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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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277「悪魔の殲滅(1)」

「卑怯者め!」


「先に不意打ちしたのはそっちだろ!」


「まだ言うか! やってしまえっ!」


 売り言葉に買い言葉に近いが、ゼノはオレがゼノにかからなかったことで、部下にオレの相手をさせるようだ。

 この数の差よりも、ゼノが攻撃してこない方がありがたい。

 言葉通り多少はお行儀がいいらしい。

 それとも、自身が手を出さなくても十分と思っているんだろう。


 そして十分なのは間違いなさそうだった。

 1対1なら大した事ないのだけど、下級悪魔が最低3体に有象無象の魔物の群れは簡単な相手ではない。

 下級悪魔ではなくても、Bランクくらいの魔力を持つ魔物も、少なくない数が含まれている。


 しかもオーガやゴブリンの類も、大抵はいい装備をつけているので、それだけ脅威は高くなっている。

 こん棒や石斧が鉄の武器になっているだけで、ランク一つ上げても良いくらいだと言う。

 実際目の前にしても、オーガより大柄な巨人の攻撃は当たるとタダで済みそうに無いと実感させられる。

 加えて集団としての全体の動きも良さそうで、連中の精鋭部隊なのではないかという嫌な分析をしてしまいそうだ。


 ただし幸いここは森の中で、方々に木々があるので敵側が一人に対して一斉にかかり辛い。

 包囲や隊列は以ての外。上手くすれば、こちらは木を背後にして目の前の敵だけに対処できる。

 けど、たまに樹木ごと吹き飛ばそうとする厳つい奴もいるので、その辺の注意は必要だ。

 逆に、デカブツはそのデカイ図体自体を瞬間的に盾に使う事ができる。


 また弓を持つ相手が一定数いるので、そいつとオレとオレが相手にする魔物が一線に並ぶように心がける。

 もちろんだけど、樹木の影も利用する。


 魔物の中には魔法を使う者もいるが、範囲攻撃や一線攻撃系の魔法は同じように対処する。

 一番厄介でお手軽なマジックミサイルだけは対処不可能に近いが、それでも余裕があれば剣に魔力相殺を乗せて打ち落す。


 それでも数が多すぎて対処しきれないが、2本程度しか飛ばせない奴のマジックミサイルは大した威力がないので、こちらの魔力量が豊富なうちは当たるに任せた。

 オレの体内の魔力自体が防壁と防御をしてくれるので、防御魔法と合わせればちょっとした衝撃以外感じることもない。


 もっとも、他にも炎の弾、かまいたちなどセカンド・スペル程度の色々な魔法も次々に飛んでくるので、魔力相殺も回避も全然追いつかない。

 ハルカさんにかけてもらっていた防壁魔法と、自前の魔力で耐えるのも限界がある。


 それでも可能な限り1対1を心がけて、できるだけ即座に移動しつつ、あちらで1体、こちらで2体まとめてというイメージで、無作為に動きつつ魔物を切り倒していく。

 今のオレの技量とパワーならオーガクラスでも一刀で余裕で倒せるが、1体1体の相手ではキリがない。


 それでも複数の敵から同時攻撃を受けることが多いので、回避と剣で対処が無理な場合は、鎧の硬い部分に当てるようにする。

 それにゴブリン程度なら、もはや当てられてもちょっと衝撃がある程度なので、相手が少数だったら無視する。


 それに今のオレなら、初戦で殺されかけたゴブリン程度なら、強く足蹴にするだけで簡単に戦闘不能に追い込める。

 マジ蹴りして太い木に叩きつけたら、それで倒せたゴブリンもいたほどだ。

 もはやこっちが化け物だ。

 さらにゴブリン程度なら、囲まれても横凪の一閃で複数を倒すこともできる。


 ただ、思った以上に楽な戦いではなさそうだった。




 そうして数分戦っていただろうが、さすがに相手の数が多すぎた。

 その上、下級悪魔やオーガなど強めの敵を後回しにしたツケが回ってきて、徐々に逃げ場を無くしていった。

 特に、セカンド・スペルの魔法を使う魔物と下級悪魔が厄介だ。


 しかも、時間とともに敵の攻撃がヒットする数が増えていく。こっちの回避能力が落ちてきているのだ。

 致命傷はまだないが、かすり傷を超える軽傷が各所に増えている。出血も各所でしているようだ。


 こう言う時、痛みを感じない体は便利だ。

 それに無理に動かしても、後で元通りにしてもらえると思えば、無茶を躊躇なく続けられるのも有難い。気にしないといけないのは、大きな一撃と自身の大量出血くらいだ。

 それでも劣勢なのは一目瞭然で、ゼノを見る余裕はないが薄ら笑いでも浮かべているのではないだろうか。


 変化があったのは、悠里の「キャっ!」とばかりの悲鳴を聞いた瞬間だった。

 ゼノは女には手を出さないとか言っていたくせに、大嘘つきだったという事だ。さすが悪魔なのだと思うしかない。

 しかし体の方は、何かを考えるよりも先に動いた。



「この悪魔野郎っ!」


 囲んでいた魔物どもを強引に突破。

 その際2回ほど魔物どもの攻撃が体にヒットしたが、気にせず飛ぶように悠里の元に駆けつける。

 そしてその勢いのまま悠里の前にいたごつい魔物を後ろから串刺しにし、そのまま横薙ぎで胴を切り裂き、さらに蹴飛ばして目の前から排除する。

 倒したのはゼノの配下の下級悪魔の一体だったが、そんなのはどうでもいい。


「大丈夫か!」


「う、うん」


 視界を遮っていたデカブツを排除した先に、悠里が尻餅をついた状態で倒れていた。

 幸いかすり傷程度で、大怪我などは無さそうだ。

 とはいえ、状況は全く良くない。


 周りは魔物だらけ。どうやら、オレを抑え込めそうなので、ライムの方に向かおうとした一団がいたようだ。

 しかもオレが主戦場から抜けてきたので、オレの相手をしていた団体様までがこちらに来つつある。


「やばいな。逃げろ悠里」


「えっ、お兄ちゃんは?」


「足止めする。それがハルカさんとの約束だしな」


「でも」


「腰が抜けたやつに用はない。早く逃げろ!」


「抜けてないっての!」


 今の言葉で少し元気を取り戻したようだけど、悠里はまだ精神的に立ち直れていないので、オレが壁になって目の前の敵、魔物達を一身に受ける。

 一方的にやられているわけではないが、1体倒す間に複数回の攻撃を受けている有様だ。

 しかも、ダークエルフっぽい下級悪魔の音頭取りで、マジックミサイルの雨が降り注いできた。


 その大半は魔力相殺で撃ち落としたが、無傷とはいかなかった。

 しかもそのすぐ後に、こっちの隙を突くように弓矢の雨が降り注ぐ。こちらも1本、2本ではなく10本近い数なので全ては防ぎようがない。

 致命傷を避けるのが精一杯。このままでは、弁慶の立ち往生になれそうだ。


「お兄ちゃん!」


 本日何度目かの悠里の悲鳴のような声がして、オレを襲おうとしていたオーガが一太刀で切り倒される。

 さっきまで悲鳴をあげていたが、腰は抜けてなかったらしい。それに悠里もなかなかの腕前だ。

 けどこの数は無理だろう。


「悠里、サンキュ。けど後はオレが食い止める。ライムのとこまで下がれ!」


「お兄ちゃんも一緒に!」


「そうしたら、全員をライムのとこに連れて行ってしまうだろ」


「けど、それじゃあ、お兄ちゃんが!」


 悠里は半狂乱一歩手前だけど、オレには静かな確信があった。

 これだけ時間を稼いだのだ。ハルカさんが何かしてくれる筈だ、と。


「ほう、お前たちは兄妹だったか。せめてもの情けだ、苦しまず仲良く地獄とやらに送ってやろう」


「そのセリフ、後半部分だけそっくり返してやるよ」


 自らの剣を抜き放ったゼノに対して、そう言い返したオレには確信が確実なものとして感じられていた。


 後ろの方から、よく見知った気配を持つ魔力の増大を感じだからだ。


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