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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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439 「レナの覚醒?(2)」

「りょーかい。あ、そだ、魔力が漏れてたって、クロから見て異世界に魔力が流れてたって事?」


「レナ様の魂を通じたこの世界の先、としか分かりかねます。この世界の外について、わたくしの能力では感知する事は適いません。力足らずを、お許し下さい」


 クロがさらに慇懃にお辞儀を繰り返すけど、ボクっ娘が両手を前に出して否定する。


「いいよ全然。でも、ちょっと話が進んで謎が解けた気がするね」


 言葉の最後にオレにニヤリと笑いかける。


「そうかもな。けどさこれって、もしかて魔力的にこの世界とオレ達の世界と繋がってるって事かな?」


「その可能性はゼロじゃなさそうだよね。でも、向こうじゃ魔力を察知できる人がいないから、分からないだろうね」


「いや、そうでもないだろ。向こうの玲奈の側で魔法を使えば、もしかしたら使えたりするんじゃないか?」


「どうだろうね。シズさんにでも頼んでみる? ボクはそこまでいい加減というかご都合主義的な事はないと思うけど」


「じゃあ、どう思ってるんだ?」


「この世界とボク達の世界を繋いでる空間とかトンネルみたいな場所に魔力が漏れてた、くらいじゃないかな? ボク達の中途半端な状態が生み出した歪み的な事が原因で」


「それで二重人格が別人として解消しつつあるから、エラーがなくなって歪みも漏れも消えたと?」


「そんな感じ。まあ、雑談はここまでにして出発だよ」


「お、おうっ!」



 そこでボクっ娘の話を切り上げ、その日の朝食が終わると飛行船「エルブルス号」は出発した。

 乗り込んだのは、『ダブル』がオレ、ボクっ娘、レイ博士、リョウさんの4人。こっちの世界の人は、獣人がホランさんと他3人、矮人がフェンデルさんと他3人。

 合わせて12人だ。

 その気になれば約40名以上、実際はその半分の20名程度が乗り込める部屋と物資、保存食を用意してある。


 航海の方は、最初の一日は比較的安全な黒海上空で船の操作に慣れる訓練をしつつ暮れていった。

 そして洋上の空で停泊した次の日の夕方早めの時間には、ノヴァトキオに到着予定だ。




 そして次の日の現実。

 玲奈の家の一室を借りてのシズさんの家庭教師の日。


「「おぉー!」」


 締め切った部屋で、その場にいた5人全員が驚いていた。

 5人なのは、トモエさんも緊急で呼び出したからだ。


「本当に魔力があったとはな」


 片手を玲奈の体に密約させつつ、『灯火の魔法』という最も初歩的な魔法の明かりの魔法を構築したシズさん自身が、半ば呆然と驚いている。

 構築の際の魔法陣も浮かび上がるのが見えた。

 けど、すぐに魔法を停止させる。


「アレ? どうして消すんですか? 次の魔法を試すんですか?」


 悠里の言葉に、シズさんが首をゆっくりと横に振る。


「玲奈の体に魔力が溜まっているのだとしても、この現実世界には恐らく他のどこにもないと思う。だから、万が一必要な時が来た時に備えて、なるべく節約する方が良いだろ」


「確かに。ハルカさんの復活にも役立つかもしれませんね」


 うん。我が妹様は、伊達にオレより頭が良いわけじゃないらしい。

 すぐに理解していた。

 そう、体が無事なら、治癒魔法で昏睡状態なりが治せる可能性だってゼロじゃないのだ。


「でも驚きだね。この世界と『夢』の世界って、物理的にも繋がってたんだ」


「今の情景が集団幻覚じゃなければ、だがな」


「確かに、魔力は感じられませんでしたね。玲奈、何かそういうの分かるか?」


 オレの言葉に、玲奈が少し目を閉じて何かに集中したあと、目を開いて首をゆっくり横に振る。


「……ううん、何も。でも私、向こうで数日しか過ごした事ないからかもしれないし」


「玲奈、気にしない気にしない」


「そうだな。魔法を使った私も、魔力自体は感じなかった」


 常磐姉妹がスキンシップ込みで、玲奈に言葉をかける。

 しかも放っておくと、そのままスキンシップを延々としてそうだ。


「それでシズさんって、治癒魔法は第一列まででしたっけ?」


「ああ。応急処置か軽い傷を治すくらいしかできない。トモエは?」


「えっ? トモエさん治癒魔法も使えるんですか?」


「多少ならね。何しろ私の属性、治癒も得意な水皇だし。でも第二列までだから、意識不明をどうこうできるレベルは無理だね」


「そうか。最低でも第三列となると、眠り姫当人じゃなければ治せないわけだ。ままならないな」


 このシズさんの言葉にピンと来た。

 と言うより、シズさんの以前の状態とハルカさんの魔法が結びついた。


「こっちでシズさんみたいに幽霊みたいな状態で出現できれば、魔法使えないですかね?」


「幽体のようなものにも魔力がかなり必要な筈だが、意思を持って出現できれば可能性はあるかもな」


「じゃあ、今のところはその辺りに期待したいですね」


「フフッ。ショウは、初めて私のところに来た時から変わらないな」


「あー、その話ちゃんと聞いてないかも。話してよシズ」


「今日は時間がない。試験も近いし、勉強しないとな。ホラ、用が済んだんだからトモエは帰るか自習でもしろ」


 シズさんがトモエさんを手で「チャイチャイ」と、ぞんざいな扱いをする。


「うち、もう受験カリキュラムに入ってるから、試験なんかカンケーないって」


「えっ、まだ高二ですよね?」


「うちの特進クラス、高二の一学期つまり高校生活の実質半分くらいで高校のカリキュラムは終了。高卒認定もとっくにクリア済み。あと1年以上、受験に向けてまっしぐらー、なんだよね。ハルカも高認は問題ないじゃないかな? 早い子は1年の秋に取っちゃうくらいだから」


「ハルカは偏差値の話しもていたしな。多少極端だが、進学校はどこも似たようなもんだ。私の通った高校もそうで、高二の頃に一年上の人の勉強見ていた事もあるぞ」


 雲の上かと思ってたけど、ガチの進学校は空の彼方の存在だった。

 隣で悠里も目を丸くしている。

 けど玲奈は知っているのだろう、特に反応は見せていない。

 そしてだけど、そう言う進学校にハルカさんは通ってたのだ。


「どうしたの?」


 オレの表情を見て、玲奈が顔を覗いてくる。

 今までより少し近い距離だ。


「仮にハルカさんが眠り姫で、そこから目覚められたとしてもって、思ってな。それで、オレ何も考えてなかったなって」


「そんな事ないと思うよ。だって、ハルカさんはショウ君の言葉を受け入れて、嬉しいって言ってくれたんでしょ」


「う、うん。けど、オレが考えなしだったのは間違いないよ」


「ならもう少し慎重に行くか? まだ具体的な事は何一つ分かってすらいないぞ。こっちで眠り姫なのか、あっちで復活方法が存在するのか。そのどちらもな」


 シズさんは、何を今更と言った表情ながらも、オレに現状を認識させようと言葉を続ける。

 そう、まだ何も分かってないのだから、何かを思ったり、判断する時間じゃないのだ。


「すいません。余計な事を考えちゃいましたね。まずは、状況の確認と方法の調査ですね。あとは、その時に考えましょう」


「うん、私もそれがいいと思う」


 玲奈が、言葉と共にそっと手を添えてくれた。

 それを常磐姉妹は目を細めて、悠里は少しジト目な感じで見ている。

 ボクっ娘はもう伶奈を通して見ていないと言うから、あとで経緯を伝えないと行けないだろう。


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