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ニーナ、教会都市の領主に会う

予告なく修正することがあります。

 ゼンは夕食にポテトサラダとポテトコロッケを作り、ポテトチップスも作った。

 テーブルに上がって何かを宣言したそうなニーナが、ミリアンとエレンに怒られて萎んだ。

 翌日、ゼンと司祭はトロンを交えて、レシピの取引をして銅貨十枚ですべてのレシピを教会に売った。


「あの道具の方が気になりますわな。レシピやない、設計図が欲しいのですが。」

「金貨十枚よ。その代り、秘密は守ってね。」

「乗った。貧乏ドワーフに知り合いがおるから、それに渡しますわ。代金はわてが建て替えで。」


 昼前、教会の前には長い行列ができていた。ホットドッグや野菜スープ、ポテトサラダにコロッケが飛ぶ様に売れた。


「ふっはっはっは、予想以上の売り上げなのじゃ。」

「お嬢様、その笑い方は止めてください。端無いです。」

「大したもんですな。これで孤児院は潤うて行くでしょうな。巫女さん達も泣いて喜んでますな。」

「泣いておる場合ではないのじゃ。まだまだ、味はゼンに遠く及ばんのじゃ。頑張って改善するのじゃ。」

「はい。」


 教会の巫女達は平民街を訪れ、貧しく仕事の無い者達へ小麦と米、ジャガイモや野菜を作って欲しいと説明した。


「小麦は判るけど、ジャガイモや米は売れないぞ。それに他の野菜も大した価値の無い物だ。」

「ジャガは最強なのです。他の野菜や米は貴方達のためです。調理の仕方は教えます。始めは教会が買い取ります。いずれ、商人ギルドが介入して来るでしょう。」

「はっはっは。屑野菜に商人ギルドが絡むかよ。」


 ニーナとミリアンが先頭になって、孤児院から子ども達がホットドッグを持ってやって来た。


「論じるより実食なのじゃ。最強のジャガ、推して参るのじゃ。」


 子ども達が配ったホットドッグや、ジャガバターを食べた人々は無言で口を動かした。


「判ったであろう。屑野菜もジャガも料理の仕方で、最強に生まれ変わるのじゃ。」


 腰に手を当て踏ん反り返るニーナを見る人々は、偉大な賢者を見るような表情をしていた。この後、貧民達は都市壁のすぐ外で、小麦や米、野菜の畑を作り出すが、それは少し未来の話。


「これで材料は揃ったのじゃ。ジャガの伝説が始まるのじゃ。」

「お嬢。一体、何の話だ?悪い子の顔になっているぞ。痛っ。」


 ニーナに突っ込んだギルスは、思い切りニーナに足を踏まれた。


 数日の後、いつもの練習をしていたニーナ達を数人の子ども達が見物していた。


「ギルス兄ちゃんもエレン姉ちゃんも凄いね。どうしたらそんなに強くなれるの。」

「兄ちゃん。」

「ギルス、そのだらしない笑顔は止めるのじゃ。妾が教えてやるのじゃ。斬撃には九種類の型があるのじゃ。」


 ニーナは九つの斬撃を丁寧にやって見せた。子ども達は目を輝かせて、ニーナの動きを目で追った。すると、ニーナは突然、動きを止めた。


「うにゅにゅにゅ、ゼンがおらぬのじゃ。ギルス、エレン。お願いするのじゃ。ドンをするのじゃ。」

「ドンにはならないと思うが、やってみよう。」

「ギルス、全力で行くとしよう。」


 ニーナはゆっくりとレイピアを抜き、ギルスとエレンも剣を抜いた。


「この九つの斬撃を毎日、練習するのじゃ。」


 ゆっくりと正確に斬撃の型を演じて行く。


「一週間、一か月、一年。」


 正確に優雅に剣を振るニーナ達の動きが早くなっていく。振るう剣から空気を斬る音が、聞こえてきた。そして、三人の動きが徐々に速くなって、まるで息の合った剣舞の様に見えた。


「十年、百年。そして、千年。」


 ニーナのレイピアが一筋の銀光を描き、エレンが繰り出す高速の斬撃を、ギルスは同じ斬撃で防いで見せた。大きく長く剣の打ち合わされる音が響き渡った。


「お見事!」


 ニーナ達が声のした方を見ると、モノクルを掛けた長身の男が立っていた。


「私はキュリウス・ミラン・ナザレウスと申します。一応、男爵位が有り領主を拝命していますが、ヴァルナ様の教えを守る信徒です。」


 ギルスより少し高い身長を持っているが、横幅はギルスより痩せていた。


「男爵か。」

「気配の殺し方、歩き方、貴族とは思えないわね。」


 買い物から帰ったゼンとキキの呟きは、誰にも聞こえなかった。ミリアンだけは上目使いで、キュリウス男爵を見詰めていた。


「ここ教会都市は温泉があるので、湯治に来る人達も多く観光収入は有るのです。それでも、温泉の維持管理もありますし、治療師ギルドも協力してくれますが、孤児院に回せる財政は充分ではないのです。ここの孤児院の事を聞きまして、何が起こったのかを見に来たのです。」

「ずいぶんと腰の低い貴族なのじゃ。しかし、ここと同じことをさせると良いのじゃ。」

「まあ、そうなるな。」

「のじゃ姫、ここに教えたレシピや技術を分散させた方がいいわ。」

「何故じゃ。同じことをすれば屋台で売れるのじゃ。」

「ニーナさん、キキ様の言う通りでっせ。各レシピを分散させて孤児院ごとに一種類か二種類に絞るんや。そうすれば、ホットドッグの値段も下がらず、売れる量も確保できますな。」

「そうなのか。よく判らんのじゃ。」

「トロンの言うう通りよ。一か所で沢山の物を作ると少量しか出来ないでしょ。でも、一つや二つなら多く作ることが出来るわ。それを孤児院から持ち寄れば、今より沢山作ることが出来るでしょ。」

「なるほど、よく判ったのじゃ。ナザレウス卿、そうするのじゃ。」


 キュリウス男爵は付き添いの男達に指示を出し、教会の司祭や巫女を話を始めた。

 話がまとまったのか司祭や巫女が慌ただしく動き、付き添いの男達も方々へ走って行った。


「貴方達の言うことがよく判りました。作業を単純化させて効率を上げるのですね。量も確保できますし、価格も一定に維持することが出来ますね。なるほど、商人ギルドにレシピなどの買い取りに向かいます。」

「いや、もう孤児院で買い取ってまっせ。」

「なら、私が全て買い取って、管理した方がいいかな。孤児院が増えてもいいようにね。」


 キュリウス男爵とトロンが話して色々なレシピや道具の権利を決めた。


「貴方達のお陰で何とかなりそうです。お礼に今夜、夕食にお招きしたい。」


 ニーナは微笑みながら小さく頷くキキを見て、キュリウス男爵を真っ直ぐ見た。


「招かれるのじ、うにゅ。謹んでお受けしますのじゃ。」

キ♀;最後にやっと領主の登場。タイトル詐欺?

空♂:うにゅ、この後の展開のために、ここで区切らざる得なかった。

キ♀:この後の展開はどうなるの?

空♂:ここでその話をするのか?次回のお楽しみってわけに行かないかな。

キ♀:それもそうね。次回を楽しみにしているわ。

空♂:また一人、ブクマをしてもらった。頑張る。しかし、どうやってこれを見つけたの知りたいものです。感想よりここに辿り着いた経緯が知りたい。

キ♀:(^^;

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