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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第4部

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358「王宮炎上(1)」

 街中で仮眠して目覚めると日常が待っている。


 もっとも、その日はバイトだけで1日がほぼ終わった。

 そしてタクミとはバイトで顔を合わせたが、タクミが話したがらないのでほぼ何も喋らなかった。

 話した事も、明日は向こうで最善を尽くそうと二言三言交わしただけ。

 むしろ悠里との会話の方が多かったくらいで、悠里とボクっ娘は今飛行船の中で仮眠中で、夜中に飛行船はバルドル郊外まで戻ると聞くことができた。



 そして次に寝てゆっくり瞼を開けると、まだ暗がりだった。

 念のため昨日と同じ宿の部屋の窓は開けたままなので、外の空気も入ってきているので、屋内だけど少し野外っぽさもある。


「もうちょっと寝てればいいのに、二度寝する?」


 目を開けると、ハルカさんがもう起きていた。

 しかも既に装備も衣装もバッチリ。いつもの事ながら、凛々しくて惚れ惚れする姿だ。


「何ガン見してるの?」


「うん。格好いいなって」


「そこはせめて素敵とか言って。こっちは女子よ」


 そう言って苦笑する。

 しかし戦闘に向かうときの彼女は、素敵よりも格好いいが相応しい。

 とはいえ、それ以上深く言っても藪蛇だ。


「そうだな。それより、そっちこそ寝てないとかないよな」


「ショウと違ってこういうのは慣れてるから、緊張で寝られないってことはないわよ。一昨日と同じ強さで、敵が死霊術師だけなら、もう苦労もしないだろうし」


 確かに彼女の言う通りだ。

 そしてそうであれば良いと思う。楽に越した事はない。


「そうだな。魔力供給も絶たれた筈だし、詰みは向こうの筈だよな。あと、もう一つ朗報」


「なに?」


 言いながらこちらに近づいて来る。

 合わせて、こちらも身を起こしつつ質問に答える。


「飛行船は夜中に戻ってくるってさ」


「ユーリちゃんから?」


「そっ。今は船の中で寝てるって」


 そうして二人して飛行船が飛んで行った方向を見ると、複数の星がまとまって近づいてきているのが分かった。

 明かりを灯した何かが空を移動しているのだ。


「ちょうどいいタイミングだったみたいね」


「だな。それじゃあ迎えに行くか」


「その前に、ちゃんと身だしなみを整えておきなさい」


「はーい」


「生返事しない。ハイっ、こっち向いて」


 そうしてハルカさんに、ちょっとイチャイチャしつつ着せ替え人形にされてから、飛行船が仮発着場所に使っていた町の外の広場へと向かう。


 結局、交代で夜通し監視していたけど、ネロ何某の死霊術師が王宮から攻めてきたり逃げ出さなかった。それに、亡者も出てくることも無かったので、町には夜番の兵士以外に動く姿はない。

 採算度外視で篝火が焚かれているので明るいのが、明る過ぎるくらいで、どこか現代の町を彷彿とさせる。

 そしてさらに夜明け前の夜を明るく照らしているのが、かなり満ちた月だ。



「今夜は満月か。夜までにケリをつけたないな」


「満月以前に夜までに何とかしないと、亡者が元気になるわね」


「それもそうだな」


「あ、降りてくるみたいよ」



 飛行船は、船を引いている巨大な雲龍と合わせると全長で100メートルを上回る。

 それが空から降りてくる様子は純粋に圧倒される。

 空から降りてくるのが巨大な岩となれば尚更だ。

 けど着陸は思いの外静かで、少し離れて着陸を待つほどでもなかった。


 そうして二人で飛行船が着陸して動きが出るのを待っていると、梯子が出て人々が降りて来始める。

 『帝国』の船員を先導にして降りて来るのは、ハーケンを根城にしているベテランの『ダブル』達だ。

 しかし悠里とボクっ娘の姿はまだない。


「わざわざ夜中に出迎えてくれなくてもいいのに」


「昨日は早く休んだから、十分休ませてもらってるわ。それより、お疲れ様」


「ありがとう」


 最初に降りてきたマリアさんとハルカさんが、いつものグータッチをする。


「皆さんもお疲れ様でした」


「さんきゅう、兄弟。で、靄が晴れたって聞いたが」


 こっちも、続いて降りてきたジョージさん達と軽くグータッチを決めておく。

 そういえば、こっちの『ダブル』はグータッチが多いが、これをこっちの人たちは『ダブル』の一般的な挨拶と思っているらしい。


「ハイ、夕方に晴れました。戻る気配もないそうです」


「じゃあ亡者の団体は、他に居ないってことだな」


「よかった。亡者はしばらく見たくないです」


「何言ってんだサキ、ボスキャラがまだ残ってるだろ」


「それはオレらが何とかしますよ。と言うか、ランバルトから例の許可が出ましたから、出番ないかも、ですけど」


 サキさんとレンさんへのオレの返しの言葉で、ジョージさん達だけじゃなくて周りの『ダブル』達も騒めく。


「そうか。シズさんが吹き飛ばすのか。じゃあ、もう準備を?」


「万全の体制でしてもらうため、まだ休んでます」


「けど、日の出と同時に総攻撃よ」


「それでどっちをするの? 『煉獄』? 『熱核陣』?」


 マリアさんがハルカさんに問いかける。

 かなり興味があるらしいが、まあ当然だろう。


「『煉獄』。建物が木造が多いし朝は風向きが海に向かう方だから、というのは表向き。『熱核陣』を炸裂させるには、ここの王宮は小さいもの」


「それに、ランバルトの人たちが昨日の『轟爆陣』でビビって、『轟爆陣』すら使わないでくれって」


「確かに、これ以上街中でドカンとされたくないよな」


 オレとハルカさんの説明に、みんなも「まあそうだよな」と納得する。

 そしてオレ達が話したように、夜明けと同時に王宮丸ごと焼きはらうのは、昨日の夜の作戦会議で決まったことだった。


 靄が晴れても晴れなくても決行できるからだけど、過ぎ去った日数を考えると中の人の生存は絶望と考えたからでもあった。

 さらに言えば、もはやランバルト王国自体の命運が尽きたと分かったので、地味な王宮に固執する必要も無くなったと言うことだ。



 そして夜明け前にはボクっ娘が飛行船から起き出して、早速ヴァイスと一緒に文字通り飛んで出てきた。

 少し遅れて、悠里もライムと一緒に顔を出す。

 向こうでの悠里の話では、今日の戦いに参加する為にギリギリまで寝ていたせいだ。

 そしてその頃には、アイに起こされたシズさんが、ノロノロと朝の支度を始めるところだった。


 王宮の堀の周りでは、火矢と油など可燃物を投げ込む投石機の準備も進んでいる。海の側でも、ランバルトの軍船が同じ準備をしている。

 火矢と油を投げ込むのは、空を飛ぶ様々な魔獣乗りも参加する。非戦闘用の天馬や飛馬にもできることだからだ。


 ただ、実のところ、『煉獄』を使うことにしたのはアクセルさんだった。

 『熱核陣』を使って一人で王宮を派手に消し飛ばした場合、後でシズさんや主人に当たるハルカさんが、非難されたり害が及んだりしないためだ。


 そして日の出前の早い朝食後に作戦が開始されるけど、そこで飛行船で亡者鎮定に向かっていた人達から色々と話を聞けた。



「そうか、あの傭兵団も全滅か」


 シズさんは部屋で食事を取っていたので、それを迎えに行った時に気になっていたと思ったので、少し話題として振ってみた。

 何とも言えない表情が印象的だ。


「だそうです。夜中ヘトヘトの雑魚寝状態のところを亡者の群れに不意打ちで襲われて、士気が崩れて包囲されて、ほとんど全滅って時にみんなが駆けつけたそうです。生存者は数えるほどだとか」


「それでさらに亡者が増えていたから、平らげるのに時間がかかったといったところか?」


「そんな感じらしいです」


「前の戦争ではケダモノのように暴れ回ったと聞いたが、滅びる時は呆気ないものだな」


 そう言って会話を締めくくった。

 そして、何か思うところがあったとしても、すぐに切り替えられるのがシズさんの凄いところだ。


 そしてシズさん到着と共に始められた攻撃だけど、大量の魔石と支援する魔法職、さらに昨夜から描かれていた大規模な補助用の魔法陣、増幅用の魔導器の数々を用意することで、可能な限り魔法の範囲と効果を拡大して行われる。


 参加する魔法職は、『ダブル』を中心に8人。当然とばかりにハルカさんも加わっている。

 似たような事をノール王国でした事があったが、軽くデジャブーを感じる光景だ。


 そしてオレや他の戦闘職は、魔法構築時に亡者や死霊術師が攻撃してこないよう警戒配置に付く。

 ただしオレは初期で魔力タンクの役割もあるので、護衛とタンク双方を兼ねるためシズさんの側に陣取る。


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