権は殿下にありますから異論は言えませんが、殿下は前に出て良い身分じゃないでしょう?」


 オレのぞんざいな口調に部下の人はややしかめ顔だけど、殿下は豪快に笑い飛ばす。


「友が臣下と似た事を言うものではないぞ。友の窮地に駆けつけてこそ、我もショウを友と呼べよう」


「では、その時はお願いします。とは言え、窮地に陥らない程度の魔物なのを期待しときますよ」


「全くだな。さあ、そろそろだ。出迎えるとしよう」


 そう言った視線の先では、ヴァイスとライムが先制の一撃を上空から浴びせかけるところだ。

 魔物の群れもなまじ大群なせいか、動きがやや鈍い。

 それによく見れば、『帝国』軍とは違って編隊や陣形を組むのが下手くそだ。

 後ろの集団など、他に敵がいなければヴァイスにとっていい鴨でしかないだろう。

 集団戦に慣れていないのが丸わかりだ。


 けど、満員御礼千客万来な魔物の数なのは間違いない。

 約250体全部がCランク以上とか、以前一緒に戦ったノヴァのあの時の軍隊くらいが必要だ。

 しかし先制攻撃はボクっ娘と悠里だけじゃない。


 空の先制攻撃で敵前衛の1割ほどを削った後、ヴァイスとライムは遁走に入ったけど、これで敵の陣形の右翼が無くなった。

 そしてそこに、妖人の緊密な訓練された編隊が襲いかかり、互角以上の空中戦が始まる。

 けどそれで、こちらの空中戦力を短時間拘束できたと考えた敵が進撃速度をあげて、こちらが作った戦場へと入ろうとした刹那、空中で大爆発が起きる。


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