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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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235「新たな領主?(1)」

 エルブルス領、シーナの街の飛行場に降り立つと、迎えの人じゃなくて、人と龍が合わさったような人種の竜人とでも呼ぶべき人達がいっぱい来ていた。


 竜人以外にも、飛龍や翼竜がそこかしこに降り立ってきている。地面を移動して来た地龍、騎龍も少なく無い数がいる。

 中には背に竜人を乗せた竜騎兵、竜人やそれ以外の人種の人が連れている翼のない龍も各種いるが、多くは勝手に集まったドラゴンたちだ。

 それでいて危険は感じなかった。


 集まっている人達は人型のドラゴンだけでなく、ドワーフらしいずんぐりむっくりの筋肉マッチョや、色々なタイプの獣人もいる。魔力持ちも、人と比べるとかなり多い。

 まるで魔物の国に来たみたいだ。


 そしてそう思ったように、人の姿はゼロじゃないにしてもかなり少ない。全体の一割いるかどうかだ。

 街まで誘導した竜騎兵は人かもしれないが、獣人や竜人の人に近いタイプかもしれない。


「うへっー。ボクらにとっては、やっぱりアウェーだよ」


 ボクっ娘が少し引き気味で、こちらに話しかけてきた。

 言われてみれば、ドラゴンだらけの中に鷲が一体だけというのは明らかに浮いている。

 アウェーと言ったが、ハルカさんが乗っていなかったら、友好的とはいかなかったと思えるほどだ。

 

「大丈夫よ。私が無礼なことは絶対にさせないから」


「ボクはともかく、ヴァイスにはお願いね」


 そう答えるボクっ娘の表情は真剣だ。

 敵対した時はトカゲ呼ばわりしているくらいだから、空のライバルと言ったところなのだろう。


「連れて来たのは私だから、みんな私の友人でここの客人よ」


「だが、領民に人はあまりいないようだな」


「そもそも人があまり住む領域じゃないもの」


「けど、ファンタジー感はノヴァの街より強いよな。ちょっとワクワクする」


「竜人は気にならない?」


 意外そうにハルカさんが顔ごと問いかけてきた。


「ここから見る限りは全然。あ、でも、言葉とか通じるのか?」


「プッ。心配事がそれ? 主な者は同じ言葉が使えるから安心して」


 オレの物言いは、何かハルカさんの笑いの琴線に触れたらしい。

 何が可笑しいのだろう?

 なんて思っているとヴァイスが完全に降り立ち、周りに人じゃない人たちが集まってくる。すぐ側には、誘導してきた竜騎兵のドラゴンも降り立っている。

 大きな生き物達は、視界の邪魔にならないようにちゃんと外周に陣取っている。


 そして好奇の視線を遠慮なく注いでくる人だかりに囲まれるも、ハルカさんは特に気負う風はない。


「ゴメンだけど、シズは先に降りて私を迎えてもらえる?」


「心得た」


「オレは?」


「私の後でいいわ。そのまま、私の一歩後ろに付いていて」


「ボクはしばらくこのままでいいよね」


「騎手ですものね。じゃあ、それっぽくよろしく」


 ハルカさんの言葉が終わると、まずはシズさんが降り立って主人を迎える礼を取る。そこにハルカさんがスマートに降り立つ。

 一拍子おいてオレも続く。


 そうしてハルカさんがゆっくりと周囲を見渡すと、先導してきた竜騎兵2人を脇に、後ろにも文官らしい従者を従えた上等そうな服を着た竜人が、割れた人だかりの間を歩いてくる。

 そして全員が、跪いて手を胸の前で合わせる礼を取る。


「お帰りなさいませ、人の領主様」


「長く留守にしました、バートル。留守をよく守ってくれていた様ですね。礼を申し上げます」


「もったいなきお言葉。それにしても、よくツガイを見つけ戻ってきてくださいました。皆を代表して、お喜び申し上げます」


「いずれ連れ帰るという約束でしたからね」


(ペア? ツガイって何の事? オレを見て言った様に思うんだけど?)


 視線を向けてもハルカさんは、バートルという名の竜人としばらく社交的な話を続けている。

 そしてシズさんとボクっ娘は「大切な友人なので、決して失礼のないように」と紹介しているが、オレは含まれていなかった。

 つまり、友人ではなくツガイというカテゴリーに含まれるらしい。


 その上ツガイという言葉が出てから、全身を鎧で包んだ竜騎兵の竜騎士がスッゲー見てくる。

 それまでは視線と態度がどこかおかしく、ぶっちゃけ挙動不審一歩手前だったのが、ツガイの言葉が出てから正気に戻ったようになった。

 そしてオレに、兜の隙間から強い視線を注ぎ込むようになっている。


(なんかスッゲー見てるけど、オレは何も聞いてないっての)


 思わず首を横に振って何も知らない事を伝えたくなるが、それくらいでは何も通じないとも思ったので、とにかく平静である事を心がけた。

 何しろハルカさんにとって公の場なので、領民とか臣下を前に恥をかかせるわけにいかない事くらい十分理解している。

 人以外の種族の上に立つのなら尚更だろう。


 オレにとって助かったのは、とにかく見られる以上はなかった事だ。

 それに「それでは館に」という竜人のおかげで、早々に屋内に移動できた事だろう。


 それに集まってきた群衆も、領主のハルカさんにそれほど興味はないのか、事情が分かるとこっちが移動するより早く立ち去っていった。

 野生と思っていたドラゴンやワイバーンも同様で、人型ではないドラゴン達もここでは単なる住人なのかもしれない。


(あのドラゴン達も言葉を話せるのかな?)



 そうして飛行場代わりの広場から移動したのは、見るからに古い石造りの建物をリフォームした小さな城だ。

 おとぎ話に出てきそうで、海に面した小さな高台の上にそびえ立っている。

 城の中は新しい建物が増築されていて、過ごしやすそうな2階建ての館になっている。


 しかし、辺境伯という大仰な称号に相応しい館かと言われると、少しばかり慎ましく思える。お貴族様を連想させるようなキラッキラな感じはない。

 ただ、人より一回り以上大柄な竜人にも対応しているのだろうか、全体的に広く大きく作ってある。


(このサイズだと、ドワーフは使い勝手が悪いだろうなあ。異種族が同じ場所で暮らすって大変そう)


 そんな事を思いっている間に、屋敷に通される。

 そして終始、オレは友人というより領主のハルカさんと同じか準じる扱いを受けた。

 貴人に対する応対やもてなし方は人と同じ様なので、まず間違い無いだろう。

 ここではオレは何故か偉い人のようだった。


 最初に案内されたのは広い客間で、壁にもなっている城壁が海に面しているので見晴らしがとてもいい。

 この部屋も作りは大きく、竜人に合わせたものだった。

 当然と言うべきか、家具調度品も竜人に合わせてある。もっとも、調度品や飾りはともかく家具は少ない。恒久的な魔法の明かりを用いた照明器具くらいだ。


 そして竜人には大きな尻尾と翼があるので、椅子に座るという習慣は持ち合わせていないのだろう。

 部屋全体には、ヨーロピアンというよりはオリエンタルな模様の分厚いじゅうたんが敷かれているだけだ。

 さらにそれぞれの席になる場所に、大きなクッションがそれぞれ置かれている。


 特に段差はないので、偉い人が上座に座るということもないらしく、円卓上にクッションが置かれているのも、あまりオクシデント風ではない。

 よく見れば、じゅうたんも大きな円が描かれていて、それは何かの魔法陣のようだった。


 ただし今は、オレ達4人以外に一緒に来たバートルという名の竜人と、先に部屋に入っていたハリウッド風ドワーフが一人居るだけだ。

 ただし大きな窓の外からは、1体の大きなドラゴンが覗き込んでいる。

 そのドラゴンのいる場所は隣の聖堂のような大きな空間で、こういう時の為のものらしい。


 竜人は、ゆったりとした古代の中東風とでも言えばいいのか、オリエンタルテイストな服を着ていて、ドワーフは現代世界風の作業着なので、別の意味でファンタジー感が出ているかもしれない。


(窓の外にドラゴンって、この場合一体と一人のどっちで数えるんだろ)


 下らないことをふと思ったが、ハルカさんが視線ではなく首をそれぞれに巡らせることで全員に視線を向け、小さく息を吸い込むと話が始まった。


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