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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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392 「陰謀の露見(1)」

 空皇の聖地の奥から出てくると、『帝国』の人達が来ていた。

 しかし彼らは、無許可で神殿の中に入るわけにもいかないので、外で待っていると従官に教えられ、案内のまま神殿脇の『帝国』用の施設へと移動する。

 聖女二グラス様ことヴィリディさんとゼノビアさんも一緒だ。

 特に呼ばれた理由を聞かされなかったので、襲撃された件の話だと考えたからだ。


 そして待たせてる場所に行くと、マーレス殿下がいた。


(この人、超大国の皇子なのにどんだけフットワーク軽いんだ?)


「誠に申し訳ない。『帝国』を代表して深く謝罪申し上げる!」


 しかもオレ達を目にした途端、土下座せんばかりな勢いの謝り具合だ。


「お顔をお上げください殿下」


 と、ヴィリディさんとハルカさんがハモったけど、何に謝ったのかだけは明白だ。

 けどこっちとしては、いい加減多少の話は聞きたいところだ。

 だから謝罪と頭を上げろと言うやり取りが何とかひと段落してから、ようやくまともな会話となった。



「今回の襲撃は、誰もしくは何を目的としてたのでしょうか。それと、あの襲ってきた者は?」


「聖女二グラス様に隠し立ては出来んし、ここまで事態が悪化した以上、ルカ殿達にもお話ししよう。だが、他言無用を強くお願いしたい」


 その真摯な言葉に全員が深く頷く。

 そしてそれを受けて、マーレス殿下も一度小さく頷く。


「うむ。あの貴族は、バッコス第三皇子の派閥に属している。ミスが重なって派閥内で追い詰められ、手駒も失ったので今回直接出てきたのだろう」


「バッコス第三皇子?」


 ハルカさんが口を開いたが、これでどうやら聖女様ではなくハルカさんが聞き手になるようだ。


「うむ。急進派の首魁と言ってよい奴だ。兄上を貶め、自らは功績を挙げる事で、皇太子の地位を狙っておる三流の野心家だ。それにクズだ!」


 言葉の最後が、どう見ても本音だ。


「第三皇子でしたら、皇帝陛下への謁見の後の皇室の方々との歓談の時、有り体に申し上げると露骨に言い寄られたのですが」


 ハルカさんの嫌悪感込めた表情に、マーレス殿下も少し苦笑いしてる。また豪快に笑い飛ばすのかと思ったけど、ちゃんと繊細なところもあるらしい。

 そして口を開く前に、頭を下げられた。


「弟して深く謝罪を。大方、取り込もうとしたんだろう。もちろん強い子も欲しかったんだとは思う。あの愚兄は魔力がない上に、子供の魔力持ちにも恵まれておらんからな」


「それで、あの貴族の失態とは何でしょうか?」


 ハルカさんの言葉に、マーレス殿下がニヤリと笑みを浮かべる。


「あ奴が、ワシが奴の一族の助命嘆願を受け入れるのと引き換えに、全部ぶちまけよった」


「聖女二グラス様を襲ったのではないのですね?」


「それはない。むしろ、聖女様が一緒だったとは思ってなかった

。襲撃相手をロクに調べもせんとは、余程追い詰められていたんだろう。もしかしたら、承知で目的を達しようとしたのやもしれんがな」


「では、私達の殺害が目的ですか?」


「いや、殺害ではない。貴殿らがお持ちの何かの魔導器が目的だ。だが、正確な事は知らぬの一点張りでな。多分、知らされておらんのだろう。当人は、古代の浮遊石の結晶じゃないかと考えていた」


「で、彼らは、それを求めて私達を何度か襲って失敗したのが失態、という事でよろしいのでしょうか?」


「ウムっ、間違いなかろう。手柄を立てて派閥内での序列を上げようと、貴殿らを二度襲撃したのは間違いない。

 まあ、バッコスは直接関与はしてないが、それとなく誘導した者が、先走って暴走したと言ったところだろう。でなければ、二度の襲撃で精鋭を使える筈もない。それにしても派閥の統制も出来んとは、愚かな奴よ」


「事情は分かりました。それでマーレス殿下は、私達が何を持ってるのかご存知なのでしょうか?」


 ハルカさんの少し挑戦的というか探るような視線を、マーレス殿下は正面から受け止める。

 そして数瞬後、豪快に笑う。


「いやいや、大した女傑だ。少数の共だけで大巡礼するだけの事はある。これは言わずばなるまいな。ワシだけではなく『帝国』の上層部は知っておるよ。

 それは、神々の塔の扉を開く事ができる魔導器。恐らく、未知の金属で出来た小さな直方体。しかも、そこな聖女二グラス様のように、人の形にもなれる能力を持つ、深い知性と高い能力を持った存在だ。そうであろう? そして最低でも2つ有しておる。違うか?」


 マーレス殿下の言葉を受けて、ハルカさんが仲間に視線を向ける。それにシズさんが強く頷く。

 話すべきだというのなら、オレも賛成だ。


「マーレス殿下は信頼できる人だと思う」


「ウム、友であるからな。で、そこな甲冑の女がそうであろう。あと、聞いているところではショウ殿が主人だそうだな」


「その通りです。そしてもう一つ、ここに御座います。ミカン、人の姿に」


「分かった」


 ハルカさんが腰の袋の口を緩めると橙色、いや蜜柑色のキューブが浮き出して、そしてハルカさんの半歩後ろで、さっき見たばかりの一見クールビューティーな長身のスレンダー美女の姿になる。

 けれど、意外にマーレス殿下は驚いてない。


「なるほど、なるほど。だからこの聖地を訪れておったのか?」


「左様です。二グラス様に、沈黙状態だったキューブを覚醒して頂きました。ですが、このミカンを含めてどのキューブも、神々の塔の中の事は存じませんでした。我が名と神々にかけて、この言葉をお伝え申し上げます」


「お言葉しかと承った。だが、聖女二グラス様と合わせて3つあれば中に入れるのではと、連中は考えたのだろうな」


「マーレス殿下は、そう考えないんですか?」


 聞くまでもないと思いつつも、オレは何となく聞いてみた。

 するとマーレス殿下がニコリと綺麗な笑みを浮かべる。


「ワシは、この空に浮かんだ国土を好いておる。移民するより、この大地を救いたい。まあ、神々が大陸を救うご助力をして下さるというのなら、是が非でも貴殿らの「きゅーぶ」を手に入れ、神々の塔へと向かうだろうな」


「つまり、神々の力では、浮遊大陸の崩壊は防げないんですか?!」


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