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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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228「魔の大樹海全体の戦況(1)」

 スミレさんの言葉に対して、ジン議員が小さく頷き視線で言葉を促す。

 人を使うのに慣れた仕草だ。

 視線につられたレイ博士が「頼む」とだけ口にする。


「では、新たな主人様方が到達されるまで観測した戦闘内容を、お話させていただきます」


 と言って、数分間レポートを行う。

 詳細すぎてかえって分かり辛いほどだけど、オレ達の話よりずっと参考にできそうだ。

 話を聞く限り、Bランクくらいの魔力持ちだと、1体に付き4、5人はいないと防ぐのも厳しそうだ。



「以上になります」


「やはり最低Aランクはないと、単独で相手をするのは無理だな」


 ジン議員の言葉は、再確認と言った程度だ。


「Aランクでも、安全マージン取るなら複数必要でしょう。炎を吐く地龍よ。それを一人で一撃で倒すとか、ハルカ達、その魔力総量といいSランクあるわよね」


「魔力総量だけなら多分ね。けど、急に強くなったせいで実感ないのよ。確かに前より動けるようになっているし、魔法もどんどん出せるんだけど」


「よく魔人化しなかったものだな」


「『魔女の亡霊』との戦いは、後から考えたらかなりヤバかったと思うわ。閉鎖空間で、あの魔力濃度だったし」


 今になって、かなり冷や汗ものな事をハルカさんが口にする。

 確かに『魔女の亡霊』は、見た目で魔人状態ぽかったし、魔力量だけなら未だにあれ以上には出会っていない。

 先日の悪魔ゼノがロードなら、『魔女の亡霊』はキングもしくはクィーン、まさに魔王級だろう。


「なるほど。他の方も、実力はハルカ君と同じくらいと思って良いのかな」


「シズはデイブの魔法も使いこなすし、破壊力抜群よ」


「そういえば、ハーケンから『熱核陣』の使用報告があったな。君がそうなのか」


「ああ、それなりに使えると思ってくれていい」


「旧ノール王国での噂もある。期待させていただくよ」


 美形同士がクールに笑い合うと、何かドラマでも見ているようだ。

 凡人な自分との差に、溜息の一つでもつきたくなる。


「オレはあんまり期待しないでください。まだ試用期間中だし」


 みんなと同列とか過大評価されたくないので自分から言ったが、二人の来客は「えっ?」と疑問の表情が出ている。


「その魔力総量で試用期間中? 本当か?」


 あれ? 意外に驚かれてる。ここはちゃんと言っておくべきだろう。


「はい。偶然魔力を稼げただけです。けど、技量が全然追いついてなくて、力押しばっかりだからアンバランスに悩まされてます」


「ハルカ?」


「事実よ。私が最初に拾って……」


「そのまま1ヶ月以上ブートキャンプしながら連れ回した挙句、大物を力技で次々に撃破して回ってるんだよ。ヤバいよね」


「レナ、虐めないで。やりすぎは反省してるから」


(度々突っ込まれてるなあ。まあ、困り顔も可愛いからいいけど)


「それに、試用期間中は魔力総量が増えやすいし、鉄は熱いうちに打てとも言うでしょう」


 ハルカさんの言葉に、二人とも完全には納得していないようだ。

 どう説明しようかとハルカさんが少し考えていると、シズさんが口を開く。


「そうだな。しかし、レナの言葉は要約になっている。普通、ここまで育つのに、最低でも2、3年はかかるし、たいていは無茶した挙句にドロップアウトがオチだ」


「あら、シズさんは『ダブル』の事にお詳しいんですね」


「ああ。何年か前になるが、別の者達と行動を共にしていた事があった」


「それなら、私達の流儀ややり方を説明なくてもいいかしら?」


「ああ、問題ない。それより、全般的な状況の概要と私たちの担当予定を知りたいのだが?」


 シズさんがそう問うと、二人の来客は顔を見合わせて思案している。

 そして数秒後、ジン議員が口を開いた。


「概要はこの場でも話せるが、皆さんの配属や担当場所については再考させて欲しい。ここに来るまでは、ルカ君には野戦病院に居てもらい、皆さんはそこの護衛程度にしか考えていなかった」


「それで十分なんだけど?」


 ハルカさんのツッコミと視線がジン議員に突き刺さるが、当人は涼しい顔だ。


「しかしSランク級の戦闘職と魔法職を後方で遊ばせるほど、兵力は潤沢ではない」


「ボクは空軍の人と一緒?」


「そうしてもらえると助かる。制空権の安定した確保は重要だからね」


「だってさ」


「従者を前に出して、私だけ後ろに居る訳にいかないでしょう、って言わせる気ね」


 リンさんが、もはや言葉もなく頭を下げて、その前に両手をやってハルカさんを拝んでいる。大抵はクールを装っているが、これがこの人の素なのだろう。

 何度目かのハルカさんの溜息だけど、もうわざとでしかない。


「で、こっちの頭数と、向こうとの戦力はどのくらい? ざっくりでもいいから教えといて」


「こちらは『ダブル』が700。ランクの構成比はB以上が主力になるし、私を含めてSランクも数名参加する」


「数名? ノヴァにSランクの人は少ないんですか?」


 魔物との大掛かりな戦争なのに、Sランクがたったの数名とか予想外だ。

 もっと強い人が沢山居るものだと思っていた。


「Sランクともなると、少々の事で死なないのもあってか、大抵は世界中を勝手気ままにほっつき歩いている。それに実際に何人いるのか、詳しく分かってないからね」


「『ダブル』全体で、飛行職込みで50人くらいと言われてるわね」


「だから空軍にかなり居たわよね」


「ええ、空軍の方は、今回の作戦にもかなり参加しているわ。10人以上はSランクじゃなかったかしら」


「けど空軍のSランクは、ボクと同じで相棒込みだよ」


「あっちでのネットの噂じゃ、四天王とか十傑衆みたいな強い人達がいるって事でしたけど、違うんですね」


 ハルカさんにもあまり聞いたことはないので、この際聞いてみたが、来客二人は苦笑いを浮かべている。

 理想と現実は随分違うというのが、それだけでよく分かった。


「戦場、特に前線に出られる常駐は、空軍を除くと4人はともかく10人は居ないな。居て欲しいが、居たら居たで誰かが問題起こしそうだがね」


 ジン議員が言葉とともに苦笑&溜息状態だ。


「そうなんですか? 強くて頼りになるんじゃあ?」


「ルカ君のように、真面目で律儀な御仁ばかりではないからな。何しろ、中身は勝手気ままな現代日本の若者だ」


 「確かに」と思うしかない。

 『ダブル』には、強さには責任が伴う的な考えは薄いみたいだ。

 リンさんの言葉も、それを肯定していた。


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