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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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426 「再び竜の里へ向けて(1)」

「じゃあ、行ってくる」


 そう言って、静かに眠り続ける彼女の頬に軽くキスをする。

 部屋にいるみんなに見られているが、自然とそうできた。

 こういう時、陽キャ隠キャは関係ない、と思う。


「なあ、せめて私ら部屋の外に出してからしろっての。流石に恥ずかしいんですけどー」


「あれくらい朝の挨拶にもならないって。今後のためにも、慣れろ慣れろ」


「うっさい。なんか上から目線なのがムカつく。けどまあ、きーつけてな」


「おう。そっちはハルカさん頼むな」


「あったりまえだろ。毎日、向こうで報告もしてやるっての」


「そっちも頼む。て言うか、報告はお互いしないとな」


「そうだよ。ボクには無理だからねー」


 オレ達兄妹のくだらないやり取りを、仲間達が恐らく生暖かく見守ってくれていたけど、ボクっ娘の一言でそれもおしまいで、ここからは行動開始だ。

 エルブルスまで飛行船のパーツを届けに行くのが、オレとボクっ娘。ハルカさんの側にいてくれるのが、シズさん、トモエさん、それと妹の悠里だ。

 

「連絡は基本、ショウとユーリちゃんに任せる。こっちは、邪神大陸に行くための『帝国』との調整と物資の調達。情報は……トモエが知ってるか?」


「現地行くまで話せないけどね」


「そこまで契約魔法で秘密にするという時点で、半ば話しているようなものだが、聞かぬが花だな」


「見ぬが仏だね。それで、何日で着くの?」


 そう言って、トモエさんがボクっ娘に後ろから覆いかぶさる。ほんと、こう言うスキンシップが好きな姉妹だ。


「浮遊大陸を抜けるのに1日。そっから魔力ブースト限界で飛ばして、大西洋を1日。地中海を速度増し増し、2日でノヴァ。さらに1日ぶっ飛ばしてエルブルスだね」


 全身で表現しながら、恐らく頭に思い浮かべた地図をイメージしつつ、そこを示していく。

 オレには今ひとつ分からないが、天然のナビが頭に入ってるみたいだ。


「5日! マジで!」


「ほんとに疾風だね。凄い。普通は最低でも一週間はかかるよね」


「魔石をあるだけ借りているし、ショウからも魔力もらうからねー」


 悠里のマジ驚きとトモエさんのいつもの言葉に、ボクっ娘が少し照れている。

 しかし運ぶ方が気になる強行軍だ。


「ヴァイスはそんな強行軍で大丈夫なのか?」


「鍛え方が違うよ、って言いたいところだけど、沢山魔力が使えるお陰だね。それに向こうに着いたら、出来れば1日は地面でお休みさせてあげたいかな」


「準備とか色々あるから、1日や2日は出発にかかるだろう」


「だといいけどね。帰りは飛行船で休めるって言っても、狭いし空中はかえって落ち着かないと思うから」


「なるほどなあ」


「感心してないで、準備はもう良いのかよ?」


「昨日から準備進めてたし、問題なし。確認もした。浮遊石の結晶、いつもの装備一式、魔石、龍石、念のための保存食と水とお酒、それに治癒薬」


「ヴァイスも、神殿の人が良くしてくれてたから、元気いっぱいだよ。美味しいお肉ももらったってさ。

 道中の心配があるとすれば、飛び込みの郵便依頼くらいかな」


「安全のため神殿で宿泊して回るなら、仕方ないところだな」


「それに、その辺も見越したスケジュールなんでしょ?」


「まあねー。じゃあ、そろそろ飛行場に行こうか!」


「おう!」


 そう言って、まだ朝も早いが飛行場へと向かう。

 シズさんが今日のハルカさんの付き人なので、トモエさんと悠里が飛行場まで見送ってくれる。

 そして、上空までライムで上がってきたので、空で別れの挨拶となった。


「じゃあ、行ってくるねー!」


「レナーっ、気つけてー!」


「こっちは任せてねー!」


「トモエさん、お願いしまーす!」


 そうして速度を増して向かうのは、最初のチェックポイント浮遊大陸の空皇の聖地リーンだ。

 ここがオクシデントからの浮遊大陸への実質的な玄関口でもあるし、その先は大西洋をかなりの距離飛ばないといけないので、どうしてもここで一旦停止となる。


 そして浮遊大陸の間は、マーレス殿下と聖女二グラス様が色々と手配りしてくれたので、快適かつ安全に旅をする事ができる。

 だから初日は順調に行程を消化する事ができた。

 ボクっ娘との二人旅は初めてだけど、オレとしては友達感覚が一番強いので気持ち的にも気楽で良い。


 そんな事を思っていた時が、オレにもありました。



「えっ? マジ?」


「マジだよ。エロい考えも、悪戯心もなし。ボクもちょっと前に気づいたんだけど、ここってまだ『帝国』だよ。

 しかも聖地の神殿の中って言っても、むしろ味方はゼロ。強い対魔物の防御陣の魔法があるから魔物は来ないだろうけど、急進派がいるでしょ」


 荷物と毛布を抱えたボクっ娘が、真面目な表情で理由を並べていく。確かにごもっともだ。


「そういえば、襲われたのもここの風呂だったもんな」


「でしょ。だから、一緒に寝る! いい?!」


 ビシッと指を指す。

 単に真面目モードと言うだけじゃなく、有無を言わせぬボクっ娘も珍しい。

 顔も少し赤らんでるから、少し恥ずかしいのかもしれない。


「り、了解。と言っても、ここ一人部屋だし、狭いから長いソファとかないし、それならせめて部屋変えてもらおう」


「あー、それなんだけど、ここ来る前に神殿の人に聞いたけど、巡礼者用の個室はほぼ満室。雑魚寝の大部屋しか空いてないって。最初に神殿の人に言ってれば、もう少し部屋があったかもだけど、もう巡礼者で一杯みたい」


「じゃあ、雑魚寝でいいんじゃないか?」


「それこそ襲われたら、周りが大迷惑でしょ。それにボクもショウも神殿の騎士階級だから、むしろ向こうが断ってくるよ」


「了解。じゃあ、毛布とかだけレナの部屋から持ってきてくれ。オレが床で寝るよ」


「いや、乗っているだけとはいえ、ずっと同じ姿勢は辛いでしょ。それに明日は特に海の上を横断するから、高い高度を一気に飛ぶから、飛行船と違って大変なんだよ」


「じゃあ、尚の事レナはベッドで寝ないとダメだろ。オレは、一晩くらい我慢できるよ」


「それはボクが気が引けちゃうよ。だから、ベッドの端と端で寝ようよ」


「このクソ狭いベッドでか?」


 オレが腰かけているいベッドは、せいぜいビジネスホテルのシングルルームのベッドくらいの大きさしかない。

 しかも『帝国』のお屋敷や宮殿と違って、あまり質も高くはない。


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