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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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445 「眠り姫の母(2)」

「それじゃあ」


 思わずこちらも聞いてしまう。


「はい。主治医は、良い兆候だと。それと、月待さんからご連絡を頂いた日に、その事がありました。正直、何かの巡り合わせじゃないかと思えたほどでした。もし娘の体の事がなければ、お話しする件はお断りしていたかもしれません」


 まるでハルカさんが、お母さんの背中を押したような、もしくはオレ達を手助けしてくれたような感じがして、思わずこちらも笑みが出てしまう。

 それに再び笑み返されてしまった。


「今日はお会いできて本当に良かったです。よろしければ、私の知らない娘の、遥の事を聞かせてくれないでしょうか」


「ゲームと、そこでの他愛のない話ばかりですよ」


「もちろん構いません。けど、あの真面目一辺倒のハルカがネットで友達とゲームしてたなんて、ちょっと意外です」


「ゲームの中でも、真面目な人でしたけどね」


「アラ、そうなんですか」


 そう言って楽しそうに笑う。

 何だか故人の思い出話っぽくなっているけど、そうではないのはハルカさんのお母さんの表情から間違いなさそうだ。



 そして時間も過ぎて、そろそろ別れなければならない時に切り出した。


「あの、もし可能でしたら、お見舞いすることは出来ないでしょうか」


 なるべく真剣に、そして言葉にも力を込める。

 両隣でも、二人が同じように真剣に見つめる。

 ただここで頭を下げるのは少し違う気がしたので、あくまで可能性を探る態度に留めた。


 そしてハルカさんのお母さんも真剣にオレそして、両隣の玲奈とトモエさんを見つめ返す。

 そして数秒して、小さくため息をついた。


「面会は家族だけ、しかもごく短い時間だけという事になっています。私が同席すれば面会は可能とは思いますが、もう少し待っていただけますか。

 それと、皆さんの事をもう少し知りたいと思いますので、次お会いした時にお返事させて頂いても宜しいでしょうか」


「はい、こちらこそお願いします。それで、次はいつにしますか?」


「ショウ君、気が早いよ」


 玲奈にまた手を引っ張られた。

 隣ではトモエさんの目も笑っている。

 ハルカさんのお母さんにも、小さく苦笑された。


「構いませんよ。けど、急すぎても何ですから、一ヶ月後を目処にしませんか。それに私も今すぐにはスケジュールを開ける事は難しいですし、皆さんもすぐにはご無理でしょう」


 暗に急ぎ過ぎるなと言われた気がした。

 だからここは素直に引き下がる。


「では、二週間後くらいを目処に、一度こちらからご連絡を差し上げてよろしいでしょうか?」


「そうですね。それくらいでお願い出来ますか。あと今日の事は、時期を見て他の家族にも伝える事になりますが、よろしいでしょうか?」


「それは全然。あの、一緒には住んでらっしゃらないんでしたっけ?」


「ええ。遥はそんな事も話してたんですね。

 うちはバラバラで、今も変わっていないんです。だから連絡すると言っても、精々電話かメールになるでしょうね。

 遥が家に嫌気が差していたのも、今なら少し分かる気がします」


 思わず漏れた愚痴って感じなので、ここはスルーを選択した。

 ハルカさんのお母さんも、自分の言葉に気がつくと苦笑いで、そしてそれが面会の終わりとなった。




 そしてその帰り道。


「ウーッ、緊張したー」


「わ、私も」


「だよね。でも大収穫だったね」


 トモエさんはあんまり疲れてなさそうで、相変わらず精力的と言える表情だ。


「トモエさんのお陰です」


「今日は何もしてないよ。でも、次にも繋がったし、向こうの力を利用した魔法や奇跡を活かす機会もあり得そうだよね。ちょっとワクワクする」


「オレも希望が湧いてきました」


「私も。でも本当に、こっちでハルカさんに会えるんですね」


「まだ可能性が少し高まったってだけだけどな」


「アレ? 慎重になってない? もっと楽観的に考えてなかった、ショウ?」


 トモエさんが言いながら、グーっとオレの顔を覗き込んでくる。


「楽観できそうな時は、楽観しすぎない事にしてます。調子乗ったら、大抵しっぺ返しくらいますからね。自分一人の事じゃないと思えば、尚更ですよ」


「確かにね。とにかく、次は向こうでハルカさんを目醒めさせないとね」


「そうですね」


「そっちはお願いね。私、何も出来ないから」


「そう言えば、向こうも見れなくなったんだっけ?」


 今度は玲奈へと体を傾け、そのまま抱きついてしまう。そして玲奈は、天下の往来でも自然にトモエさんのハグを受け入れてる。


「うん。でも、今まで通りだから」


「そっか。私は向こうで二人のレナに会ってみたいんだけどな。無理そう?」


「けど、そうなると、もう一人のレナは完全にこっちに出てこれなくなるから、今のまま簡単に入れ替われるのが一番だって言ってましたよ」


「私もそれくらいの方が良いかな」


「なんだ、お互いの気持ちが一致してるなら、それっていけるんじゃないの?」


 抱きついたまま、大きく首を傾げる。

 なかなかに器用な姿だ。


「どうなんでしょう。私にもよく分かりません」


「私にも分かりませーん。テストなら簡単に分かるんだけどねぇ」


「オレには、そのテストの方が、分かってませんよ」


「シズに教えてもらってるのに?」


「一学期より少しはマシになってきたとは思いますけど、今までの積み重ねがありませんから」


 そう、総大神殿イースから『帝国』の『帝都』に行くまでの間に、現実世界では中間テストが横たわっていた。

 今までよりずっとマシにはなりそうだけど、教えてもらっているシズさんの努力に報いるためにも、何より自分のためにも頑張りたいところだ。


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