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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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387 「予期せぬ援護」

「おはよう。ツッキーと天沢さん、大変みたいだな」


 連休明けの学校、玲奈と一緒に登校した下駄箱でそう声をかけてきたのは、クラス内の陽キャグループのリーダーの近藤だ。

 体育会系のイケメンで、カリスマ性も感じるナイスガイってやつだ。こいつが『ダブル』だったら、騎士様がお似合いだろう。


「うん。いい迷惑。けど、友達に助けてもらったから、良い方向には向いてると思う」


「みたいだな。オレ達もクラスメートとして、多少は加勢させてもらってる」


「あ、ありがとう」


「いいって。うちのクラスの数少ない公認カップルだからな。まあ、機会があれば、今度ジュースでも奢ってくれ」


 そう言って軽くオレの肩を叩くと、イケメンらしく爽やかに去っていった。

 そして教室に入ると、今度は姉御肌な伊藤にチョイチョイと指で呼ばれる。


「何?」


「何? はないでしょ。それより、あの反撃ってツッキー?」


 伊藤も近藤同様に、SNSでのオレ達の騒動が気になるらしい。


「いいや、オレの友達。クラスは違うけど」


「へーっ、中学のダチとか? いや、同じ部活ってとこか」


「ご明察。で、何?」


「面白い展開になってきたなーって。酷くなってたら助けようかと思ってたけど、野次馬で炎上広げるくらいしかする事なくて、むしろひょーし抜け。あ、玲奈おはよー」


「お、おはよう、紫織」


 そういえば伊藤紫織さんだった。

 なお、玲奈が後から教室に入ってきたからと言って、オレがエスコートを途中放棄した訳ではない。

 同じタイミングで教室入るのが恥ずかしいというので、玲奈はお手洗いで身だしなみを少し直して時間差にしただけだ。


「で、お二人揃ったところで一応聞くけど、うちらが手伝える事ある?」


「オレが玲奈の側に居られない時のガードは頼みたいかな」


「それくらい言われなくてもするっての。他には? もうSNS上は心配なさそうだけど」


「あの先輩、根に持つタイプらしいから、反撃とか報復があったら何か頼むかも」


「根に持つ? 誰情報? ネットやSNSだったら、信頼ならないんだけど」


「近藤と部活の先輩」


「別方向の二人からか。分かった、玲奈のガードは強めるよ」


「頼む」


「あ、ありがとう。でも、私もなるべく気をつける」


「いいのよ玲奈は。まあ、登下校はそこのへっぽこナイトに任せるけどねっ!」


 そう言いながら玲奈をグッと引き寄せて、そのまま抱きかかえてしまう。

 どうにも玲奈は、シズさんといい抱きかかえたがる女子が多いらしい。

 そういう属性でもあるんだろうか。

 玲奈も、積極的ではないがされるがままになっている。


 その日、放課後までは特に何事もなく、ただただ大沢先輩がSNS上で叩かれる度合いがヒートアップするのを眺めていた程度だ。

 流れを見て見ると、連休中に浸透した後に登校時点で一気に燃え広がり、昼休みが終わる時点で大沢先輩が可哀想になるレベルになってた。


 特に一年からはフルボッコにされてる。

 画像も何枚かアップされていたりした。

 このまま放課後でさらに状況が加速したら、オレだったら数日は登校拒否に陥りそうなほどだ。




「よっ。大沢は部活仮病でサボって逃げ帰ったらしい。いい気味だ」


 とは、放課後に文芸部室での鈴木副部長のオレへの第一声。

 けど鈴木副部長の表情は、完全には晴れていない。

 そこでオレと同じ事を思っているのだろうと感じ取ったので、オレから先に言葉を選びつつ活動の部活からの切り離しを切り出してみた。


「月待もそう考えてたのか。俺も条件付きで賛成だ。問題は」


「集まる場所なら、もう目星付けてますよ」


「元宮、仕事早すぎだろ。で、どこだ?」


「公民会館の一室です。ここら辺の学生のサークル活動にも使われてますし、ホームページ見たら曜日によっては空きも結構ありました。オーケー出れば、今からでも申し込みますよ」


「まあ待て。とは言え、場所は学校からも駅からも近いし、外のメンバーも来やすいし、と良い事づくめか?」


「問題は、現状のスケジュールだと部の活動日が名目上とは言え半減する事ですね」


 なんだか、話がタクミと副部長の間でポンポンと進んでいく。オレだけでなく、玲奈や他の部員も置いてけぼりだ。


「あ、あの、もともと月曜以外は自由参加が基本ですし、年二回の冊子の制作、ホームページの運営、文化祭の活動を疎かにしなければ問題ないんじゃないですか?」


「そういやそうだな。月待の『アナザー』講演会で、すっかり忘れてたな」


 玲奈のナイスアシストな発言に、副部長殿はのんびりとしたお答えだ。

 しかしそれで答えは出たようだ。

 少し離れた場所からも、『アナザー』にあまり興味のない部長氏が「部活は月曜集まって、今の天沢さんの言う通りの事だけしてくれたら何でもいいよ。てか、その方が助かる」とのゴーサインだ。


「なら決まりだな。サイトの学外プロバイダへの移設、活動を外への移行をしよう。とは言え今日は流石に無理だから、来週からでいいか?」


 鈴木副部長は動くと早い。それに自分の好きな事に対しては働き者だし、信頼も置ける。任せて問題ないだろう。

 周りからも「意義なーし」など賛成の声しかない。

 けどオレとしては、問題はゼロじゃなかった。


「学外活動かー。となると、文化祭の出し物考え直さないとなー」


「それはボクも同じだよ」


「まっ、文芸部らしい作品を待ってるぞ。それと前々から言ってるが、文化祭用の冊子は装丁をよくする為に本に印刷するから、10月半ばくらいには提出してくれよ」


「り、了解です。うわっ、あと一月しかないのか」


 創作か書評かから練り直しとか、先が思いやられそうだ。

 そしてそんな深刻そうなオレを、タクミが掴まえて部室の人のいないエリアに引き摺り込む。


「何だ? 今日の講演会の事か?」


「違うよ。ちょっと気になって、シズさんと巴さんのSNSチェックしたけど、バズってるんだ。ショウは見てないだろ」


「うん。まだ一回も覗きに行ってない。せっかくだ、今ブックマークしとくよ」


「そうしとけ。で、もともと巴さんは、最近SNS上で人気急上昇って感じなんだけど、これでさらに加速が付きそうな気配だ」


「へーっ。シズさんも仕事再開したばかりだし、良い事じゃないか」


「何を呑気に」


 タクミが心底呆れてる。

 毎度の事とは言え、オレは何を見落としてるんだろう。

 そんな首を傾げるオレに、かなり深刻そうな表情な上に指を胸に刺してくる。


「いいか? 誰と行って、誰と写真や動画撮った? まあ悠里ちゃんは、上手くやれるだろうけど」


「そうか、玲奈も一緒だったな」


「そうだよ。この学校にもシズトモ知ってる女子はそれなりに居るだろうから、今回の騒動に影響するかもしれないぞ」


 タクミが少し深刻そうに言う。

 けど、そうだろうか? 写真や動画はスタッフさんか近くの人に撮ってもらった設定だ。

 シズさんも巴さんも、誰かに見られたり気づかれた感じはないとも言っていた。その為に、サングラスをかけたり帽子なども被ったりしてたほどだ。

 少なくとも男と一緒という点で、シズトモのイメージは落ちない筈だ。


 玲奈と悠里は、二人の近所の一般の友達設定なので、せいぜい羨ましいと思われる程度じゃないんだろうか。

 まあ玲奈は、二人に抱きつかれた写真や動画が多かったとは思うが、せいぜいダメな点はそれくらいだろう。

 という事をタクミに伝えると、処置無し的なゼスチャーをされてしまった。


「まあ、何事もない事を祈ってるよ。それより、今日の講演会そろそろだぞ、よろしく!」


「あ、ああ」


 タクミの忠告は有難いが、隠キャオレに出来る事と言えば、直に玲奈をガードするくらいだ。

 どうしろと言うんだ。


この作品の年代は、2010年代の前半か半ばくらいです。

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