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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第4部

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340「傭兵との対決(1)」

「済まない。亡者の群れを叩くつもりが、手が滑ったようだ!」


 爆風がほぼ収まったところで、シズさんが大声で抜け抜けと言い放つ。

 その容姿と演技も相まって実に絵になる。


 まあ、コケにされたような敵さんは、あまりの言い草に毒気を抜かれたように呆気にとられている。

 そして恐らく傭兵と思われる大半の者は、その場で動けなくなっていた。逃げないだけマシと思うが、背中を見せたら魔法が飛んでくるとでも思っているのかもしれない。

 勿論、さっきまでの攻撃も止んだ。


 また、少し後ろにいた数十騎の騎馬隊は、馬が爆発に怯えて混乱して何も出来なくなっている。馬には悪い事をしたかもしれない。

 よく見れば、天馬1頭が誰も乗せずに飛んで逃げ去っていった。


 しかし、ビビってる奴だけでもなかったらしい。

 中央の辺りから、「俺を馬鹿にしやがってーっ!」と叫びつつ少数の集団が抜けて出た巨漢の団長が仁王立ちになった。

 加えて、ビビっている兵士達に喚いている。


 聞けば、「手はずは崩れたが、一斉に襲いかかるぞ! あの魔法の後だ。でかい魔法は飛んでこない! それに乱戦になれば、空の化け物は手が出せない!」などと喚いている。

 しかしそれで傭兵達は動く様子がなく、巨漢が近くのやつを蹴ったり殴り飛ばしている。

 武装した大の大人が軽く5メートルほど吹き飛ばされるのは、何かの冗談のようだ。


 けど傭兵達は、それでもオレ達を恐れる気持ちの方が強いらしく、巨漢は捨て台詞のように自分達が近づくのを援護しろと言って、オレ達の方へと向く。

 100メートルは離れているのに、すごい殺意を感じる目線だ。

 余程お冠らしい。


 もっとも、接近戦を仕掛けてくるのは、最初に交渉に現れた巨漢だけだった。

 一騎打ちの約束もしてないので、自分の腕に余程自信があるのだろう。それとも単に、怒り心頭で判断力を無くしているのかもしれない。

 兜も被ったフル装備状態で、魔力もモリモリ消費して一時的にパワーアップしているのも感じ取れる。


 けどやはり、巨漢についてくるのは、命令に忠実な骨の巨人だけだ。そいつらが、のそのそと腰が引けた傭兵達を押しのけながら前列に出て来る。

 部下の傭兵達は、全員が何もしないわけではなさそうだけど、何人かが弓矢やマジックミサイルで攻撃するだけらしい。交渉に付き添っていた副官や護衛らしき奴すら、前に出てくることはない。

 全体としてはすっかり及び腰で、シズさんの魔法を目の前で喰らったので一歩も前に進めなくなった、といった雰囲気だ。


 しかしその中から、骨の巨人に挟まれたフード付きが前に出て来る。

 今まで姿を見せていなかった、魔力総量の多い魔法使いだ。

 何か別の事でもしていたんだろうが、防御魔法をかけていたという事でもなさそうだった。

 そして魔法使いの登場を待って、巨漢が俺たちに向かってくる。


「戦士1、魔法使い1、ボーンゴーレム6ってところか」


「人が少ないだけ助かるわ。それに、叫んでる内容からして交渉とは思えないわね」


「攻撃も再開されたしな」


「それより来るぞ」


 これだけして敵が戦意を維持していることに、ハルカさんが軽く頭を抱えている。

 オレは守護騎士としての御役目があるので頭を抱えてもいられないし、アンデッドを放置して戦争などしているような奴に対しては、降りかかる火の粉くらいしにしか思っていない。


 シズさんも似たように見えるが、間接的にかつての仇敵に当たるランバルトを助けることに、思うところはないのだろうかと思えてしまう。

 などと余計なことを思っていたのがいけなかった。

 敵に先制を許してしまう。


「お前ら、よくもコケにしてくれたな! 男と魔物はバラバラにして豚の餌に、メスどもはたっぷり相手をした後で奴隷商に売り払ってやる! そこを動くなーっ!!」


 敵の隊長とおぼしき巨漢は、爆風をもろに受けてボロボロになった、恐らく魔法繊維で編まれた防具の一種のマントを自らちぎる様に脱ぎ捨てると、猛然と突進を開始した。

 その際の罵声は決して脅しではなく、今までしてきた事だと直感的に理解出来る。


 よほどの重装備らしく、そこら中から金属製の全身甲冑の音を鳴らして実に賑やかだ。

 しかしそれだけの鎧を付けていて、走る速度は常人の及ぶところではない。まさに人間重戦車だ。

 地響きすら聞こえてきそうだ。


 見た目の魔力から考えても、最低でもAランクの脅威と見るべきだろう。それに心無しか、胸の辺りから強い魔力を感じる。何か胸に強力な魔導器を仕込んでいるのかもしれない。

 しかし明らかにハルカさんを狙っているので、オレが相手にしないわけにはいかない。


「倒すけど、いいよな」


「ええ。神官に手を上げた以上、もう問題ないわ」


 短くハルカさんとやり取りするが、みんなもう躊躇はなさそうだ。


 一方敵の突進は、少し遅れてボーンゴーレのうち4体も始めている。残り2体は、後ろに残った魔法使いの護衛のようだ。

 そしてその魔法使いも、適当な距離まで近づくと魔法の構築を始めている。


 しかし他は、仲間に任せればいいだろう。

 オレの相手はあの巨漢だ。

 100メートルの距離を、重装備なのに5秒と掛からず詰めて来る。

 凄まじい魔力総量である事を物語る常識はずれの動きだ。



「邪魔だーっ!!」


 巨漢が罵声とともに繰り出してきたグレートソードを、みんなより5メートルほど前に出たオレの大剣がガッシリと受け止める。

「ガキッ!!」と盛大な音が響くが、巨漢の大剣も丈夫な魔法金属らしく、オレのご大層な剣を前にへし折れたりはしなかった。


 敢えて受け流さすに正面から受けてみたが、人の中では今まででトップクラスのパワーだ。

 魔物でも、これほどのヤツは悪魔ゼノくらいかもしれない。

 これがマンガやアニメなら、オレの周りの地面が放射線状にボコッと凹んでいるところだろう。

 いや、少し地響きや土煙がした気はしたが、気にしたら負けだ。


 なお、身の丈2メートル、鎧・武器込みで推定体重200キロの巨漢が大上段で振り下ろしてきたのは、刀身だけで1メートル50はある、一振りで飛龍の首を落とせそうなほど巨大なグレートソード。

 刃の分厚さから重さは10キロで済まないだろうし、刀身が鈍く黒光りしているので恐らく魔鋼製だ。

 でないと、今の激突でオレの剣の前にへし折れていただろう。

 それほどのパワーだ。速度も凄い。軽く剣風が起きている程だ。

 一方で、それほど高い技量は感じなかった。


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