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日帰り異世界は夢の向こう 〜聖女の守り手〜  作者: 扶桑かつみ
第3部

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105/402

223「異世界召喚者?(2)」

「こっちの体で他に異常がないとなると、向こうの世界との接続か遮断が正しく出来ていないというのが、無難なところだろうな」


「向こう、現実世界に幽霊なり残留思念的なものが残っていると考えるのなら違うと思うぞ」


「なぜそう言い切れる、シズ君」


 自分の仮説が否定されたからだろうか、博士はかなり言葉が強い。

 それにさっきから完全な真面目モードだ。


「次に話すつもりだったが、私は一度こちらで死んで、その後マジックアイテムの影響で亡者のような状態になっているが、意識が二つの世界を行き来するのは生前と同じ、という状況に一度陥ったんだ」


「マジか!! おおっ、マジなのか! 1日に2回もこんな驚きに出会うとはな。が、シズ君の疑問はもう一つあるぞ」


 目を見開いて、メチャ驚いている。

 しかし、すぐにも冷静になった。この辺りは博士っぽい。


「獣人のことは後で話すよ。それより、まずはハルカのことだ」


「おお、そうだった。しかし向こうに何か思念なり思考が残っているという仮説はダメのようだな」


「振り出し、分からずじまいですか」


 何か判るかもと思ったが、そう簡単ではなかった。


「うむ。しかし、吾輩とハルカ君の状態は違う。これは事実だ。ハルカ君には何かあるという考えで、これから行動するべきだろうな」


「そうですね。予想外に有益なお話を聞けて、ありがとうございます」


「いや、何もしてないだろ。それに吾輩臆病者だから、何もできんだろうしなあ」


 意外にちゃんとした人のようだ。

 というか、40才を超えているというのなら、これくらいの対応が普通なのだろう。


「そんな事ないでしょう。本当に臆病なら大学に篭っていると思いますよ」


「そうか? あーそうそう、大学は行かん方がいいと思うぞ。下らん事か妙な事しかしとらんからな。行くなら、本当に優秀な連中の個人研究所か工房に行く事をお勧めする。紹介状なり、付き添いならしても良いぞ。

 もう少し、本来予定していた話を聞ければ、だがな」


「話すよ。ハルカの件はこちらとしてもイレギュラーだ。

 で、こっちが交換条件に教えるのは3点だ。そこの執事姿の黒いキューブの魔導器、この深い空色の魔導器、そして私自身の今のなりだな。で、黒いキューブと私の体は話が一つだ」


「詳しく聞こうか」


 続いて、興味津々のレイ博士の視線を受けつつ、かいつまんだことの経緯をシズさんが話して聞かせた。

 その上で、深い空色のキューブのこともごく簡単に話した。



「なるほどなあ。まあキューブの件は、スミレの事もあるからこっちでも改めて調べてみよう。で、こっちはスミレの件でいいのか?」


「他に聞きたいことはない。というより、レイ博士が私達と同じような魔導器を持っているとは、全く予想していなかった。で、キューブは他にもあるのか?」


「さあ、隠し持っている奴はいるかもしらんが、聞いた事はない。吾輩については、スミレを300年ほど昔の遺跡で偶然見つけただけだからな。似たようなものが他にあったというだけで、十分以上に驚きだ」


 その言葉とともに、博士の後ろに控えていたスミレさんが肯定の会釈をする。

 二人の空気感は良好に見える。


「どんな遺跡だ?」


「切り開いた魔の大樹海にあった都市跡。場所は秘密だ」


「魔導器や金目のものに興味ないよ。それより、スミレは何か他の用途で使われていたりしたのか?」


「いいや、厳重に封された密室にあっただけだ。吾輩が入ったら、突然光ったかと思うと人型になって全裸で抱きついてきたから、もう吾輩の人生いきなりクライマックスって感じだったな」


 言葉の半ばからが、めっちゃ嬉しそうだ。

 けど、そういう劇的な出会いもあるのだと思うと、ちょっと感慨深く感じてしまう。


「ふむ、藍色の方は道具として使われていたから、既に誰かが見つけて別目的で使っている可能性もあると思ったが。クロやスミレさんのように、人知れずという場合がやはり多いのかもな」


「かもしれん。で、そのキューブを探して回るのか?」


「いいや。今の所欲しい知識を持っている可能性は低そうだから、あえて必要はないだろう。ただ、キューブのある場所にはこの世界の核心に触れる知識や手がかりがある可能性は他より高いだろうから、一つの目標や指針といった所だな」


 シズさんの口から、今後の方針が出た。

 こういう会話だと特に饒舌になるシズさんに、博士も相槌を打つという流れだったが、それもそろそろ終わりっぽい。


「それで、スミレは人型になる以外に何ができる?」


 そう、本来聞きたかったのは、そういうところだ。

 何が出来るのかで、この世界の事が少しでも分かるかもしれない。


「錬金術のように物品を作り出す。あれの持っている武器も、自分で作り出したものだ。ゴーレム作りも手伝ってもらっているのだが、非常に助かっている」


「彼女の骨格もか?」


「あれは吾輩が作った。未来からマッパでやって来るマッチョなサイボーグみたいだろ」


「確かにあれは、こっちの美的感覚じゃないな。で、物品は何でも作れるのか?」


「材料や素材は必要だし、作れるのは『ダブル』の初期装備程度の魔法武器か魔法発動用の魔導器くらいまでだな。それに、無から有を生み出せるわけじゃない。マジックアイテムを作るには時間も相応にかかるし、魔力もかなり使う。そっちのクロは?」


「この体を作る時は、魔力を使い切って短期間の休眠に入ったな。この体の素材は、周辺にあった有機物などから集めたのではないかと思う」


「今、体を作れるのか?」


「どうだ、クロ?」


 シズさんは博士と二人だけの会話を続けていたが、言葉と共にオレの後ろに立っているクロへと視線を向ける。


「『客人』の皆様のお体をご用意出来るだけの魔力は蓄積できましたが、この場に該当される方がいらっしゃいません」


「ボクとしては、ボクの体をもう一人の天沢さんと別に欲しいんだけど。無理かな?」


 ボクっ娘が冗談っぽく茶化しているが、意外に真剣なのが瞳に出ていた。


「以前と違い一人の『客人』の魂と認識し辛くなっておりますが、我が力では一人を二人に認識する事は不可能です」


「いいよいいよ。聞いてみただけだから。でも、クロがそう言うって事は、やっぱり別れ始めてるのかな?」


 ボクっ娘が手をヒラヒラと左右にした後、腕組みをする。


「その方がいいのか?」


「どうだろう。でもさ、その時はショウも付き合いで二人に別れてね」


「何の付き合いだよ。それにオレ、最初から一人分しか人格ないだろ」


 ちょっと空気が軽くなったのでホッとしたが、ボクっ娘の本心だっただろう。

 ただ、何も知らない博士は何かの戯言とでも思っているのか、スルーしている。

 それに雑談に入りつつあるので、これでお互い知りたいことや知るべきことの情報交換は終わったという雰囲気になっていた。


「話はこんなところかしら? それでみんなはこれからどうする?」


「吾輩はノヴァの研究所に行くついでに、冒険者ギルドと評議会に報告に行かないとな。

 あとは、来たついでにノヴァにあるゴーレム工房を覗くくらいだから、明日でよければシズ君が大学なり誰か著名人の元に行くのなら、紹介のためにつき添おう」


「助かる。しかし、レイ博士自身として、私達のキューブの事を調べないのか?」


「それを吾輩に預けるというならしたいところだが、シズ君らのもんだろ。他人のもんを横取りはできんよ」


「いい人だね。じゃボクは、空軍の方に顔出してくるよ。来いってうるさいし」


「有名人だな」


「有名じゃないよ。ただボクも、一応ここの空軍の予備役だから、たまに寄った時は大抵同じように訓練しろってうるさいんだ」


「昨日の戦闘について聞かれたりするのか?」


「あー、大量に魔物倒した記録はオートログされてるから、ヤバイかもなあ。グリフォンは、空飛ぶ魔物の中でもドラゴンの次に強いって事になってるからね」


「そう言えば、魔物鎮定の報告はどうするんですかレイ博士」


 そこで少し真剣になっている。

 犠牲者も出ているし、役所や政府、冒険者ギルドに何かしら必要だろう。もしかしなくても、オレ達がした戦闘も。


 そうして全員がどうするかと考えていると、階下から来客の鐘の音が鳴り響いた。


■ チート願望者は異世界召還の夢を見るか?


■  223「異世界召喚者?(2)」



「こっちの体で他に異常がないとなると、向こうの世界との接続か遮断が正しく出来ていないというのが、無難なところだろうな」


「向こう、現実世界に幽霊なり残留思念的なものが残っていると考えるのなら違うと思うぞ」


「なぜそう言い切れる、シズ君」


 自分の仮説が否定されたからだろうか、博士はかなり言葉が強い。

 それにさっきから完全な真面目モードだ。


「次に話すつもりだったが、私は一度こちらで死んで、その後マジックアイテムの影響で亡者のような状態になっているが、意識が二つの世界を行き来するのは生前と同じ、という状況に一度陥ったんだ」


「マジか!! おおっ、マジなのか! 1日に2回もこんな驚きに出会うとはな。が、シズ君の疑問はもう一つあるぞ」


 目を見開いて、メチャ驚いている。

 しかし、すぐにも冷静になった。この辺りは博士っぽい。


「獣人のことは後で話すよ。それより、まずはハルカのことだ」


「おお、そうだった。しかし向こうに何か思念なり思考が残っているという仮説はダメのようだな」


「振り出し、分からずじまいですか」


 何か判るかもと思ったが、そう簡単ではなかった。


「うむ。しかし、吾輩とハルカ君の状態は違う。これは事実だ。ハルカ君には何かあるという考えで、これから行動するべきだろうな」


「そうですね。予想外に有益なお話を聞けて、ありがとうございます」


「いや、何もしてないだろ。それに吾輩臆病者だから、何もできんだろうしなあ」


 意外にちゃんとした人のようだ。

 というか、40才を超えているというのなら、これくらいの対応が普通なのだろう。


「そんな事ないでしょう。本当に臆病なら大学に篭っていると思いますよ」


「そうか? あーそうそう、大学は行かん方がいいと思うぞ。下らん事か妙な事しかしとらんからな。行くなら、本当に優秀な連中の個人研究所か工房に行く事をお勧めする。紹介状なり、付き添いならしても良いぞ。

 もう少し、本来予定していた話を聞ければ、だがな」


「話すよ。ハルカの件はこちらとしてもイレギュラーだ。

 で、こっちが交換条件に教えるのは3点だ。そこの執事姿の黒いキューブの魔導器、この深い空色の魔導器、そして私自身の今のなりだな。で、黒いキューブと私の体は話が一つだ」


「詳しく聞こうか」


 続いて、興味津々のレイ博士の視線を受けつつ、かいつまんだことの経緯をシズさんが話して聞かせた。

 その上で、深い空色のキューブのこともごく簡単に話した。



「なるほどなあ。まあキューブの件は、スミレの事もあるからこっちでも改めて調べてみよう。で、こっちはスミレの件でいいのか?」


「他に聞きたいことはない。というより、レイ博士が私達と同じような魔導器を持っているとは、全く予想していなかった。で、キューブは他にもあるのか?」


「さあ、隠し持っている奴はいるかもしらんが、聞いた事はない。吾輩については、スミレを300年ほど昔の遺跡で偶然見つけただけだからな。似たようなものが他にあったというだけで、十分以上に驚きだ」


 その言葉とともに、博士の後ろに控えていたスミレさんが肯定の会釈をする。

 二人の空気感は良好に見える。


「どんな遺跡だ?」


「切り開いた魔の大樹海にあった都市跡。場所は秘密だ」


「魔導器や金目のものに興味ないよ。それより、スミレは何か他の用途で使われていたりしたのか?」


「いいや、厳重に封された密室にあっただけだ。吾輩が入ったら、突然光ったかと思うと人型になって全裸で抱きついてきたから、もう吾輩の人生いきなりクライマックスって感じだったな」


 言葉の半ばからが、めっちゃ嬉しそうだ。

 けど、そういう劇的な出会いもあるのだと思うと、ちょっと感慨深く感じてしまう。


「ふむ、藍色の方は道具として使われていたから、既に誰かが見つけて別目的で使っている可能性もあると思ったが。クロやスミレさんのように、人知れずという場合がやはり多いのかもな」


「かもしれん。で、そのキューブを探して回るのか?」


「いいや。今の所欲しい知識を持っている可能性は低そうだから、あえて必要はないだろう。ただ、キューブのある場所にはこの世界の核心に触れる知識や手がかりがある可能性は他より高いだろうから、一つの目標や指針といった所だな」


 シズさんの口から、今後の方針が出た。

 こういう会話だと特に饒舌になるシズさんに、博士も相槌を打つという流れだったが、それもそろそろ終わりっぽい。


「それで、スミレは人型になる以外に何ができる?」


 そう、本来聞きたかったのは、そういうところだ。

 何が出来るのかで、この世界の事が少しでも分かるかもしれない。


「錬金術のように物品を作り出す。あれの持っている武器も、自分で作り出したものだ。ゴーレム作りも手伝ってもらっているのだが、非常に助かっている」


「彼女の骨格もか?」


「あれは吾輩が作った。未来からマッパでやって来るマッチョなサイボーグみたいだろ」


「確かにあれは、こっちの美的感覚じゃないな。で、物品は何でも作れるのか?」


「材料や素材は必要だし、作れるのは『ダブル』の初期装備程度の魔法武器か魔法発動用の魔導器くらいまでだな。それに、無から有を生み出せるわけじゃない。マジックアイテムを作るには時間も相応にかかるし、魔力もかなり使う。そっちのクロは?」


「この体を作る時は、魔力を使い切って短期間の休眠に入ったな。この体の素材は、周辺にあった有機物などから集めたのではないかと思う」


「今、体を作れるのか?」


「どうだ、クロ?」


 シズさんは博士と二人だけの会話を続けていたが、言葉と共にオレの後ろに立っているクロへと視線を向ける。


「『客人』の皆様のお体をご用意出来るだけの魔力は蓄積できましたが、この場に該当される方がいらっしゃいません」


「ボクとしては、ボクの体をもう一人の天沢さんと別に欲しいんだけど。無理かな?」


 ボクっ娘が冗談っぽく茶化しているが、意外に真剣なのが瞳に出ていた。


「以前と違い一人の『客人』の魂と認識し辛くなっておりますが、我が力では一人を二人に認識する事は不可能です」


「いいよいいよ。聞いてみただけだから。でも、クロがそう言うって事は、やっぱり別れ始めてるのかな?」


 ボクっ娘が手をヒラヒラと左右にした後、腕組みをする。


「その方がいいのか?」


「どうだろう。でもさ、その時はショウも付き合いで二人に別れてね」


「何の付き合いだよ。それにオレ、最初から一人分しか人格ないだろ」


 ちょっと空気が軽くなったのでホッとしたが、ボクっ娘の本心だっただろう。

 ただ、何も知らない博士は何かの戯言とでも思っているのか、スルーしている。

 それに雑談に入りつつあるので、これでお互い知りたいことや知るべきことの情報交換は終わったという雰囲気になっていた。


「話はこんなところかしら? それでみんなはこれからどうする?」


「吾輩はノヴァの研究所に行くついでに、冒険者ギルドと評議会に報告に行かないとな。

 あとは、来たついでにノヴァにあるゴーレム工房を覗くくらいだから、明日でよければシズ君が大学なり誰か著名人の元に行くのなら、紹介のためにつき添おう」


「助かる。しかし、レイ博士自身として、私達のキューブの事を調べないのか?」


「それを吾輩に預けるというならしたいところだが、シズ君らのもんだろ。他人のもんを横取りはできんよ」


「いい人だね。じゃボクは、空軍の方に顔出してくるよ。来いってうるさいし」


「有名人だな」


「有名じゃないよ。ただボクも、一応ここの空軍の予備役だから、たまに寄った時は大抵同じように訓練しろってうるさいんだ」


「昨日の戦闘について聞かれたりするのか?」


「あー、大量に魔物倒した記録はオートログされてるから、ヤバイかもなあ。グリフォンは、空飛ぶ魔物の中でもドラゴンの次に強いって事になってるからね」


「そう言えば、魔物鎮定の報告はどうするんですかレイ博士」


 そこで少し真剣になっている。

 犠牲者も出ているし、役所や政府、冒険者ギルドに何かしら必要だろう。もしかしなくても、オレ達がした戦闘も。


 そうして全員がどうするかと考えていると、階下から来客の鐘の音が鳴り響いた。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 同一エピソードが2回繰り返しています。多分コピー後にペーストを連打してしまっているかと。 [一言] 別サイトで執筆されておられたとのことで、このような事態も起こり得るのかと思います。 …
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