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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第4部

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349「友の告白話(2)」

 すでに駅前だったので、そこから程近いファーストフードに落ち着く。

 周りには部活帰りのご同輩もいるので、違和感は特にない。

 喧騒もほどほどだし、こっちが大声でもあげない限り話を聞くにはちょうどいいだろう。

 オレの横に玲奈、対面にタクミが座る。

 

「最初にぶっちゃけるけど、告白自体を言う前に断られた」


 開口一番、本当にぶっちゃけられた。

 思わず聞き返してしまう。


「振られたじゃなくて?」


「うん。ボクもこの事を予測しておくべきだったよ」


「予測出来る事なのか?」


「そうだよ。ショウなら分かるだろ」


 本当にそう思って言っているらしい。

 しかしすぐには思い当たらない。


「いや。コミュ障のオレに何が分かるってんだ?」


「た、多分だけど」


 またも玲奈が小さく手を上げている。当然二人の視線が集中する。


「元宮君は、シズさんから向こうでの話を聞いたの、かな?」


「その通り」


 そこでオレも、やっと察する事ができた。けどそのまま玲奈に譲る。


「私も、初めてショウ君がシズさんに会いに来た時、一緒に話を聞いたんだけど、シズさんは『夢』の向こうで戦争に負けた国に居て、凄く辛い目にあったよね。だからだよね」


「正解。ていうか、ショウが気づかないでどうする」


 苦笑と共に小突かれた。苦笑以上の苦笑いで誤魔化せそうにないほどだ。


「面目ない。ていうか、その話をシズさんから聞いたんだな」


「うん。聞き流してくれって話してくれた」


「それを話してもらえただけでも、大幅な前進だと思うぞ」


「ならいいけど、これでやっとショウに少し並んだだけだろ」


 タクミがシズさんから聞いた話と言うのは、ノール王国の戦争の話で間違いないだろう。

 そして、オレがシズさんから最初に聞いた話には、親しい人を戦争で沢山亡くしたと語っていた。

 けれども、だ。それだけなら、こうして話す必要もないだろう。

 と思ったところで、タクミが再び口を開く。


「とにかくシズさんは、今はまだ恋愛ができる気持ちになれないんだってさ。ショウをからかうくらいなら、リハビリにいいらしいけどな」


「ハハハ、確かにちょくちょくからかわれてる。けどあれは、ちょっとしたサービスって感じだけどな」


「それだけでも、ショウはシズさんの心の内側に入れてる証拠だよ。恩人ってのは伊達じゃないんだな」


 羨ましそうにオレを見てくる。

 ただ、タクミのシズさんへの感情には、オレとしては少し違和感を感じた。

 オレとタクミの違いなのだろうが、今のオレだったらダメと言われても一度は自分の気持ちはぶつけていると思う。


「むしろオレの方が恩を感じてるんだけどな。オレの話を聞いてもらってなきゃ、あっちの世界に戻れなかったし」


「でもその後に、普通じゃ倒せないような魔女の亡霊を倒したんだから大したもんだよ」


「あれは今までで一番必死だった」


「ボクには、今のところそう言うのはないからな。だからショウと天沢さんは、それぞれの場所のシズさんの側でしばらくは支えてあげてくれ」


 これを言いたかったのだろう。流石タクミだ。単に空気が読めるだけじゃなくて、そうしたところに気が回せるヤツだ。

 玲奈も静かに頭を縦に振っている。

 しかし、と思うところはある。


「それは請け負うけどさ、タクミ自身はどうなんだ」


「言ったろ。今のボクじゃ無理だ」


 諦めているでも誤魔化しているでもない、踏み込んでいないんだ。それに、踏み込むだけの気持ちに達してないんじゃないかと思えた。

 だけど、そこまで言ったらダメな気がする。

 それでも自然と言葉が出てしまった。


「そうやって、すぐ空気読み過ぎなんだよ。もう少し突っ込んで行ってもいいんじゃないか。オレなんか、ある意味シズさんに初対面で突撃したぞ」


「それは空気読まなさすぎ」


 苦笑と共にコメントが返ってきた。


「だとは思うけど、時には突撃も必要だと思うぞ。でないと解決しない事もあるし、話が先に進まない事もあるだろ」


「なるほどな。でもさ、誰にでも出来る事じゃないよ」


 しみじみと、と言った感じでタクミが言葉を吐く。


「うん。私もそう思う。そう言うところは、ショウ君の良いところだよ」


 玲奈の言葉が強い。それだけそう思っているんだろう。

 まあ、本当にオレの良いところかは、自分的には疑問もあるけど。


「天沢さんの言う通りだな。まあ、今のボクの気持ちとしては、あまり先に進み過ぎて、ボクを置いてけぼりにしないでくれってとこだな」


「追いつくんだろ。それとさ、やっぱり一緒に旅しようぜ。男一人は何かと肩身が狭いからさあ」


 と言って、机に軽く突っ伏す。

 そして顔を上げてタクミに視線を向ける。


「で、オレに頑張れと?」


「みんなも賛成してくれてるし、堂々とシズさんの側にも居られるぞ」


「シズさんの了解は?」


「宿に戻ってきてから話したら、気軽な感じでああいいよって」


「そっか」


 少し重い「そっか」だけど、否定的な響きは無い。

 覚悟決めないといけないなってところだろう。

 だからもう一言を、と思った。


「あ、そうそう、タクミを誘うって話をする時に『この戦いが終わったら』って言っちゃったから、気をつけとけ」


「何フラグ立ててんだよ。ていうか、死ぬのは言ったショウで、ボクじゃないだろ」


 軽くパンチが飛んで来たが、元気になった証拠だ。

 しかしグリグリと頬をえぐるのは、ただでさえイケてないのがさらに変な顔になるので、玲奈の前では止めて欲しい。


「まあそうだけど、色恋沙汰がらみの話はタクミだろ」


「じゃあショウは、フラグクラッシャーになってくれよ。それでチャラだ」


「なんだ? オレがシズさんのハートを射止めていいのか?」


「恋愛フラグのクラッシャーじゃないっての。これだからハーレム野郎は困るんだよ」


「アハハハハ、仲いいね」


 なるべく口を挟まない様にしていた玲奈が、かなりの大きな声で楽しそうに笑っている。あか抜けた外見と明るい雰囲気とあわせて、以前には見られなかった事だ。


「ホラ、レナに笑われた」


「ホントだな。ていうか、明日大変な戦いがあるってのに、余裕過ぎだろ」


「あっちはあっち、こっちはこっち、だよ。向こうで起きてから考える」


「……その切り替えが出来るショウが羨ましいよ」


 あんまり意識した事も無いのに、そんなしみじみとした視線を向けられても困る。


「タクミもそのうち慣れるって」


「だと良いけどな」


「まあ、多少のクンフーは必要だろうけどな」


「その辺の事は、ご指導ご鞭撻よろしく」


「おう、任された。いや、フォロー・ミー」


「なんか不安だなあ」


 うん、オレ自身もそう思う。

 だから軽く笑い返すだけにした。


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