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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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391 「魔導器の覚醒(2)」

「だろうな。ミカンが送る側で、任意の対象に受け取らせることが出来るんだろう。で? ミカンの側から言葉なりを送るだけか? 受け取る側は情報なり言葉を発信できるのか?」


「無理。出来るの、私と同じ、存在だけ」


「クロやアイは?」


「近距離なら、相互に可能。遠距離は、無理」


「人に対しては?」


「私から、だけ」


「便利なんだか不便なんだか、よく分からない機能だな」


「本来なら、ミカンの言う通り同じ存在同士で遠距離連絡に使うんでしょうね。ミカン、次だけど、何を知ってるの? 『世界』に関わる事で、何か情報を持ってない?」


「私が、連絡を送るべき場所の位置情報」


「なるほど、道理だな。神々の塔や聖地の事か?」


「そう。ただし、神々の塔、1つとは連絡無理。昔に、崩壊している」


「それは、レムリアの沖にあるやつ?」


「そう」


 ボクっ娘の言葉にみかんが答えるが、ゼノビアさんがかなり驚いてる。『帝国』からだと遠いから、色々知らない事もあるんだろう。


「聖地は9つで合ってる? それと、地皇の聖地の正確な位置は分かる?」


「地皇の聖地の位置、完璧。後、聖地は、全部で9つ、違う。閉ざされた場所、崩壊した場所、全部含めて、過去には三倍、27箇所あった」


「す、凄い!」


 ゼノビアさんが絶句している。

 すごい情報らしい。

 こっちとしては、大巡礼の回るところが増えたんじゃないかと言う感想しかない。もしそうなら少し凹みそうだ。

 けど、質問役を買って出ているシズさんは、特に気にした感じがない。興味がないんだろうか。


「それで、この場所から、お前が把握している場所へ今から連絡を送る事は可能か?」


 なるほど、聞くべき事がまだまだあるから冷静なんだ。

 その辺はシズさんらしい。


「不可能。受け取る存在を、私が認識する、必要ある。現在、私が認識出来る相手、いない。でも、神々の塔、行けば連絡可能になる」


「神々の塔の中には何がいるの?!」


 ゼノビアさんは少し興奮気味のままだ。

 しかしキューブは淡々としたままだ。


「『世界』。地上では、あそこだけ、『世界』と話せる」


「と言う事は、地上じゃない場所に他の『世界』があったり、居たりするの?」


「昔居た。使えない、位置情報だけ、ある。300年前は既に連絡不可能、だった」


「そっか、ちょっと残念」


「『世界』には、どんな力があるのー?」


 ボクっ娘はのんびりしたものだが、ゼノビアさんはそれどころじゃないらしい。

 穏やかで冷静な印象だったが、今かなり興奮している。


「知らない。私、「客人」の言葉、伝えるのが役目」


「肝心な情報なしは、クロと一緒か。まあ、そうだよな」


 ゼノビアさんが、ミカンの言葉に少しがっくりきている。

 やはりこの大陸の崩壊の事とかで、神々の情報にかなり期待してたんだろう。

 こっちは神々には大して期待してなかったので、オレの心は案外平静だった。


 本当ならハルカさん復活の手掛かりとか、神々の塔なら復活方法があるのかとか聞きたいところだけど、お話のような楽観的な期待をしてはいけない世界だと言う事くらいは、今まで十分に理解できていたからだ。

 ヌカ喜びは、するだけ損だ。

 そしてゼノビアさん以外、オレの仲間は同じ考えのようだった。

 ハルカさんも例外じゃない。


「だいたい分かったわ。あ、そうだ、取り敢えず人の姿を見せてくれる?」


「……分かった? 好みの姿ある? その服纏う」


「あっ、オーダー聞いてくれるんだ。ハルカさんどうするの?」


「みんなは何がいい?」


 そう問われると、取り敢えず考える。

 しかしクロやスミレさんを見ているので、オレの中では答えは一つと言える。

 ふと向けたボクっ娘の目が笑っているが、それをオレに言わせたいらしい。

 しかし口にしたのは悠里だった。


「ハルカさんの護衛目的なんでしょ? じゃあ、アイみたいな甲冑でいいんじゃね?」


「えーっ! ここはクロに合わせてクラシックメイドでしょ」


 オレが言う前にボクっ娘が抗議の声をあげた。

 しかし、ミカンの関心はハルカさんにだけあるらしい。当然だろう。

 そして全員の視線も、再びハルカさんに集中する。


「私のお付きなんだから、神官服がいいわ。あ、そうだ、その前に、戦闘や魔法の力はどれくらいあるの?」


「魔法は、第一列。空皇の魔法だけ、第二列。格闘戦は、護衛を目的とした必要十分。他、主の衣食住の世話、全部可能」


「その辺はクロと似たようなものね。じゃあ、治癒魔法も?」


「第一列なら全て」


「了解。じゃあ白い神官の法衣でいいわ」


「分かった」


 そう言うとミカンから、クロのように活性化した魔力が吹き出して、すぐにも人の姿へと変化する。

 その姿は、180センチくらいのスレンダー美人。

 髪の色は、キューブの色に合わせてか鮮やかなオレンジ色で、ベリーショート。小顔なのが一層際立っている。

 そして予想通り、顔立ちが魔将ゼノに少し似ていた。

 けど神官の法衣と相まって、外見と雰囲気がゼノの正反対だ。とはいえ、神官らしい慈愛に満ちているという様な印象からも程遠い。

 無口キャラに相応しく無表情。

 一見すれば、クールビューティーってやつだ。


「なんだか、ゼノと色々正反対だな。あいつお喋りで感情的だったし」


「そうだよなー。けど私、こっちの方が断然いい。てか、スッゲー格好いい!」


 妹様は、ミカンの姿がお気に入りのようだ。

 しかもさらに言葉が続く。


「それにこれで、ハルカさんの側におにーちゃんがつきまとわなくてもよくなったしな」


 そうだ、こいつはハルカさんの護衛役にもなるのだ。


「うわっ、それ全然良くない。オレがハルカさんの一番の従者だぞ!」


「いやいや、そこ力説するところでも張り合うところでもないでしょ。だいいち、ショウだって四六時中クロと一緒じゃない」


「いや、ここは譲れないところなんだ!」


「ボクに力説されても困るんだけど。あと、気付いてると思うけど、今はもう一人の天沢さんも見ていると思うから、そのつもりで発言してね」


 そうだった。ハルカさんの事とかですっかり忘れてた。


「き、気をつける。レナも、また、向こうが見られるようになってたんだったな」


「そうだよ。まあ、ボクとしてはチョット懐かしいってくらいだけどね」


「何の話?」


「あ、ああ。あとで話すよー。それより、ミカンちゃんはそのまま連れてく?」


「入る時よりも一人増えてたら怪しいでしょう。ミカン、キューブに戻って」


「分かった」


 クールビューティーなのに無口キャラって、やっぱり損してる気がする。

 そしてこれでひと段落ついたので、この時の情報の重要性も分からなかったし、神々の塔とか流石に関係ないだろうとしか思ってなかった。


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