ニーナ、ダンジョンにアタックする~クリア編~
予告なく修正することがあります。
倍近くの大きさになった、八つ首のウォルタルが十六の眼でゼンを見た。俯いていたゼンが顔を上げて、眼を開いた。真紅の眼はうっすらと光っている様に見える。
ウォルタルの身体がブルッと震えて、ブレスをまるで大砲の様に放った。ゼンは左手て叩き落とすと、ウォルタルに向かって走り出した。
ウォルタルは八つの口から連続して、ブレスの砲弾を放った。躱すゼンを捕えようと八つの首が激しく動き、雨の様にゼンに向かって飛んだ。ゼンはその悉くを躱し、防いで見せた。
「キキさんも大概ですやん。流れ弾とはいえあのブレスの砲弾を止めるやなんて。」
「うにゃ!ゼンが飛んで来たのじゃ。」
縦横無尽に躱すゼンに、ウォルタルのブレスが止まった。
ゼンは右足を引き前傾姿勢になった。右手の刀が地面と平行に後ろに引かれ、ゆっくりと左手が添えられた。その切先はウォルタルに向けられていた。
「あの構えは、大量のスケルトンを粉々にした技?」
「似ているけど、通路で見せたのは絶壊。神の一歩手前なの。でも、あれは神の領域。彼は人の身で到達できる限界を超える。あそこにいるのは獣。竜を狩る獣よ。」
ゼンを睨んでいたウォルタルが、大きな咆哮を上げた。まるで、ゼンに挑戦するかの様に、八つの口が数度、噛みあわされた。それは噛み砕くつもりだと意思表示だったかもしれない。
「さすがね。この闘気、闘いの神の技。受けきれるかしら。覇王の一撃を。」
キキの声が引き金となったか、ゼンがウォルタルの前で右足を踏み込んで、空中へと飛び上がった。八つの首がゼンを迎撃すべく、大きな口を開けて襲い掛かった。
「ゼン!」
「大丈夫。速い。」
喰われたと思ったのかニーナが悲痛な声で名を呼んだ。エレンがニーナを抱き寄せて、視線はゼンに固定したまま言った。
襲い来る首に目もくれず、ゼンは刀を巨体に突き入れた。同時に、ウォルタルの背中が爆発したように爆ぜ、ウォルタルの体を蹴ってゼンは地上に着地した。
「終わりだ。」
頭上の遥か上にある八つの首に向かって、ゼンは振り向き様に横薙ぎの一閃を放った。
「ピキーィィィィィィィィィン」
鍔鳴りの音に八つの首がズルリとずれ、地面に落ちながら灰へと変わり、大きな魔石を残して散った。
「地対空の一文字。飛燕一閃。」
「あの巨大な竜気の主を倒すやなんて。まさに、神の技。御業か。」
キキが笑みを浮かべて呟き、トロンが青い顔で呟いた。
「すげえ。一瞬、死を覚悟したぜ。」
「やったのじゃ。凄いのじゃ。」
ギルスとエレンは止めていた息を吐きだし、ニーナとロロは手を取り合って喜んでいた。すると、祭壇が光り、宝箱が現れた。
「おお、金色の宝箱なのじゃ。」
「そりゃ、そやろ。主が真竜のダンジョンや。最高の宝箱が出て当然や。」
「最高の宝箱なのじゃ。開けるのじゃ。」
「待ちや。罠も最高難易度がついとるかも知れん。」
「うにゃ、先に言うのじゃ。開けるとこじゃった。ゼン、お願いするのじゃ。」
「ゼンさん、ひょっとして罠解除も出来るのか。」
「問題ない。ふっ。」
暫く、宝箱を睨んでいたゼンから低く短い笑いが漏れた。
「ピキーィィィィィィィィィン」
「斬るんかい!」
鍔鳴りが響き渡り、宝箱の上部がずれて落ちた。抜いたところも、斬ったところも、鞘に収まったところさえ、誰にも見えなかったようだ。
「蓋を開けるとワイヤーが引っ張られて、この玉が爆発するのね。屑魔石を寄せ集めだけど、威力は大したものね。」
ゼンは弱く光を放ち出した、ソフトボールぐらいの玉を収納した。
「そんなものまで取って置くの。」
「一応。」
「あら、自動回収が始まったわ。ボスを倒したのね。」
「ちょっと、待ってや。普通、この規模のダンジョンになると裏ボスがいてるはずや。それを倒さんと自動回収は始まらん。」
「倒した。」
「倒したって、ゼンさん。あれがボスなら裏ボスは古竜種か天竜種やで。」
「問題無い。」
「うにゃ~。」
驚きの表情でゼンを見るトロンの耳に、ニーナの奇妙な悲鳴が届いた。
「なんや、これは。」
「ゼン、どれくらい仕掛けて来たの。」
「百か所程度?」
ニーナの前に大小の魔石が小山を作り、いくつかの武器や防具、アクセサリーが集まっていた。
「大きな魔石もあるのじゃ。それに、変わった形の武器や防具もあるのじゃ。」
野球ボール位の魔石を手に取り、ニーナは鍔に飾りのある剣を拾い上げた。
「富豪の剣、倒したものが相応の貨幣に変わる。魔石が残らないから、ある種の呪いの剣ね。ゼン、試してみましょう。サモン、レッサーデーモン。」
キキは召喚魔法でレッサーデーモンを呼び出した。ニーナから受け取った剣で、ゼンはレッサーデーモンを両断した。レッサーデーモンが、チリンと音を立てて金貨二枚になって落ちた。
「基準が判らないわね。サモン、アーク・ファイヤー・エレメンタル。サラマンダー。」
ゼンが無表情にサラマンダーを斬り伏せると、大量の金貨に変わって地面で音を立てた。数えていたニーナが目をキラキラさせて、キキを見上げた。
「百枚じゃ。金貨が三十枚もあるのじゃ。」
「キキさん、その剣の基本性能はどれくらい。」
「非凡級。普通のミスリルと変わりはないわ。」
「と言うことは、ミスリルの剣でサラマンダーを倒したのか。」
エレンとギルスは目を丸くしてゼンを見詰めた。ティム達は大きな溜息を吐いた。ニーナとロロはキラキラとした目でゼンを見詰めていた。
「お嬢様の眼にゼン様が映っていません。肉串が映っています。」
「ロロも一緒ですね。あたいも主様が肉串に見えてきました。」
ミリアンもララと同じく、喉をゴクリと鳴らしてゼンを見詰めた。そんな年少組を眺めながら、キキは他のアイテムを解析を続けた。暫くすると、アイテムは右と左に別けられて置かれた。
「右が実用的な武器と防具の類。左はちょっと判らないアイテムの類。武器と防具は付与されている効果は色々よ。速度アップや魔法師特効、竜種特効、即死効果もあったわ。全て英雄級の良品ね。」
ギルスとエレンが武器を手に取って、具合を確かめ出した。ティム達もそれぞれ、手にして確かめ始めた。
「こっちは何なのじゃ。」
左側のアイテムに近づいたニーナをキキが止めた。
「駄目よ。カースドも多いから、近づかないで。ランクは英雄級と伝説級のアイテム。解呪はゼンに任せましょ。私がやるとアイテムまで消滅してしまうから。それにしても、不思議なアイテムばかりね。」
ゼンは碌に確かめもせず、すべてを収納した。
「確かめんのか。面白そうな物もあったのじゃ。」
「問題無い。」
「また、色んなアイテムが増えたわね。ますます、何処かの青い猫に近づいたのでは。」
キキの言葉に何処か憮然としたゼンは祭壇に向かった。キキも祭壇に近づいて手をかざすと、祭壇の上部がぼんやりと光り出した。暫く、キキは手を動かし何かの作業をして、ニーナを振り返った。
「のじゃ姫、仕事よ。」
全員が祭壇に駆け寄り、キキの説明を聞いた。
「先ずは、名前付けをして。ここで宣言すればいいだけ。名付けたら転移の魔法陣が出るから、それで入り口に転移出来るわ。リスポーンは二十四時間に設定されているわね。私達は四日で攻略したけど、ショートカット無で、真面目に攻略するとなると一月以上かかるわね。難易度は英雄級ね。でも、ダンジョンマスターは変更ね。あれは人族では不可能よ。」
「うにゅにゅにゅ、名前は悩むのじゃ。」
キキの説明に悩むニーナ。何処からともなく声が聞こえて来た。
「ダンジョン名、うにゅにゅ承諾。アカシックレコードに新規登録。完了しました。入り口への転移魔法陣を展開します。なお、魔法陣は三十秒後に消去されます。」
「うにゃぁぁ。」
「さあ、魔法陣に入るわよ。」
キキが微笑みながら皆を促して、魔法陣へ入ると光に包まれ、ニーナ達は入り口に立っていた。
「うにゅにゅのダンジョン。うにゃ~、大失敗なのじゃ。」
キ♀:裏ボスはなんだったの?
空♂:最初は暗黒属性の天竜だった。
キ♀:どうして、カットしたの?
空♂:まあ、何処かでエピソードを作るよ。今は本編に集中したい。
キ♀:いずれ出て来るのね。気長に待つわ。
空♂:次回はニーナ達の新武器を登場させなければ__φ(..;)




