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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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407 「混戦」

「あー、なんか不味くないか?」


 低空を移動しながらだけど、見える景色は『帝国』軍が劣勢に見える。

 また一人やられた。


「あんな混戦じゃあ、ライムの雷撃も無理だよなー」


「光槍撃も危険ね。将軍の竜騎兵達も、迂闊に手が出せてないわね」


「なあ、真ん中辺りで派手に動いてるのって、お兄ちゃんより強いって言う騎士様だよなあ?」


「いや、オレより弱いぞ」


「えっ? じゃあ別人?」


「いいや、同じ人。前に戦った時はこっちの魔力が減りすぎててすげー強いって感じたけど、今日は全然だった。魔力の残量で、あんなにも感覚が変わるんだな。ちょっと、新鮮だった」


「もうショウの魔力総量はインフレ気味ね。人の事は言えなさそうだけど」


「じゃあ、そのイフンレに任せて飛び降りるか?」


「それはそれで味方を混乱させるわ。共同の集団戦が、こんなに面倒だとは思わなかった。『ダブル』の方が、対魔物戦で戦い慣れてる証拠ね」


 そんな会話をしつつ、戦場の周囲上空をゆっくりと旋回する。

 ヴァイスも同じだ。

 乱戦なので、ボクっ娘の弓のピンポイント攻撃以外だと、魔法の矢の攻撃くらいしか援護が出来ない。


「なあ、悠里。ちょっと離れた場所に行ってくれ。そこで飛び降りて、陸から接近するよ」


「それがいいわね。お願いできる?」


「勿論ですハルカさん」


 オレにではなくハルカさんににこりと返事をすると、少し離れたヴァイスにも手信号を送り、戦場から2、300メートルほど離れた場所へと飛ぶ。

 森が多少開けた場所を低空で通過時に、そこで取り敢えずオレとハルカさんが飛び降りると、続いて同じ場所に空から入ってきたヴァイスからは、今度はトモエさんが飛び降りてきた。

 そして「スタッ」と片膝をつく形で綺麗に飛び降りる。

 本当に何でも出来てしまう人だ。

 そしてすぐに立ち上がると、ニカッと歯を見せて笑う。


「ホラ、出来るって言ったでしょ」



 そして10数秒全力疾走して戦場へと到着するが、森の中の戦場は大混乱だ。

 相手は魔物の群れ。

 数は50体ほどなので、ノヴァでの戦いを思うと数は断然少ない。

 けれど矮鬼などの雑魚はおらず、最低でも第一列の魔法が使える上級矮鬼だ。

 数の主力は、Cランクの強矮鬼や食人鬼。

 並みの兵士では太刀打ち出来ない。50名以上の騎士団と同等かそれ以上と考えないといけない。


 そして何より、思ったよりも悪魔、いや悪鬼の数が多かった。

 上空からでも上級悪魔2体、下級悪魔4、5体の気配を感じ取っていたけど、下級悪魔はもっと多いらしかった。

 しかも揃って装備が良いので、普通の魔物よりも1体1体の脅威度が高まっている。

 鉄骨のような大きな鎚矛メイスを持って頑丈な甲冑を纏った食人鬼とか、どう見てもBランクだろう。


 対する『帝国』軍は、ゴード将軍の隊を加えると300名程いるけど、強い魔物と戦える騎士や魔法使いは100名いなさそうだ。

 そして戦力的には、見た感じ五分五分だ。


 普通の兵士は弓で援護したり、包囲網を崩さないように外を囲む動きを心がけているけど、魔物1体1体が強いので包囲網にも騎士が入らないといけない。

 だから戦場としている場所で戦っている『帝国』騎士の数は魔物より少なく、しかも魔物側の統制がかなり取れている。その為、上空から竜騎兵やその他飛行生物の騎乗者の攻撃を簡単には許していない。



「あー、下から見てもダメダメだな」


「だよね。でもこの指揮って、本当にゴード将軍なのかな?」


「ゴード将軍は熟練の用兵家と聞いたけど、手際がいいとは言えないわね」


「まあ、聞いてみれば良いじゃね? 騎士さんちょっと良いかな?」


「何だ貴様は……これは失礼を。何用ですかな?」


 オレが声をかけた騎士様の態度がすぐに改まった。

 マントなどの紋章はさっきは見なかったので、ゴード将軍が連れてきた人達だ。


「指揮をとっているゴード将軍はどこでしょうか。強い悪鬼に対処するよう、将軍から事前に要請を受けていたんですが、未だ連絡がないんですが」


「左様でしたか。現在、前線指揮は三剣士のカーン準男爵の隊が行なっており、我らゴード隊は包囲網の維持を担当しております。

 ゴード将軍は、この反対側で指揮されております。手筈などが気になるのでしたら、お手数ですがそちらに向かっていただきたい」

 

「ありがとう。だってさ」


 そのまま二人に振り向く。


「てことは、将軍の側に行っても無駄っぽいわね」


「セクショナリズムってやつか。強引に割り込む?」


「そう言うわけにはいかないでしょうね。余計混乱させて被害が広がったら事だわ」


 3人して困り顔で、仕方なく回り込んでゴード将軍のところまで向かう。

 その間も包囲網の中での戦いは進むが、状況は芳しくない。


「あ、またやられた。『帝国』軍って魔物と戦い慣れたんじゃないのか?」


「まあ、こんなもんだね。むしろ頑張ってるくらい?」


「そうね。『ダブル』が異常なだけだものね」


「神殿騎士団は? 一緒に来てるんじゃあ?」


「『帝都』近辺には殆どいないから、今回は形だけよ。治癒のための神官も何人か来てるけど、後ろの筈だし」


「オレ達だけで戦って、『帝国』兵を全員包囲に回した方が効率良さそうなくらいだな」


「それを言ってあげないで。あ、あそこね」


 そう言った視線の先に、指示を飛ばしているゴード将軍がいた。




「将軍! 無礼を承知で、直接ご指示を伺いに参りました」


「これはルカ殿、お見苦しいところをお見せして面目の次第もない。ルカ殿への待機継続をお伝えする使いも、今出そうとしていたところでした」


「混戦状態なのは分かりますが、なぜ?」


「お恥ずかしい限りですが、我が手勢とカーン殿の手勢の所属違いが原因です。しかもカーン殿が兵達の前で魔物を倒すと断言したため、我々は溢れてきた魔物を倒す以外は今のところ出来ないのです」


「無理やりすれば?」


「後で問題になるでしょう」


「今問題が起きても?」


「左様。私が陛下から与えられた権は、追跡隊への説明と万が一の場合の仲裁。そして包囲を主とした追跡隊の支援。魔物相手だから共に戦えると、少し甘く考えておりました。面目次第もない」


「ゴード将軍、頭をお上げください。では私どもは、あくまで神殿の者として動く事は構いませんか?」


(まあ、それしかないだろうな)


 そう思ったが、ゴード将軍の表情は苦々しいままだ。

 まだ何かゴード将軍もしくは『帝国』には、オレ達に話さない、もしくは話せない事があるのだ。

 そしてその答えを告げるように、白と蒼の二つの影が上空へと飛来した。


「竜騎兵だよーっ!」


「あれって味方? 聞いてないけどーっ!?」


 どうやら今日は、呼んでもいないのに千客万来の日らしい。


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