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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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386 「アミューズメントパークへ」

 『夢』の向こうでハルカさんはまだ眠り続けている間、現実はちょうど祝日を加えた連休中だった。

 しかしバイトは、シフトの取り合いになって埋められなかったので、ちょうどオレとタクミは1日完全オフの日があった。

 そしてオフの事を引越しの時に話したら、シズさんがタクミへのお礼の話をしてきた。


 そしてその結果、悠里とは家族として来た事はあったが、オレは同年代の人達と初めて日本一のアミューズメントパークに来ている。



「なんか、白い灰色姫のお城って、逆に違和感感じるな」


「あ、なんか、それ分かる」


 オレの感想は妹様に共感されてしまったけど、タクミと巴さんは首を傾げる。


「ボクはこっちしか知らないよ」


「私もー」


「私は記憶には両方あるけど、向こうの方が違和感あるかな」


「私は一時期、あっちの城のすぐ側に勤めていたから、黒の方が馴染み深いな」


 玲奈は少し複雑げな表情で、シズさんは感慨深げだ。

 尖った尖塔が沢山生えた綺麗なお城を前に、それぞれ感想を口にしている。

 今日のメンバーは、シズさんの引越しを手伝ったメンツ。オレ、玲奈、シズさん、巴さん、悠里、そして主賓のタクミだ。


 しかも女子4人は、かなり気合の入った格好だ。獣人のように耳もバッチリセットしている。

 何でも、妹様曰く昨日から服選びとか美容院とか準備に時間をかけたのだそうだ。

 だから、それに報いるべく、オレはみんなに食事を奢るべきだとまで付け加えられた。


 勿論だけど、玲奈以外はオレの為じゃない。

 一応タクミへの感謝の接待のためだけど、この場所に来て気合を入れた格好をするのが当然と言う感覚からだそうだ。

 だからオレも、妹様に言われるように出来る限り隠キャに見えない格好な上に、夏休み中に初めて買った整髪剤で髪も整えたりしている。


 空気を読む男タクミには、勿論手抜かりはない。

 だから一見、この場に相応しい陽キャグループに見える筈だ。

 しかしオレの予測は一部間違っていた。

 勿論だけど、オレだけが隠キャに見えると言う事ではない。


「あ、そうそう、時々女子だけで写真と動画撮るからねー」


「了解です。その間はボクらは他人になってます。それとも撮影役の方が良いですか?」


「流石タクミ君、よく気がきくねー。凄い」


 そう言って楽しいそうにカラカラと笑うのは、シズさんの妹の常磐巴さんだ。

 ロングスカートの落ち着いた姿のシズさんと違い、やっぱりアクティブな姿だ。

 また、トレードマークの頭の高い位置からのポニーテールが動くたびに元気に揺れるので、活発な印象が強まってる。服装もスキニーなパンツルックで、長い脚がなお長く見える。


「当然オレらはフレーム入っちゃダメですよね」


「ウンウン。色々とSNSにアップするからね。男が映ってたら、弟ですって書き込まないと」


 そう言って、また笑う。

 悪戯っぽい仕草も似合ってるけど、歯を見せてカラカラと笑うのでどこか少年っぽくもある。


「まあ、事前チェックしてからアップするから、そんなに気にしなくていいよ。それと私とタクミ君は、別に撮るから」


「あの、姉妹二人だけで撮らなくていいんですか?」


「ん? 家族にでも送るんですか?」


「オフィシャルに載せるに決まってるだろ。バッカじゃねえの? てか、隠キャなお前が、シズトモのSNS見るわけないかー」


 玲奈の質問へのオレの疑問に、様々な仕草と表情を交えたフルボッコだ。

 妹様は、テンションが上がってるんだろう。こっちも、罵声は気にもならない。


「そうだよショウ君。特に巴さんは人気者で、もう告知もしてるんだよ」


「そう言うこと。今日は営業も兼ねてるんだ。ゴメンねタクミ君」


 そう言って巴さんが、オレ達を片手で拝む。

 片手なのは、既にもう片方の腕にポップコーンの大きく派手なケースを抱えてるからだ。

 もう、初っ端からエンジョイする気満々だ。


「いえ、ボクもお二人のSNSはチェックしてるから、了解してます。知らないのはショウだけですよ」


(アレ? オレだけ仲間外れ? いや、言葉通りなんだろう。シズさんや巴さんが何してるのかなんて、殆ど知らないし、大して気にもしてなかったからなあ)


「何遠い目になってんだよ。さ、行くぞ。まあ、この混雑だと、並ぶことに時間費やす事になりそうだけどな」



 そう、連休中のここは人でごった返してる。

 やっと残暑も衰えてきたところなので、連休との相乗効果もあって一気に人が押しかけた印象だ。

 もっともオレとしては、みんなと一緒にワイワイ出来ればそれで十分だ。タクミもみんなもそう思っていると思う。

 それにみんなで並ぶのも、ここの醍醐味だそうだ。

 それにオレは、並ぶ間の買い出しなどで忙しかったので、退屈という事は一切なかった。


 そしてその日は、ゲートオープンから夜のパレードまで満喫し、夕食はシズさんと巴さんの住むマンションで、事前にかなり準備してあった手料理ご馳走になって終了だ。

 常磐姉妹は忙しい身の筈なのに、この手際の良さは感心するより他ない。



「今日は本当に有難うございました」


 深夜になる前に帰るべく、4人して常磐姉妹宅を後にしようとしていた。


「本当に送らなくていいのか?」


「明日は二人共お忙しいんでしょ」


「うん、私は明日朝早いんだよね。でも、今日はすっごく楽しかった! また行こうね!」


 シズさんの気遣い顔の向こうで、既にパジャマ姿な巴さんが、手をヒラヒラと振っている。


「ハイ!」


 そう元気に応えるのはもちろん悠里だ。

 もう今日一日テンション上がりまくりだったけど、これからの受験勉強を思えば良い気分転換になっただろう。


「今日は本当に有難うございました。それとご馳走様でした」


「ちょっとは満足してもらえたかな?」


「ちょっとどころか、一生の記念ものですよ。命張った甲斐もあったってもんです」


「フフフっ。そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃあ、また今度」


「はい、じゃあ失礼します」



 タクミとシズさんが話を締めて、ようやくおいとまだ。

 流石に丸一日遊んだので疲れたけど、こんなに遊んだのは本当に久しぶりだった。

 そして翌日はタクミとは時間違いで半日バイトに入り、連休は暮れていった。


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