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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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262「全体会議(2)」

 食事会場の中心は円卓が組まれ、幹部が1人座り、その後ろに1〜2人の副官みたいな感じの人達が立つ。


 評議会代表のジン議員、増援部隊に属する『ダブル』の冒険者の責任者の一人だったリンさん。

 あと、少し縮こまってレイ博士も座っていた。レイ博士の後ろには、ロリッ娘猫耳メイドのスミレさんも場違いな姿を見せている。

 ただ、オレが知っているのはこれだけだ。


 会議では、エルブルス辺境伯ということでオレが椅子に座り、その後ろにはハルカさんとシズさんが立っている。

 オレ達には竜人という珍しい種族がいるが、ノヴァには獣人やドワーフも市民軍には多いので、シズさんの姿も違和感はない。


 円卓に着く他の人でなんとなく分かるのは、砦にいた今回の総責任者、いや、司令官らしい人だ。

 ごつい身体にごつい鎧を着た戦士職で、見た目は若い筈なのに妙に貫禄のある男の人だった。


 ちょっと前に話していたように、年を取らなくなったSランク級の人なのかもしれない。

 遠目でも威圧感にも似た雰囲気を発散していて、強キャラという感想が最初に頭に浮かぶ。


 その隣には、いかにも切れ者といった風貌のお兄さんが座っている。

 イケメンという程ではないがオシャレな人で、戦場でも撫で付けたような髪型を維持していて、そのおかげで見えている広い額が特徴的だ。


 どちらも同じ服装というより自衛隊が着るような深めの草緑色の軍服を着込んでいるが、ごつい人が軍人らしいのに、こちらはお役人っぽくもある。

 ごつい人が総司令官のゲンブ将軍、オシャレな人が参謀長のニシ大佐だ。


 ジン議員も将軍だけど、こちらはどちらかというと前線ではなく後方で色々手はずを整える政治寄りの人で、軍での階級とかもこの二人が高いらしい。


 あとは『空軍元帥』と『火竜公女』も、飛行場で見たそれぞれの乗騎からすぐに分かった。

 空軍元帥は、オレの予想に大きく反してガタイのでかいデブのおっさん、見た目40歳くらいの男性。

 髭を生やした迫力のある顔だちで、貫禄だけは確かに元帥だ。

 それよりも、魔力が多いと年をとらなくなるというが、この人は例外なのだろうかという疑問が軽く頭をよぎる。

 加えて、この人がボクっ娘と同じく巨鷲を自在に操る姿は想像し難い。


 火竜公女は、公女の二つ名に相応しく上品な美人さんだ。

 一見穏やかだけど、きっと戦闘中とかはすごいに違いないと思わせる風格を漂わせている。

 火竜公女の名は髪からも来ているのか、燃えるような赤いロングヘアが印象的だ。


 それだけでなく、総数3000名を率いる軍隊の幹部なので、他にも沢山の人が参加していた。こっちの人も普通に座っているし、幹部にはドワーフや獣人もいる。

 他にも、ちっこい少女のような人が軍服を完璧に着こなして座っていたり、老齢といえる年齢の歴戦な戦士な感じの人が居たりと、ヴァリエーション豊富だ。


 なお、事前に簡単に聞いたところでは、ノヴァの軍隊の組織は現実世界の自衛隊にできるだけ似せていあるらしい。

 というのも、最初にノヴァの軍を作ったのが自衛隊の人もしくはその関係者だったからだ。

 この辺りは、「S」という特殊部隊と同じだ。


 そして幹部と呼ばれる人たちのうち、大隊という単位以上を率いる幹部と呼ばれる指揮官は、こういう会議には全員参加する。

 冒険者ギルドは軍隊組織ではないが、こういう場合は契約に従ってノヴァ義勇兵という扱いになり、大隊の代わりに百人長ケントゥリオという位とその名の通りの戦闘単位が設けられれる。


 冒険者ギルドの増援部隊を率いているリンさんも、百人長の一人だ。

 冒険者ギルドは増援部隊に過半が参加していて、リンさん以外に4人の百人長がいた。


 また冒険者ギルドには、Aランクかそれ以上の者ばかりを集めた「S」に匹敵する精鋭パーティーが幾つか、遊撃や予備の独立部隊として存在している。

 これは勝手な連中を何とか戦争に参加させる方便であると同時に、強い個体が出てきた時に対処する為でもある。

 そしてそうした人達も会議に参加して、独特の雰囲気を発散させている。



 そして会議に参加する幹部の総数は、オレを含めて20名以上になる。

 その中でも中心なのが、将軍職のジン議員と砦の指揮官のゲンブ将軍だ。前線と後方の責任者、と言った役回りなのだろう。

 ただし外野のオレ達は軽く紹介されただけで、ノヴァの人たちの紹介はされていないので、顔を覚えても名前が分からずという状態に置かれていた。


 そして幹部の一人の「彼らは来援したばかりで、正確な戦力見積もりも算定出来ていない」という言葉で、ほぼ外野に置かれることになった。

 ジン議員がその言葉をやんわりと否定してくれたが、大勢に変化はなかった。

 要するにオレ達は、後から現れて手柄を横取りしたよそ者、という事なのだろう。


 それなり以上に存在感を示せたが、少なくとも『ダブル』達に対しては悪目立ちしてしまったようだ。

 これが学校のクラス内だったら、ハブられてもおかしくない状況だろう。


 実際、発言をするもしくはさせてもらう機会はなく、オレ達は半ば置き去りにされたまま会議が進み、そして閉幕した。


 全体の作戦会議の中で、明日の戦いでオレ達に割り振られた役割は、不測の事態に備えた予備兵力としの後方待機だった。

 普通の国なら竜騎兵の一団を予備兵力とか有り得ないそうだけど、これは妥協の産物に近かった。


 空軍の空挺元帥がかなり強く指揮下に欲しがったのが原因の一つで、ジン議員の説得と他の反対もあって空軍配下にはならなかった末の結果だった。


「空を飛ぶものは、空軍総指揮官でもある私の指揮下にあるべきだ」


「彼らはエルブルス辺境伯領の警備隊で、その上他との連携の訓練もしていない。独立部隊として、遊撃部隊とするのが常道だ」


 そこで、それまで存在感すら消していたレイ博士が「それなら、第13独立部隊という名はどうだろう」と突然提案し、ベテランの『ダブル』の何名かがそれに妙に強い興味を向けていた。

 どうやらオタクマインドに引っかかるキーワードらしい。

 しかし、二人の舌戦の前に軽く無視されていた。


「レナ大尉は我々との共同訓練をしている。十分に連携可能だ」


「だが元帥は、竜人を使ったことがない。知らずに彼らの流儀や禁忌に触れたらどうする? ノヴァトキオの重責を担う者の一人として責任が取れるのかな?」


「そ、それは……」


「それにね、あなたの指揮下に置いたところで、彼らが今日挙げた戦果は、これっぽっちも元帥のものにはならないわよ。私達が挙げた戦果と一緒でね」


 ジン議員と空軍元帥のやり取りに、火竜公女が優雅な口調で辛辣な一言を叩きつけた。

 そして周囲から忍笑いが漏れたので、どうやら空軍元帥は戦果を独り占めしたいタイプの人なのだろう。

 そしてジン議員の正論と火竜公女の一言でオレ達の扱いは決まった。


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