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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第4部

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339「傭兵団の去就(2)」

「疾風の騎士と竜騎兵相手に、あの戦力でどうするつもりなんだろうねー!」


「レナは出来るだけ手は出さないでね!」


「分かってるよーっ! でも、空の上は守らせてもらうし、襲ってきたら返り討ちにするからーっ!」


「それはお願いねーっ!」


 そう言って、低空で回るのを止めて、少し上空へと上がって行く。

 次に地表のライムが、上空が空いたので飛び上がる準備を始める。

 しかしその乗り手も、少し困惑気味だ。


「私、どうしましょう。ライムのブレスでも脅しで浴びせてやりましょうか?」


「相手が躊躇ちゅうちょするくらい感電させて身動きできなくできれば一番だろうけど……」


「やりましょうか?」


「いや、ユーリちゃんもレナと一緒に空で待機だ。私達の真上の空で、雑兵を牽制しておいてくれ」


「分かりましたーっ!」


 そう言って、ヴァイスの後を追うようにライムが上空へと舞い上がる。

 そしてそこで、敵の一部が弓を射かけてきた。

 けど、統制は取れてないし、矢もライムまで届いてない。雷龍が飛び上がったので、恐怖に駆られてといった感じだ。


 けど、それをきっかけとして、こっちへの散発的な攻撃が開始される。

 とは言え、既にハルカさんが防御魔法を一通り長時間対応で構築した後なので、『防殻』と『防盾』の魔法に阻まれてオレ達には何の実害も無い。


 そしてこれで、図らずも敵に最初の一発を撃たせるという条件は整った。町の連中も見ている事だろう。

 それを見て、シズさんがニヤリを笑みを浮かべる。


「何をするんですか?」


「ちょっとした花火を、連中の目の前で見せてやろうと思ってな」


 言葉尻で、質問したオレにウインクが飛んできた。

 しかし冗談めかしているが、何かの大規模魔法を仕掛けるつもりだ。

 こういう時のシズさんは容赦ない。


「一撃で全滅させるんですか?」


「いいや、目の前と言っただろ。流石に大量殺戮は避けたいからな」


「そうよね。私は念のため防御に集中しているから、出来るだけ派手にお願い」


「心得た。というわけで、ショウを借りるぞ」


 二人で話しつつ、シズさんが歩きながらオレの方まできて、ハルカさんにウィンクする。


「ちゃんと返してね」


「返すまで美味しくいただくが、構わないよな」


「ショウの魔力は美味しいものね。仕方ないわね」


 何やら怪しげな会話をしているが、要するにシズさんの大魔法のために、魔力タンクとしてオレの魔力を使うという事だ。

 この後に亡者の殲滅が待っているのだから、魔石は温存しておきたいのだろう。


「お、お手柔らかにお願いします」


「戦闘に響かない程度には残すから心配するな。じゃあ」


「はい」


 そう言うと、シズさんと片手だけつなぐ。両手ではないのは、別の手には大ぶりの魔法使い用の杖を握っているからだ。

 そして残すと言ったのに、遠慮なく吸われていく。


 それと共にシズさんの魔力が極端に上昇し、さらに巨大な魔法陣が目の前に形成され、幾つも重なっていく。

 さらに腰の魔法繊維で編まれた完全気密が確保された袋から、触媒から精製された気体の固まりが二つ、急速に形成されていく。

 『轟爆陣』だ。


 なおシズさんは、元々魔導師として知っているのもあって、ハルカさんがオレにするように比較的簡単に魔力のやり取りが出来るようになっている。

 普通は短期間で習得できることではないそうだけど、その辺は流石としか言いようがない。

 オレなんか、未だ最も初歩の魔法どころか、魔法の基礎で止まってる。


 と内心で凹む間もなく、短時間で『轟爆陣』の魔法構築が完成するが、しばらくは敵の出方を見ることになる。

 この待機の為にも相応の魔力が別に必要なので、オレがタンクになる必要があったようだ。

 そしてこのまま逃げてくれれば一番だけど、一斉に万歳突撃などされたら鼻面に叩き付けるという芸当も難しくなる。

 この点は、向こうが全員馬に乗っていないのは救いだ。


 もっとも敵は、こちらの期待通りに魔法の準備が進む間に、敵の弓兵と一部魔法使いがさらに前進してきて盛んに攻撃し始める。

 ただ、最初の一本を撃った以上、攻撃しないと仕方ないといった雰囲気を受ける。

 攻撃自体も盛んだけど及び腰だ。

 まあ、未だに手を出して来ないとは言え、上空を舞う巨鷲と雷龍も怖いだろう。


 しかし、攻撃は盛んなだけだった。

 弓はほとんどが普通の矢、魔法の矢も若干あったが威力が全然だ。

 魔法は全てマジックミサイル。

 射程距離的には仕方ないが、威力も数も迫力がない。

 当然ながら、何重にも施されたハルカさんの分厚い魔法防御を全く突破できないでいる。

 ハルカさんは、何か大威力魔法等が飛んで来た時に備えているが、飛んで来る気配はない。


 もう少し近づいてくれば、より攻撃力の高い魔法や魔法剣もあるかもしれないけど、その時にはこちらも大魔法が炸裂するだろうと向こうも見ているようだ。

 空には巨大な鷲と龍が飛んでいて、さらに大きな魔法陣が見えていれば躊躇もするだろう。


 そして半ば囲むように少し近づきはしたが、一定距離以上には距離を詰めてこない。比較的間隔を開けて展開しているのも、空の敵に目標を与えない為だろう。

 騎馬集団も、空が怖くて動くに動けていない。

 それに加えてシズさんの巨大な魔法陣だ。怖くて仕方ないだろう。


「馬鹿なのに、こんなところだけ馬鹿じゃないのも滑稽だな」


「いっそ逃げてくれればいいのにな」


「もういいわ。街の方からも様子は十分見えているだろうし。シズ、やっちゃって」


「ああ、そうだな。もう少し利口な奴か脅威になる奴がいるかと思ったが拍子抜けだ」


 その言葉の最後に、魔法が行使される。

 シズさんの『轟爆陣』は、ハルカさんのように厨二病っぽい呪文みたいな言葉はなく、最後に静かに「いけ『轟爆陣』」と言うだけだ。


 魔法の構築が、シズさんの方が優れいている証拠だ。

 しかも本職の魔法使い、しかも炎の魔法が得意なシズさんが圧倒的魔力と技術で放つ『轟爆陣』は、ハルカさんが同じ魔法を行使するより威力も精度も高い。


 目の前では巨大な火球が誕生したかと思うと、そのすぐ後に爆発地点が凄い高温だったことを示すキノコ雲が短時間の間だけ形成される。

 そして本来なら敵を根こそぎ吹き飛ばす魔法なのだけど、敵がギリギリ大怪我を負わない程度の場所で炸裂する。


 とはいえ、爆風だけでも凄まじい。

 オレ達はハルカさんの防御魔法で守られているから平気だけど、より近い場所で爆風と熱を受けた傭兵連中は、大混乱だ。

 軽い火傷を負ったり吹き飛ばされて倒れたりして、それなりにダメージも受けている。

 これで連中は逃げ散るだろうか。


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