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ニーナ、シドゥリと戦う

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 キキはじっとアラニウスを見詰めた。そして、溜息を吐いて肩を竦めた。


「戦ったところで貴方達では無理よ。三人目ね、まさか戦闘種とはね。解析するまで気付かなかったわ。さて、説明してもらえるかしら。」


 キキの言葉でニーナ達もティム達も剣を収め、席につくとお茶が用意された。ティム達は苦い顔をして椅子に座り、トロンやギルス、エレンも帯剣したまま座った。

 全員が深く腰掛けずにいる姿を見て、キュリウス男爵は少し溜息を吐いた。


「今の聖法王国を見るとそうなりますね。私は王都で王妃様暗殺を防いだことで、騎士爵を戴きました。そして、此処に温泉を見つけました。温泉の効果を療養地として、治癒魔法と治療師達や薬師との連携を考えたことで、男爵位を戴きました。私は一人でも多く助けたいのです。種族固有の病もあります。そのため、ここにはあらゆる種族の治癒魔法師も治療師も薬師もいるのです。今の歪んだ聖法王国ではなく、私達はヴァルナ聖教の信徒です。」


 キュリウス男爵はゆっくりとだが、しっかりとした口調で話し出した。

 ニーナは話に興味が無かったのか、アラニウスと年少組を伴って庭に出て行った。


「妻のシエルは巡回教会で巫女をしていた貴族の娘でした。彼女には獣人族の血が混じっています。貴族の父親に半ば捨てられるように、聖教教会に入れられて私と一緒にシドゥリを学びました。珀虎族の血を持つ彼女はすぐに聖戦士になりました。」

「疾風族の血を持つ貴方の方が早かったですわ。」

「ははは、妻の言うう通り、私は疾風族の血が入っています。隔世遺伝と言うのでしょうか、曾祖父が疾風族の最後の一人だったそうです。おかげで、私は常人より遥かに速く動くことが出来ます。聖戦士にはなりましたが、ヴァルナ様の教えに従って人々を助けたいと思っています。」


 キュリウス男爵は椅子にもたれお茶を飲んだ。ニーナ達は黙って、トロンは目を閉じて聞いていた。ゼンとキキの俯いた表情は見えないが、口元が笑みの形を取った。

 ゼンは窓から庭のニーナ達を眺めていた。何時の間にかアラニウスがシドゥリの技を見せていた。


「そうなると、貴方達は今の聖法王国にとって排除対象になりますね。」

「その通りです。私達は聖法王国に戻ることは出来ません。いえ、戻りたくはありません。」


 ティムの指摘にキュリウス男爵はテーブルに拳を打ち据え、大きな声で宣言した。ティナが少し考えて他のメンバーに目で合図を送った。


「ではキュリウス男爵様、少し質問をよろしいでしょうか。」

「答えることが出来るなら。」

「かつての十聖将は現在、どうしているのでしょう。そして、彼等の持つ聖具はどうなったのでしょう。」


 ティナの質問にシエルーナがキュリウス男爵の腕を掴み、意味ありげに見詰めた。キュリウス男爵は妻の手に自分の手を重ね、力強く頷いて見せた。


「十聖将はそれぞれの道を歩んでいます。巡回教会で働く者、旅の治癒魔法師になった者、小さな町の教会で司祭をする者、様々です。そして、貴族になり領地を得た者も。」


 キュリウス男爵の告白にティム達の顔に緊張が走り、ギルスとエレンは驚愕に震えたか。トロンは口を開いたまま固まった。

 庭でニーナ達はアラニウスと組み手を始めた。アラニウスとニーナがジャブでお互いを牽制しながら、攻撃のタイミングを計っていた。


「もう一組、私達の他に夫婦になった者達がいます。私達、十聖将はヴァルナ様から任命されたのです。もちろん、聖具も持っています。そのため、聖法王国の暗部に狙われることになりました。おかげで、ここの騎士団にシドゥリの基本を教える羽目になりました。」


 アラニウスがニーナの腕を掴もうとして、沈んだニーナに足を蹴られてバランスを崩した。落ちて来たニーナの踵落しを、アラニウスは転がって躱した。


「貴方達は今の聖法王国をどう思っているのですか。」

「当然、ヴァルナ様の教えを曲げて伝える者達を、止めなければならないと思っています。しかし、今の教義に共感する者も多いのです。そして、上層部は今の教義の方が、都合がいいのです。堕落した欲望を満たすことが出来ますからね。アリアーナ様をお助け出来れば、変えていくことは出来る筈です。」

「軟禁というより幽閉された枢機卿ね。彼女は民衆に大きな影響力を持っているとか。」


 俯いて黙り込むキュリウス男爵、ティム達も静かに何かを考えているようだった。

 アラニウスに腕を折られたニーナと、ミリアンとララに抱えられたアラニウスが戻って来た。

 キュリウス男爵とシエルーナが眼を剥いて二人を見た。キキが治癒魔法で二人を治すと、ミリアンがニーナに説教を始めた。キキがゼンを見ると窓から出て、葉巻に火を着けた。


「は、話しを戻しましょう。聖具の行方です。」

「ティム、聖具とは何じゃ。」

「えっ、聖具とはヴァルナ様の加護を受けた神聖武具です。」

「ニーナさんは興味が有りますか?神の加護、魔法付与された伝説級の武具の事ですよ。」

「ほほう、ゼンが集めておるような武具の事なのじゃ。」


 ニーナの言葉に静かにお茶を飲んでいたゼンとキキが、盛大に噴き出した。


「おや、何か可笑しなことを言ったのじゃ?」


 トロンもキュリウス男爵もティム達もゼンとキキを見た。キキに睨まれてゼンが部屋に戻った。


「持っているのですか。伝説級の武具を。」

「問題か。」

「問題あります。伝説級の武具は大きな力が宿っています。王国で持っているのは七星剣ぐらいです。」

「トロンも持っておるのじゃ?見たいのじゃ。」

「あかん、王国の秘宝の一つや。国王様の許可なく使うことは出来ん。それにわいの準備も必要や。」

「つまらんのじゃ。」


 トロンに見せて貰えなかったニーナはゼンをじっと見詰めた。ゼンは溜息を一つ吐いてキキを見た。キキが静かにゼンの後ろに移動すると、目元に魔法陣が浮かび上がってすぐに消えた。


「大丈夫よ。」


 キキが告げると、ゼンはマジックバッグから剣や槍を取り出した。


「伝説級の武器よ。ゴーストやレイス、ファントムを斬る事が出来る剣、ソウルブレーカー。放った矢がどこまでも追い駆ける弓、スネークバイト。振動して一撃の威力を上げる、ダンシングロッド。時々、竜種をも一撃で倒す攻撃を放つ、ラックアックス。こんなところかしら。」

「それはそれで凄いのですが、王国や他国が欲しているのは範囲攻撃が出来る武具です。」


 ティムの言葉にキキは少し考えたように首を傾げ、ニコッと微笑んでゼンの耳元で何かを囁いた。眉間に皺を寄せゼンは渋々といった様子で、三種類の武器をテーブルに置いた。


「炎界の剣、爆水の槍、万砕の斧よ。」

「宴会の剣に爆睡の槍、万歳の斧?何とも面白そうな武器じゃ。」

「ゼン!」


 ニーナの言葉に何かを取り出そうとしたゼンを、鋭く制してキキはティム達に向き直った。


「一振りで森を焼き尽くす剣、一突きで湖の水を爆散させる槍、一撃で山をも砕く斧。どうかしら。」


 興味津々に手を伸ばして触ろうとしていた年少組が、キキの説明で動きを止めた。トロンやティム達も固まって、子爵は目を見開いたまま動かなくなった。ギルスとエレンは知っていたのか、それぞれの反応を見て苦笑いを浮かべた。


「うにゃ、愉快な武器でなく恐ろしい武器じゃったのか。」

キ♀:のじゃ姫は大人の会話が面白くなかったのね。

空♂:まあね。もともとはこんな展開はなかったのだが。

キ♀:どうしてこうなったの。

空♂:難しい話の時、子どもは遊んでいるだろ。だから、模擬戦。

キ♀:それでこうなったのね。

空♂:大人達の話の外で、子ども達は遊ぶ。そんな風景を想像して欲しい。

キ♀:伝わるのかしら。まっ、改稿される予感がするわ。

空♂;(・ω<)

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