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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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433 「船員選び(2)」

「船長、補給官(副長)、航法士、制御士、操舵士、補給士、保管士、船匠、船医、治療師、魔導師、調理師、見張り兼弓手、空兵? 楽師、それに竜騎士に龍調教師。……役職だけでも一杯あるんですね」


「まあ飛行船も船だからな。だが空を飛ぶから、普通の船と比べれば、乗り込む人数は随分少ないぞ」


「そして《エルブルス号》は、我輩のゴーレム達が多数乗り込むので、さらに省力化が計られておる!」


 フェンデルさんの言葉を遮るように、レイ博士が大声で主張する。

 後ろのスミレさんが呆れ、隣のリョウさんが苦笑しているので、ここでも日常風景なのだろう。

 そしてその博士の言葉に促されるように、もう一つの方へと視線を向ける。


「確かに少ないですね。あと、役職の横が空いてるのは、誰かの名前とか入れるんですか? 埋まってるのもありますが」


「うむ、そうだ。我輩は、本当は技師長が良かったのだが、機関長を出来るのが我輩しかおらんので、断腸の思いで機関長の座を頂いた」


「ハア、そうですか」


 相槌こそしたけど、自分でも良く分かってない。

 けれど、他に埋まっているのは船長がオレの名で、船匠がフェンデルさん、そして空兵隊長にホランさんの名がある。

 そして少し意外なのがリョウさんで、操舵士の所に名が記されている。

 操舵とは確か船の操作そのものをする事だ。


「リョウさんって、何か免許持ってるんですか?」


「車は持ってるけど、クルーザーも飛行機も飛行船も勿論ないからね」


「だが、ゲームをやり込んでいるのだそうだ」


「ゲーム?」


「飛行シュミレーターとかね」


「飛行機を飛ばすゲームですか?」


「そんな感じ。少しだけパイロット気分になれるやつね」


 リョウさんは、オタクと言ってもゲーマーだったらしい。

 けど、こういうところで向こうの知識や技術が役に立つというのは、ちょっと面白い。

 ただ役職につく人は、足りてないところも多い。


「他の空白は、向こうで合流した仲間が担うんですか?」


「そうだな。シズ君やハルカ君ほどの魔法使いはいないから、魔力の補給担当はお願いしたいな。あと、レナ君」


「は、はい?」


「疾風の騎士で世界中を飛び回ったと聞くので、航法や水先案内をお願いしたい。非常に重要な役職だ」


「分かりました。それと、ヴァイスは載せられるんですよね」


「それは勿論。というか、向こうで悠里君と合流するまで、艦載魔獣はレナ君のヴァイスだけだ。万が一の場合は、頼りにさせてもらう事になるだろう」


 何だかレイ博士が少し偉そうに話を進めているが、自然な流れなので今までもこうして来たのだと分かる。

 けどハルカさんは眠り姫なので、その辺も踏まえると足りない人員は少なくない。


「それでも足りないですね」


「まあなぁ。取り敢えずショウ君は船長だから、操舵も交代の時に担当してくれ」


「えっ? オレ船の操作とか全然無理ですよ」


「大丈夫だよ。僕もまだ十分に動かした事はないし、操作自体は簡単だから」


 リョウさんがサムズアップまでしてくれる。

 けど、本当に大丈夫なんだろうか。


「そうですか?」


「まあ、何とかなるだろ。それに、このタイプの飛行船はこの世界にまだ殆ど無いから、壊さない限り誰も操作に文句など言わんよ。それよりも、治癒と医療担当と生活面だ問題だな」


「治癒薬で何とかなりませんか? あと生活面は、クロとスミレさんが居るじゃないですか。それにアイもウィンダムで完全覚醒させる予定だから、多分頭数に入りますよ」


「おおっ。そう言えばそんな伝言もあったな。出来るのか?」


「やり方自体はクロが完全にマスターしてますし、それぞれ対応した聖地でする必要があるだけで、やる事自体は簡単なんだそうです。シズさん曰く、ですけど」


「まあ、あの御仁からすれば、たいていの魔法や儀式は簡単だろう。それで、確かハルカ君のオレンジ色のやつが覚醒済みだったな」


「はい。ミカンって名付けました」


「相変わらず安直路線な命名だの。それにしても『帝国』の聖女が同じキューブの魔導器とか、この世界に案外転がってるもんなんだな」


「暇が出来たら、改めて探してみるのも良いかもしれませんね」


「そうだな。リョウ君にも、スミレのようなパートナーを見つけてやりたいしな」


「僕はいいですよ」


 そうしてそこからは徐々に雑談になったので、少ししてから切り上げて残りは準備を含めて明日という事になった。

 そしてその夜の就寝先だけど、オレには数日だけハルカさんと宿泊した領主の部屋が、玲奈には別室というか、同じく以前に宿泊した部屋が用意された。

 そしてそれに玲奈が少しばかり落胆してる。



「どうした?」


「う、うんん。そう言えば別室だったなあって……」


 そう言うように、行きは結局玲奈のおねだりで同室で宿泊してきたので、ここでもそうだろうと思っていたんだろう。


「オレとしても玲奈と一緒がいいけど、家臣やみんなの目があるからな」


「そうだね。二人きりもこれで終わりだしね」


「そうだな。復路というかこれからは少し賑やかになりそうだしな……やっぱり残念か?」


 そう言って彼女の顔を少し真剣に見つめる。

 彼女も見つめ返してくるが、少しして返ってきたのは苦笑だった。


「うん、ちょっと残念なだけ。それにね、リアルだと明後日モデル事務所の人と会うでしょ。だからもう一人の私とは、もう一日過ごしたら変わらないと。だからそういう意味でも、ちょっと残念かなって」


「じゃあ、もう少し一緒にいるか? どうせレイ博士とかからは、レナもオレのハーレム要員に見られてるわけだし」


「もー、茶化さないでよ。それにエロいの禁止って何度も言ってるでしょ。それにね、この数日は急ぎ足だけど平和で楽しい旅だったから、すごく面白かった。だからね、明日もう一日こっちで過ごしたら、また来るね」


「そっか。けど、明日も忙しそうだな」


「そうだね。だから、ちょっとだけじっとしてて」


 そう言って周囲をキョロキョロして誰もいないのを確認し、そしてオレに数秒間ぎゅーっと抱きついてきた。

 そしてすぐに離れると、「おやすみ!」と、どこかボクっ娘ぽく言って自分の部屋へと走って行った。


 取り残された格好のオレは、この世界だと誰でも少し大胆になれるのだろうかと、半ばどうでも良い事を思いつつ、今回は一人で眠る事になった領主の部屋へと引き上げた。

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