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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第2部

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137「キーアイテム?(2)」

 こちらが少し唖然としていると、やや緊張した面持ちのエリート官僚が向き直った。


「大変失礼致しました。想定外の事態を前に、醜態をお見せしてしまいました。それで極めて申し上げにくいのですが、見つかったのはあれ1つでしょうか。

 この件に関してお教えいただけるのなら、情報料として十分な謝礼をお支払いさせて頂きます。また、他の物も十分な金額で購入させて頂きたく考えております」


「いや、あれ一つでした。ただ、探した時間も限られてたし、あれだけって断言はできません」


「そう、ですが。情報提供、誠に感謝いたします」


 今までの嫌味な態度が嘘のようなエリート官僚に、少しだけ嘘をついた後ろめたさがあったので、本当のことを少しアレンジして教えることにした。


「あ、けど、アースガルズのど辺境にある浮遊石の廃鉱山の坑道で、中身は空だったけど同じような箱は見かけましたよ。だからそれも見つけられたんです」


「誠ですか」


「はい。オレとルカ様は、ウルズの魔女を鎮魂する前に、あの辺りの村落を巡察していたんですけど、その道中で見つけました。まあ、箱はボロボロだったから捨てましたけど」


「その中身は無かったのですね」


「はい。我が名と神々に誓って」


「神々に仕える方に疑念を抱いてしまい、失礼申し上げました。また重ね重ね、情報提供、誠に感謝いたします」


「構いませんよ。偶然の結果であれ誰かの役にたつなら、意味があったんでしょう。ただ、調べるなら、あの国に迷惑かけないでください」


 こっちから話を振ったとはいえ、これだけは確約してもらいたいという気持ちを言葉と視線に込めた。


「勿論です。皆様方との出会いを、恐らく私、いや、もしかしたら我が『帝国』は神々に感謝することになるかもしれません。この場で詳細は申し上げられませんが、あの浮遊結晶の解析が済みましたら、必ずお知らせ致します」


「それじゃ、オレ達に礼を言うのは早いんじゃないですか?」


「我が『帝国』が長年探求しているものは、手がかりになるかもしれない物ですら滅多に見つかることがないのです」


「そうなんですか。けど、オレ達、いやルカ様やレナ様に話して良いようなことなのですか?」


「神殿巡察官、疾風の騎士は、神殿でも特殊なお立場。しかも今回の件で、信頼に値する方々だとお見受けしました。

 ですが、おっしゃる事もその通りなのです。手前勝手な申し出ではあるのですが、この部屋での件は他言無用としていただけないでしょうか」


 そこで視線は、ハルカさんを中心に4人全員に向けられる。

 もっとも、この場で全員軟禁や暗殺をされる可能性を考えると、答えは決まっている。


「承知致しました。必要とあれば、『沈黙の約』もいたしましょう」


「ご配慮感謝いたします。また、重ねて感謝申し上げます。此度の件は、いずれ必ず報いることを我が名と神々に誓ってお約束させていただきます」



 思わぬ方向に話が向いたが、それで話の多くは終わり、やっと部屋に戻された。

 そうして案内された部屋は、最高級スイートといった感じの部屋だった。しかも1つの家のようになった間取りなので、事実上4人一緒に『帝国』の商館で一泊することとなった。


 その部屋は複数の部屋から構成されていて、リビングからそれぞれの部屋に入る作りになっていた。

 現実世界の超豪華スイートっぽい感じで、すごく偉い人とその従者をまとめて泊める場所のようだ。

 4人だけだと部屋が全然余ってるし、ハルカさんとボクっ娘の寝室など超豪華な天蓋付きの寝台がある。


「オレ、あっち含めてこんな豪華な部屋初めてだ」


「まあ普通そうだよね。ボクも色んな場所で厚遇されることはあるけど、ここまではないねー」


「国力と財力のなせる技だな。小国ではこうはいかない」


「私は、世話人を必要以外で部屋に入れないで済んだだけで助かったわ。もうボロがいつ出るかって、ハラハラものよ」


「それって、やっぱりオレが?」


 思わず自分を指差す。

 いつもの事とは言え、それしか考えられない。


「ショウは、問題発言さえなければって思ってたくらいよ。ボロは私。こんなの滅多にないもの。シズがいてくれて心強かったわ」


 予想外の言葉だ。けど、そんなハルカさんの言葉に、シズさんは軽く肩をすくめるだけだ。


「実質何もしてないがな。それより浮遊石の件は驚きだったな」


「なんだかさー、見ちゃいけないものを見た心境なんだけど」


「そうよね。想定していたのとは違った意味で、これからある程度『帝国』と関わる覚悟した方がいいかもね」


 続いて出た言葉のように、みんなが微妙な表情や雰囲気だ。

 オレが振りまいた厄介事なので、ちょっと後ろめたい。


「あの浮遊石って、何かのキーアイテムだったのかな?」


「私にも分からない。あの国が浮遊大陸にあるのと何か関わりがありそうだが、詮索しないのが賢者というものだろう」


「だよねー。それと『帝国』に関わりたくないなら、アクセルさんの国での諸々が終わったら、とりあえずノヴァに行って、そこから大陸の東に行けばいいんじゃないの?」


「そうだな。ショウの求める謎探しもあるしな」


 ボクっ娘とシズさんの言葉を受けて、ハルカさんが真剣な眼差しをオレたち3人に向けてきた。

 さっきまでの疲れた雰囲気はもう見られない。


「……その事なんだけど、世界各地の聖地巡礼、つまり『大巡礼』を考えてるの。それなら神殿の外で長期間うろついても文句言われないし、なんだかんだ言って大きな神殿には、探し物の手がかりがありそうじゃない」


「確かにそうかもな。ま、この件は別の場所でゆっくり話そう。それより、明日からの予定はどうする?」


 ハルカさんの言葉にシズさんがここで話すべきじゃないという意味を込めて返すと、ボクっ娘がテーブルに置いてある魔石、龍石を入れた袋を手にする。

 この石同士が触れ合うと、中の魔力同士が反応して「リン」と澄んだ音がするのでよく分かる。


「アイテムの売却は、あと魔石くらいになったからこの街だけで十分だし、買い物も済ませてアクセルさんのところに一旦戻ろうよ」


「それなら二手に分かれて、さっさと済ませるか?」


「うーん、街中で危険はないと思うけど、ボクはみんな一緒がいいと思うなー」


 ボクっ娘はもうくつろぎモードで、見るからに高級そうな長椅子のソファーにだらしなく寝そべりながら会話に加わっている。

 まるでダラけきった猫のようだ。

 それを見たオレを含めた3人も、徐々に姿勢を崩していく。


「買い物なら、神殿にも行きたいんだけど。ショウとシズ用の清浄化の指輪とか、あそこでしか手に入らないアイテムもあるし、聖杯がないところで神殿の雑事は済ませておきたいわ」


「買い物なら、冒険者ギルドにも行った方がいいんじゃないか? この辺りだと、ここにしかないし、あそこにしか置いてないアイテムも少なくないぞ」


「そういえば、未だにショウの登録もしてないわね。シズもする?」


 ハルカさんが思いついたとばかりに指を立てて、そして最初にオレ、次にシズさんへと視線を移す。


「神殿に属するから不要ってわけじゃないんだよな」


「アンダーグラウンドで生きるんじゃないなら、『ダブル』は冒険者ギルドに登録しとくことをお勧めするわ。預金管理とか、この世界で難しいこともしてくれるから便利だし」


「意外にやること多いね」


「なら、二日ほどかけましょう。明日は神殿とギルド、残りの時間で買い物とか。翌日は買い物とかが残っていたら手早く済ませて、その日のうちにアクセルの屋敷に戻りましょう」


「「はーい」」


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