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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第五部 『帝国』編

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368 「夜襲(1)」

「……ください。我が主人あるじ、起きてください」


 何度目かの同じ言葉で、ようやく意識が覚醒してくる。

 現実世界で平穏&平凡な一日を過ごして眠りについて、次に目覚めると『夢』の向こうの世界。『アナザー・スカイ』での目覚めだ。

 

 ゆっくり目を開けると、暗がりの中にオレを起こす猫耳イケメンな執事がいた。

 しかしこいつは、人でもなければ獣人でもない。

 オレ達が苦労の末倒した『魔女の亡霊「フレイア」』の中核となっていた魔導器の、ある意味本来の姿だ。


 本体の中核部は、手に乗るサイズのキューブ状の金属質の物体で、表面には細かい魔法の文字や魔法陣、それにたくさんのスリットが複雑な模様を描いている。

 けど保有する魔力を用いて、こうして擬似的な肉体を形成し、この世界で言えば魔導で動く人型、オレ達がゴーレムと通称する存在に変化できる。


 そしてオレがクロと名付けたように、今はオレに対して忠誠を誓っていて、こうして忠実に働いてくれている。

 頼りになる反面、放っておくと何でもしてしまうので、こっちがダメ人間になれそうな超便利アイテムだ。


 しかも本来の機能は、人に尽くす事ではなく、クロ達が「客人」と呼ぶ異世界から召喚された、オレ達自身が『ダブル』と呼ぶ存在に、この世界での依り代、つまり肉体を用意する役割を担っている。

 とは言えクロは何百年も前に活躍して本来の役割を終えているので、『魔女の亡霊』による不当な呪縛から解放した後は、こうしてオレに仕えてくれている。


「予想通りか?」


「はい。大きさから推測して、中型の飛行船が急速に接近中です」


 オレの言葉に、明確な言葉が帰ってくる。

 そしてオレが予想通りと聞いたように、ボクっ娘が昼間見たという飛行船が何らかのアプローチをかけて来るかもと予想していたのだけど、それがどうやら当たりだったようだ。

 しかも悪い方で。


 なお、オレは1人で寝ていて、クロの事も帝国には伏せているので、この部屋の中でだけクロは人型を取っている。

 他の4人と甲冑状態のもう一つのキューブゴーレムのアイは、シズさんと同じ部屋で置物状態で警護に当たっている筈だ。

 そして2人ずつ分かれて眠っているので、まずは起こして時間の許す限り不測の事態に備える事にする。

 クロは着替える間だけ護衛として人型を維持したが、『帝国』の人に見られては面倒なので、扉を開ける前にキューブに戻して袋へとしまい込む。


 なお、不測の事態を予想していたので、寝間着や軽装ではなく、野営の時の様に装備の多くを付けて眠っていた。

 寝心地は悪いけど、もう慣れたものなので気にもならない。

 だからブーツなど残りの装備を手早く身につけると、部屋を出て隣とその隣の扉を順番に叩く。


 するとアイの居る部屋、つまりシズさんとボクっ娘の部屋からは「もう起きてるよー」と、ハルカさんとユーリの部屋からも「もうちょっと待って」と「何か分かった?」と、二人の声があった。

 (朝が苦手なシズさん大丈夫かな?)と一瞬思うも、「クロが飛行船が接近中だって」と返す。

 

 と、次の瞬間、何かの感覚、と言うより明らかに殺気を感じたので、半ば自然に体が動いた。

 とは言え、ここは狭い船内の廊下。普通に考えると、オレのご自慢の大剣を振り回すには狭すぎる。

 オレに襲いかかってきた何かも、ほとんど暗がりな薄明かりの中でもオレの姿が分かったのであろう動きだ。

 せいぜい短剣くらいしか迎撃手段がないと見越して、突っ込んで来る。


 数は二人。

 どちらも前からだけど、2人並ぶ広さはないので、縦並びなのが救いだ。

 と思ったのは少し甘く、一人目の突きを手持ちの魔銀ミスリル製の短剣で捌いた直後に、一人目が一瞬身をかがめた上から、もう一人が襲いかかって来た。

 かなりの速さで、相手も魔力持ちなのは確実だ。


 けど、こちらも何も準備していないわけじゃない。

 本来なら一人目用だった、すでに抜いてあった大剣を真っ直ぐ突き出して二人目を牽制して、そのまま強引に捻りつつ振り下ろす。

 普通なら大した事ない斬撃にしかならないけど、今のオレの腕力なら相手が普通の人なら十分な破壊力を発揮してくれる。


 オレの目論見は半分叶った。

 一見、襲って来た者の魔力総量が低かったので、斬撃は有効打となった。けど、ある程度鎧を着ていた事と、相手の体内の魔力によって斬撃自体が防がれたため、一人目を一太刀で致命傷とはいかなかった。

 

 襲って来た2人は、一人目が何とか後ろに下がりつつ、二人目が態勢を立て直し、再び襲いかかろうとする。

 けれど、それは叶わなかった。

 「魔法の矢よ!」の言葉と共に、扉を貫いて7本の魔法の矢が、二人の襲撃者に襲いかかったからだ。

 狭い場所での完全な不意打ちだし、そもそも自動追尾なので避けようもなく、2人の襲撃者は一撃で絶命していた。

 なまじ魔力持ちだったから、視界が通ってなくても魔法で狙う事ができたのだ。


「サンキュ!」


 魔法のすぐ後に扉を開いたボクっ娘に言葉をかける事になったけど、魔法を放った当人は既に次の魔法の準備にはいっていた。 

 そしてランタン程度の「灯の魔法」を灯すと、部屋からほぼ完全武装の姿で出てくる。

 ほぼ同時に別の扉も開いて、ユーリとアイに続いて、少し眠たげな顔のシズさんも姿を見せる。


「襲撃者の正体は分かる?」


「突然だったから、これから」


「そう。……ぱっと見、身元が判りそうなものはないわね」


「一見空賊だが、装備は良さそうだな」


「うん。この剣、魔鋼製だよね」


 オレやユーリと違い、ベテランの3人が魔法の矢で倒された空賊に簡単な評価を下す。

 そして冷静に死体を検分できるように、死体ばかりかその死体を作り出した事に対して、心の動揺は見られない。

 かく言うオレも、以前ならともかく今は動揺などない。それに今の戦闘でも、相手を確実に殺すつもりで剣を振っている。


 それよりも、次のお客さんのようだった。

 数は4人。前後から2人ずつ。しかも今度も、総量は低いけど魔力持ちだ。

 魔力持ちは100人に一人の希少な存在なのに、空賊とやらは騎士団でも編成する積りなのかと思える程の大盤振る舞いの陣容だ。

 先日相手した傭兵団でも、魔力持ちはそんなに居なかったのだから、並みの傭兵団以上の戦力を持っていそうに感じる。


(とはいえ、もしオレ達が本命だったら、逐次投入な上に戦力分散ってやつだな)


 そんな事を一瞬思いつつ、既に体は動いていた。

 他の4人も同様だ。

 魔法使いのシズさん、弓のボクっ娘を真ん中に、片方をオレとハルカさん、もう片方をユーリとアイが立ちふさがる。

 そしてオレの方向が、船の外、広い場所に出ることができるのを確認する。


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