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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第4部

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297「魔物の共食い?(1)」

 呆然と圧倒的破壊の様を眺めていると、火竜公女さんがテスタロッサで近づいて来た。


「少年! 私達はこれから東の集団を攻撃しますから、こっちの落ち穂拾いをお任せしてもよろしいかしら?」


「構いませんが、こっちはまだ余力ありますよ」


 オレの言葉に、火竜公女さんがゆっくりと首を横に振る。

 その表情は、やり過ぎるとまた評判等が面倒になると言っている。


「東の方はこの半分ですし、全体の魔力も弱いから問題ありませんわ。それにそこまで離れていませんから、ここから見ていてピンチなら駆けつけて下さいませ」


「了解です。お気をつけて!」


「そちらもね。じゃあねハルカ」


「大怪我したら、すぐに来て」


「言われずとも、負傷者を抱えて押し掛けますわ」


 そう言って飛び去って行った。

 と言う訳で、オレ達だけで森ごとプレスされた魔物の軍団の残骸の掃討だ。

 まずは目の前の惨状をグルっと一瞥。そして仲間達に向き直る。


「それじゃあ、みんなを一度集めて掃討に移ろう」


「ええ。慎重に行きましょう。ユーリちゃん」


「ハイ、みんな呼びますね。ライム、お願い」


 ライムの咆哮と翼を何度か上下に振る動きで、エルブルスの竜騎兵が集まる。合図を知っているボクっ娘も、警戒のため位置していた上空から降りて来る。

 そしてその背にいるシズさんの助言で、敵陣の後ろから一線になって魔物を追い立てる事にした。



 そして警戒などで散らばっていた家臣達が集まってくる。ガトウさんとホランさん、ニオさん達も揃い、オレの言葉を待っている。


「で、どうする坊主?」


 戦闘の主役じゃないホランさん達獣人のみんなはやや物足りなさそうで、ようやく出番と思っているみたいだ。

 オレも脳筋なので、前に立ちふさがって根こそぎに一網打尽といきたいところだけど、死に物狂いで逃げる相手は危険も大きい。

 逆に、後ろから追い立てる方が相手は浮き足立つし、それが空からドラゴンが追い立てるとなれば尚更だ。

 この辺の心理は、人も魔物も関係ない。


「あっちの端に並んで、後ろから生き残りを追い立てます。前を押さえて死に物狂いで抵抗されるのは避けたいですし、こっちは一人一人の腕は立ちますが、やっぱり数が少ないですから堅実にいきましょう」


「なるほど、理にかなってますね」


 ガトウさんが声だけでなく納得顔だ。

 ホランさんも、仕方ないかとやや不満ながらも頷いてくれた。

 それらみんなの顔を一巡して意思を確認する。


「じゃあ、かかりましょう!」


「オウっ!!」


 そしてオレ達は、疾風の騎士たちが地均しした幅200メートルほどの空間の、敵の一番後ろがいた辺りで一線に並ぶ。上空は竜騎兵が、地上は同乗してきた獣人達が並び掃討戦を開始する。

 竜騎兵は横並びの線の幅に対して数が多いので、左右両脇は2騎でペアになって左右に逃げる魔物を倒していく。

 そうすると、魚の群れを追い立てる集団漁にも思えてくる。


 空軍元帥から解放されたヴァイスだけは例外で、その都度ヴァイスの一撃か同乗しているシズさんの魔法で、強そうな魔物に対するスポット攻撃を加える。

 またヴァイスとボクっ娘は、持ち前の視力を活かして東の方の戦線の様子を見る役割もある。


 オレとハルカさんはライムから降りて、横並びの真ん中に並んで、悪魔など強い魔物を見つけたらそれを攻撃する姿勢で進む。

 射程距離の長い光槍陣なら、左右ほぼ全てが攻撃圏内だ。

 またクロも同じ様に掃討に参加させるが、主に魔石回収に回した。


 足下は半ば地獄絵図で、押し潰され、なぎ倒された歪んだ樹木の間に、沢山の魔物が地面にめり込んだりしている姿が延々と続く。

 そして魔物と魔獣、魔木の残骸からは、魔力の靄が上がっているので、いわゆる魔力のボーナスステージ状態だ。


 そうした中でもまだ動いている魔物もいるので、見つけ次第倒していく。

 そしてちょうど、衝撃波で既にボロボロの地龍にトドメをさしたところだった。



「掃討って言うより、単に魔力と魔石を集めてるみたいだな」


「ヴァイスだけでも凄かったけど、複数での攻撃は数以上に凄かったわね」


 思わず周辺の景色をぐるりと見渡してしまう。

 そう、この景色は疾風の騎士達が無理矢理作り出したのだ。


「だよな。あと、元帥と公女さんが言ってたけど、こいつら最初から統制があんまり取れてなかってやつだけど」


「不思議な話よね。魔物とはいえ、これだけの大軍で指揮官不在って」


 ハルカさんは信じられないと言う顔だ。

 まあ、そうだろう。


「うん。けどさ、実際魔将どころか上級悪魔もいなかったじゃないか」


「上級悪魔ねえ……昨日ショウが倒して以後見てないわね」


 彼女が何となく口にした言葉で、少しピンときてしまった。

 彼女も自分の言葉に答えを見つけたようだ。

 二人同時に、ここの敵が不甲斐ない理由に思い当たったのだ。


「……まさか、ねえ」


「だったとしたら、とんだ猪司令官だな」


 思わず顔を見合わせてしまう。

 そしてさらに別の考えが思い浮かぶ。それは彼女も同じだった。


「もしくは、あの竜騎兵達は、何が何でもあの子達を倒す必要があったのかも」


「情報漏洩ってやつか? それなら博士の館が見えた時点で作戦失敗で引き返すだろ」


「そうよね。やっぱり、あの子達が最初にこの軍団を率いた敵将を討ち取ったってことよね」


 と言う訳で、最初の「まさか」に戻る。

 だからオレも首を縦に振る。


「オレも今そう思った。司令官が前線視察とかしてたのかもな。それなら、怒り狂ったとかの話も結構辻褄合うよな」


「あの子達も、一番強そうなのを不意打ちで倒したとか言ってたものね」


「さしずめオレが館の前で倒したのが、副将か腹心ってところだな」


「最初に気づかないまま倒したのが実はラスボスでしたって、ゲームやお話だったらクソ展開ってやつね」


 そこで二人して再び軽く見つめ合ってしまう。

 そしてお互いに、ビミョーな表情を浮かべる。

 

「なんか今更みんなには言い出せないし、黙っておこうか」


「そうね。このペシャンコの中に、それらしいヤツが居たって報告しておきましょう」


 ハルカさんの言う通り、オーガより一回り大きい下級悪魔すら、地面にめり込んでペシャンコになっていたりもした。

 そいつは自己再生能力のお陰でで徐々に復活しつつあったが、まだ身動き出来ないので苦もなくトドメをさしておく。

 もう戦闘ですらない。


 偶然地面の柔らかいところにいたヤツなどは幸運なのだろうが、起き上がったら地獄が広がっていたわけだから、魔物じゃなかったら発狂ものだろう。

 こっちはそうして生き残った連中を、横並びで機械的に倒していく。

 なんだか、どこかで見た戦争映画みたいに、某ネズミのテーマソングをみんなで歌いながら行進したいくらいだ。


 時折上空を見てヴァイスに合図を送ってみるが、元帥達の方も一方的展開で、ここと変わらない。

 さっき凄い音が立て続けに響いて来たが、ソニックボミングが禁忌にされるのだと嫌でも納得させられる。

 魔物相手だからと許してもらえるものなのだろうかと、心配になってくるほどだ。


 そうして雑多な事を考えられるほどのペースで掃討を行っていると、あと2、300メートルほどで樹木をなぎ倒した場所が終わりを告げる。

 その先は黒々とした広がっていた。

 先に進むべきか悩むところだ。

 しかも、流石にこれで終わりではなかった。


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