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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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248「空からの殲滅戦(2)」

「うわーっ、圧倒的。レナ、ちょー強いんだ」


 空中戦を眺めていた悠里が、半ば呆然と上空を見つめる。


「言っただろ。さあ、次はこっちの番だ」


「言ってろ、ギャラリーのくせに。行きますよシズさん!」


「ああ、お互いタイミングに注意しよう」


「ハイっ!」


 オレの言葉に気を取り直した悠里は、寸前に迫った地上攻撃の準備に入る。

 二手に分かれた雷龍と炎龍は、魔物の群れを包囲するように2方向から迫り、そして今まで何度もしてきたのであろう攻撃を、タイミングよく実施する。

 悠里のライムとシズさんの合体攻撃のタイミングも、即席にしてはよくできていた。


 地表は、超低空で覆いかぶさるように降り立ってきたドラゴンが吹いた炎で焼き払われ、広範囲の放電で動きを奪われ、炎の爆発で吹き飛ばされていった。

 魔物の一部は弓矢や手槍、さらにはマジックミサイルを放ってきたが、空飛ぶ戦車とか生きた戦闘ヘリなどと『ダブル』が呼ぶドラゴンの硬い鱗を前にして、どれもほとんど効果はない。

 最低でも魔法の武器でないと、飛行中の飛龍の相手にはならない。


 この場で唯一有効なマジックミサイルも、魔力の保持量が違ったり放つ者が高い技量を持っていないと、かなりしょぼい効果しかない。数もそうだけど、1発当たりの威力が低すぎるのだ。

 目の間の状況が、そのことを雄弁に物語る。


 魔物に対してこちらは、容赦なく攻撃を続行する。何しろ襲ってきたのだ、遠慮する必要もない。

 同じ攻撃は方向を90度変えてもう一度実施され、たった2撃で各種ゴブリンやオーガ、魔狼などの数百体はいたと思われる魔物の群れ大きく数を減らし、大混乱になっていた。


 その魔物の集団の中心には、少し高めの魔力の持ち主も何体か居たようだけど、ドラゴンブレスの十字砲火と爆裂の魔法に薙ぎ倒されたようだ。

 戦果確認の3度目の通過の時には、もはやその魔力の反応も失せていた。


 しかも攻撃はこれだけではない。

 今度は3騎の竜騎兵が、空から襲いかかり始める。

 最初は、竜騎士と同乗していた兵士たちが、一方的に手槍を投げ弓を射かけ、無防備な頭上からすでに半減以下の敵を討ち減らしていった。


 大胆な者は、地上をかすめるように飛んで、飛龍が直に魔物を吹き飛ばしたり、掴んで空中に放り投げたりしていく。

 体格が違いすぎるので、体長が2メートルを超えるオーガでも簡単に吹き飛んだ。


 何しろトン単位の全身装甲で覆われた飛行生物が突撃するのだから、これも一種の質量攻撃だ。

 時速100キロ以上で頑丈なダンプカーやトレーラーが突っ込んでくると思えば、少しは理解できるだろう。

 吹き飛ぶ魔物の様は、まさにそんな感じだ。


 その間ブレス担当の2騎は周囲の警戒をしつつ、シズさんがマジックミサイルを時折打ちかけていく。

 しばらくするとヴァイスも降下してきて、ボクっ娘が弓を、ハルカさんがマジックミサイルを投射して、後方で逃げ散り始めた敵を薙ぎ倒していった。

 もはや一方的な残敵掃討でしかない。



「オレの出番、全然ないなー」


「あったりまえだろ。まあ、私も似たようなもんだけど」


「悠里はライムを操ったり魔力供給したりしてるだろ。けど、もう格闘戦の必要はないだろ」


「そうだな。獣人の戦士たちも戦場に突入しているし、あとは残敵掃討だけだろう」


 敵を探る魔法を使っているシズさんも同意見の様だ。


「ですね。周囲の警戒だけでしときます」


「ああ。油断したらロクな事がないからな」


 そうして地表を見落としがないように観察していると、一箇所不自然な動きを見つけた。

 なるべく目立たないように動いているが、明らかに戦場から離脱する連中だ。


「悠里、低空を右向きに行ってくれ。あっちの方、逃げようとしてるヤツらだ」


 言いつつ腕も使って指差す。


「どこ? あ、あれか。デカイのはオーガかな? どうすんの? もう、ライムのブレスは打ち止めなんだけど。爪か牙で切り裂こうか?」


「できれば10メートルくらいの高さで、ゆっくり目に通過してくれ。あいつらの頭の上に降りる」


「ハァ? そんな事したら死ぬっての!」


 悠里が後ろを振り向く。顔には驚きと、多分少しの懸念がある。そんなに信頼ないんだろうか。


「大丈夫だって。ヴァイスで何回もしてる。早く!」


「わ、分かった」


「私は魔法の矢を射掛けよう」


「頼んます」


 その言葉の数秒後、絶妙とは言い難いが十分な精度で目標に接近したところで、すでに鞍の上で中腰になっていたので駆けるように飛び降りる。

 そして抜いていた剣を大きく縦に振りかぶって、着地寸前にそのまま大きく振り下ろした。


 寸前で目標にした敵も気づき、右手に持っていた剣を構えたが、構わず力任せにたたっ斬りにいく。

 念のため、少しだけ魔力相殺も乗せておくのも忘れない。これで軽い防御魔法程度なら、無効化する事もできる。


(この動きと見た目は、多分下級悪魔だな)


 そう思いつつ振り下ろすと、魔物の持つ剣を半ばで真っ二つにして、そのまま胴体を左肩から股にかけて斬り下ろしていく。

 剣の切れ味と高い空から飛び降りた大きな運動エネルギーもあって、文字通りの真っ二つだ。


 こっちに来た頃だったら、スローモーションで捉えた切られていく様と切る時の感触で、豆腐メンタルをやられていた事だろう。

 しかし今では、派手に撒き散らされる黒い血と諸々の何かの破片を浴びても、少なくともその場で動じる事は無くなっていた。

 生き物ではなく魔物という事もあるが、意思を持つ存在を滅ぼす事にも感情が揺さぶられる事はもうない。


 また、オレが下級悪魔を切り裂くのとほぼ同時に、シズさんが放った7本のマジックミサイルが、周囲にいた他の魔物たちを射抜いていく。

 オーガ、上位ゴブリン、ホブゴブリンといったところだけど、オーガ以外は一撃だ。


 それでも逃走する魔物が周辺にいたので、オレも着地してすぐに次の敵にかかり、目に付いた魔物を次々に斬り伏せていった。

 ゴブリンの上位種程度なら、数体が束になっても今のオレの敵ではない。オーガでも、大勢でかかってこない限り苦にもならない。

 こうして過去に戦った相手と再び戦うと、自分が多少は強くなったのだと実感できる。


 さらにその間、シズさんのマジックミサイルが、オレから少し遠い魔物を撃ち抜いていく。

 そして周囲に動くものがないかを確認したところで、真っ二つにした悪魔まで戻り、心臓の側にある魔石を剣を使って荒っぽく取り出しておく。


 それが終わる頃に、北砦の周囲にドラゴンたちとヴァイスが降り立ったので、オレも向かうこととした。


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