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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第4部

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312「身バレの原因(2)」

「前兆夢の中なのは承知してるが、オーガを倒せた。これで最初の頃のショウと同じくらいの強さって事だろ」


食人カニバルラルウァか」


「えっ、今何て言った?」


「いや、だから食人カニバルラルウァ


「ショウ君、向こうの言葉になってる」


「アレ? そんなつもり無かったのに」


「やってくれるなショウ。ていうか、向こうに入れ込み過ぎなんじゃないか?」


「どうだろう。ホント、意識してなかった」


 自分でも意外すぎて、照れ隠しに頭を掻くしかない。

 しかし意識してみると、確かに向こうの言葉が少しだけど頭に浮かんでくる。今まで無かった事だ。


「向こうの知識も、こっちに持ち帰れるって本当なんだな」


「ああ。シズさんなんか、普通に読み書きできるぞ」


「流石だな。魔法は?」


「試したけど無理らしい。そもそも魔力がないからな」


 そう言って首を竦めておくと、タクミは苦笑した。


「そりゃ残念」


「それよりタクミの魔法は?」


「バリエーションは増えず。風系の魔法だけだ。けど、槍に乗せたりできて結構楽しいぞ」


 両手で獲物を持って突く仕草をするが、表情は先日と比べると全然違う。

 タクミなりに手応えなりを感じているのだろう。


「魔法戦士かー。ちょっと羨ましいなあ」


「そう言うショウも、何かあるんだろ」


「それは向こうでのお楽しみ。それより、万が一出現した場合だけど」


「何回も聞いたって。森に入るな。街道に出ろ。人里を目指せ。魔力を感じたら取りあえず離れろ。これくらいだっけ?」


 タクミが言いながら指折りしていく。


「うん。そんな感じ。あとは、街道上で人と会ったら注意しとけ」


「盗賊か?」


「うん。あの辺だと道で人に会う自体珍しいけど、念のためな」


「行商人、旅芸人、巡礼者くらいだっけ?」


「あと国の兵隊や役人、神殿関係者。たまに盗賊、傭兵。街の近くだと、近くの農村から町に農作物売りに行く人とかも居るけどな」


 みんなして、指折りしながら数えていく。

 なぜか玲奈も細く小さい指を折っているが、可愛いからノープロブレムだ。


「こうやって挙げてみると、普通に道に人がいそうだけどな」


「それが全然。まあ、オレ達が歩いてたのが人の少ない田舎ってのはあったけど」


 思わず両手で「ノー」のリアクションしてしまう。

 本当に人と出会わなかった。


「でもボクの場合、最悪荒廃した国に放り出されるんだよな」


「たぶん。旧ノール王国だと、まだ魔物もそれなりに出るだろうから、とにかく夜は安全そうな場所でじっとしてる事だな」


「安全かどうかとか分からないって」


「神殿跡が一番だな。予習でその手のサイトで勉強しとけ。オレでも、向こうじゃ文字とか魔法の勉強たまにしてるくらいだからな」


「勉強かあ」


 タクミが、少し前のオレと同じような表情で遠くを見つめている。

 気持ちは分かるけど、どこかの誰かがノーリスクで気前良く技術や大金、そして強さをくれる世界ではない。


「強くなりたきゃ、鍛錬と勉強からは逃げられないぞ。チートはキャラメイクガチャまでだから、ギリギリまで頑張れ」


「なるほど、そうする。けど、そろそろかもってのは感じてるから、後一週間は無理だと思うぞ」


「もうこっちの用事は片付いたから、3日で十分だよ」


 スマホの画面にヨーロッパの地図を立ち上げ、位置とだいたいの経路を示しておいてやる。

 こうして見ると、現代での飛行機の移動がどれだけ凄いか分かる。けど同時に、向こうで地上を行く場合を考えると、空の旅に慣れた身としては頭がクラクラしてきそうだ。


「こうやってみると、ショウ達ってヨーロッパ往復してるようなもんだな」


「だよな。空の旅だから簡単に言えるけど、馬とか徒歩だと無理ゲーだな」


「ジャイアント・イーグルって、どれくらいの速さで飛ぶの?」


 数日とは言えヴァイスで飛んだけど、そう言えばこっちの玲奈は移動はしていなかったのを思い出す。

 だからボクっ娘の言葉を脳みその奥から引っ張って来る。

 玲奈の言葉で、改めてその事を考えさせられた。


「普通に飛ぶだけだと、時速100から150キロくらいじゃないかって。巨鷲とかは飛ぶ時に魔力で薄い膜みたいなので覆われるから、あんまり速度出てる気はしないんだけどな」


「超音速も出るんだよな」


「あれは普通の急降下だけじゃなくて、魔力増し増しで強引に速度上げてるから出来るんだそうだ。膜も下手な防御魔法以上になるから、大砲の弾が飛ぶようなものらしい」


「だからあんなに威力があるんだね」


「あんなに?」


 玲奈がダウトだ。

 入れ替わりの事はタクミに話してないが、それはタクミが向こうに行ってからでいいだろう。

 玲奈もすぐに立ち直り、オレに少しだけ視線を向ける。


「あ、あの、ショウ君が前に話してたのを思い出しただけだよ」


「ああ、そうか。最近のショウはイベント多いから、記憶が薄らいでいたよ。貴重な話なのに忘れるとは、ボクもクンフーが足りてないな」


 普通に誤摩化せた。

 けどここは追撃しておくべきだろう。


「どうせ、前兆夢で頭が一杯なんだろ」


「マジそうかも。話させてるのに悪いな」


「どういたしまして」


「あ、そうだ。話させてで思い出したけど、シズさんの画像流出の原因が多分だけど分かったぞ」


「タクミが、オレの身バレの時に見せた画像か?」


 タクミがオレの言葉に深く頷く。

 もう三ヶ月も前の話なので、少し懐かしさすら感じる。あの写真を見せられなければ、オレの身バレもなかったかもしれない。

 玲奈に声をかけられるきっかけでもあるので、オレにとっては忘れたくても忘れられない思い出でもある。


「そうそう、あれ。で、これ見てくれ」


 そう言ってタクミが見せたスマホの画面には、少し引きだけど全身姿のシズさんが映っている。見るからにお洒落な姿で、一緒に覗いていた玲奈が「あっ」と小さな声をあげた。


「やっぱり天沢さんは心当たりある?」


「うん。多分、少し前に雑誌に載ってた時のシズさん。ネットに一杯あるの?」


「大きい画像は殆どないな。これも印刷物を撮ったぽい。それにこれ以外にも幾つかある。それに動画も」


「動画までか。シズさんに注意促しとくよ」


 思わぬところから、昔のシズさんの情報が飛び出して来た。しかもモデルをしてたから身バレした事になる。

 おそらくは、向こうでシズさんを見た事のある『ダブル』が、現実世界でモデル姿のシズさんを見つけて情報をリークでもしたのだろう。


 こうした話は世界中でもチラホラと見られ、『ダブル』であることをカミングアウトした著名人、有名人も過去に居た事がある。

 けど今のシズさんには、もう縁遠い話の筈だ。

 と思ったが、タクミはそうは思ってなかった。


「それが良いかもな。それより、ショウ達がノヴァの辺りでかなり有名になってるみたいだから、そっちの方が心配なんだが」


「私も少し見たよ。かなり有名になってるよね」


「ネットに話上がってるのか? どんな風に?」


「見てないのか? そうだな、話をまとめると『亜人が駆るドラグーンの群れを率いたSランパーティーが、全軍の窮地に空から颯爽と現れ、ボスキャラはじめ魔物を倒すだけ倒したら、コミックヒーローのように何も求めず去って行った』って感じだな」


「誰だその恥ずかしいヤツらは」


 そんな心がくすぐったくなるような評価など絶対見ないぞと思いつつのオレの軽口に、タクミが意外に深刻そうな表情をしている。

 玲奈も少し心配げだ。


「ショウ達だろ。白いジャイアントイーグルは、他で目撃例がないしな」


「まあな。けど、幹部連中以外にはそれほど見られてないと思うし、そもそもシズさんが身バレする可能性は低いよ。それにさ、その写真も何年か前のだろ。ノヴァでシズさんを知ってる人は居なかったぞ」


「そうなのか? 目立つ人だし見たら忘れないと思うけど。……変装でもしているのか?」


「ま、そんなとこ。向こうに行けば分かるよ。さ、それよりそろそろ着替えに行こうぜ。レナ、短い時間でゴメンな」


「オーライ、相棒」


「全然。予定外だったけど、色々話せたから」


 二人がそれぞれオレの言葉に応え、それでお開きとなった。


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