表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

330/402

448 「再集合(1)」

「久しぶりーっ!」


「久しぶりーって、毎日顔合わせてるだろ!」


「お前に言ってんじゃねーってのー!」


 浮遊大陸に近づくと、迎えの翼竜に混ざって悠里を乗せた蒼い鱗のライムも飛んできた。

 何かあったのかと一瞬緊張したけど、『帝国』内のゴタゴタは取り敢えず落ち着いたらしい。

 だから単に、エルブルスの人たちと中身がボクっ娘なレナを悠里が迎えに来ただけだ。


 けどその少し前に、こちらからはボクっ娘もヴァイスで飛び出して先行していたので、並行飛行しながら飛行船に挨拶に飛んできた形になっている。


(まあ、とにかくこっちは何事もなしって事だな)


 現実の方で聞いているが、こうして目の前にすると実感が持てる。

 この感覚は、タクミや鈴木副部長がこっちに来てすぐの頃に持ったものなんだろう。




「良く戻った、我が友よ!」


 『帝都』、永遠の都『ゾディーク』の大きな飛行場に降り立つや、野郎に抱きつかれてしまった。

 我が友なんて言うのは勿論マーレス第二皇子だ。


(オレ、この人とここまで仲良かったかな?)


 軽く疑問に思いつつだけど、お連れとかもいるのでマーレス殿下流の周りへのパフォーマンスなのだろうと割り切る。

 その証拠に抱きつきつつ、短くささやかれた。

 「ショウの仲間達から話は色々聞いておる。我に任せよ」と。




 そして取るものも取り敢えず、まずは『帝都』にある聖女様のいる大神殿へと直行する。


「ただいま」


 ベッドに眠り続けるハルカさんの手をとる。

 周りの目が気にならないと言えば嘘になるけど、約三週間も会ってないから自然と感情が行動になった。

 そうして取った手は柔らかく、何より温かかった。

 眠る表情も穏やかで、やつれた印象などマイナス要因は見られない。

 今にも目を覚ましそうだ。


「いつまで手握ってんだよ。他の人達もハルカさんに挨拶しなきゃだろ」


 どうやらかなりの時間そうしていたらしく、妹様に頭を小突かれてしまった。


「ハルカさん、ただいま」


 オレに少し複雑な視線を向けて来たボクっ娘だけど、それも一瞬でハルカさんに穏やかな表情を向けてた。


「ハルカ、ホンマに眠り姫なんやなあ」


「お久しぶり。それで、点滴の必要はありますか?」


 ハナさんは既にお仕事モードだ。

 それにシズさんが首を横に振る。


「まだ大丈夫だ。十分すぎる魔力を持っていたお陰か、バイタルは十分健康。生命力を注ぐ魔法も不要なほどだ」


「それに目覚めた時のためにって体のストレッチのリハビリしておこうかと思ったけど、それも全然いらない感じ」


 その後をトモエさんが継ぐ。

 そしてさらに、聖女二グラス様こと緑色のキューブのヴィリディさんが続ける。


「低い魔力総量だと、既に衰弱していてもおかしくないのですが、流石は本物の聖人級の魔力の持ち主です」


「えっ?! ハルカちゃんそんなに魔力あるの?!」


 ハナさんがめっちゃ驚いている。


「ハイ、間違いありません。ただし、楽観は禁物です。既に若干ですが衰弱の兆候は現れ始めています」


「それなら、念のため点滴はすぐに始めますね。それに、ハルカちゃんお腹空かしてるだろうし」


 ハナさんがハルカさんの隠れ腹ペコキャラな秘密を暴露する。

 とはいえ周知のことなので、その言葉みんな少し和んだ。

 ルリさんなど、小さくだけど声を出して笑っている。


「ほんまほんま。せやけど、はよ出発せなあかんな」


 ルリさんの言葉が、これからの行動の要約だった。

 そしてやるべき事は既にほとんどが完了しているので、顔合わせと打ち合わせを今夜中に済ませ、明日の朝出発する事に決まった。


 なお、その後アイにハルカさんの体の中の魔力の流れを見させて、さらに調整出来ないかを聞いてみたが、答えはやはりノーだった。

 体内の魔力の様子も、クロの判定と変わらなかった。

 こっちのカードは、一枚は使い道はあったけど、一枚空振りという事になる。

 こうなったら、すぐにでも邪神大陸に行かなければならない。




「オレ達は早朝出発でいいとして、『帝国』はどう動くんですか?」


 夕食後、眠り姫のハルカさんを除く飛行船の幹部と『ダブル』が集まり、お茶や軽く飲みつつの話し合いとなった。

 出発前では、これが最後の話し合いだ。

 場所も既にオレ達の飛行船の食堂だ。


「飛行船が1隻、一緒に向かう。細かい話は聞いていないが、マーレス殿下直属の有力な軍艦を出してくれるそうだ。

 だが、竜騎兵は簡単には国外には出せないだろうから、飛行生物を載せていても獅子鷲と連絡用の翼竜か飛馬が数体だろう」


 シズさんが淡々と事実を口にする。

 特に問題はないと言いたげだ。

 けど、オレの懸念はゼロじゃない。


「それだけですか? マーレス殿下が我に任せよとか言ってたんですけど」


「確かに色々尽力して頂いた。飛行船も兵もマーレス殿下の配下だ」


「でも、私はすっごく来て欲しくないんだよね」


「だから、一計を案じてある」


 間にトモエさんの嫌そうな表情と言葉が挟まる。そこでシズさんの表情も変化する。

 オレが単純バカじゃないか試されてたんだろうか。

 そう思うところに、シズさんの声が届いてくる。


「『帝国』からは、色々支援をしてもらう。その代わり、邪神大陸の魔物の森を焼き払う実験をする事になっている。ノヴァでの話が伝わっていて、随分期待を持たれているようだ」


「だからって、今、魔物の森を焼かなくてもいいのでは?」


「『帝国』の目を、そこに釘付けにするためだ。それに多分、魔物も寄って来て『帝国』軍がそこから動けないだろうからな。後はマーレス殿下が何とかしてくれるらしい」


「えっ? マーレス殿下も行くんですか?」


「今回の件で、邪神大陸の魔物が『帝国』本土にちょっかいを出しているのが分かった以上、穏健派の皇族トップであるマーレス殿下が直接何かをして見せるのが、穏健派、急進派双方へのくさびになるのだそうだ。まあ、一種のパフォーマンスだな」


「それに、邪神大陸を覆う魔物の森を焼き払うだけで魔物を何とか出来て、そして楽に進出できるのなら、急進派、穏健派でいがみ合う必要性も大きく低下するんだってさ」


 シズさんの言葉を、またトモエさんが引き継ぎ肩を竦める。

 色々と面倒ごとは尾を引いているようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ