ニーナ、沢山のオーガを討伐する
予告なく修正することがあります。
Aug-31-2020、一部変更。
Sep-19-2020、一部変更。
翌日、ゼンは村人と物々交換をしていた。ゼンはファイヤーボアの肉や傷薬を出して、同量の鶏肉や山椒、野菜などと交換した。大きな都市近郊の村でも、物々交換の方が歓迎された。
「同じ量でいいのか。価値が全然、違うぞ。」
「問題ない。」
「それは有り難いが、なるほど、それでゴールドなのか。冒険者は良くてアイアン止まりが多いのに、儂等は助かるがね。」
ゼンの商人クラスはゴールドになっていた。
「平行登録している冒険者のほとんどは、情報を得て村や町に行きます。足元を見て高く売りつけるためです。ですが、皆さんは全く違いますね。私、ファンになりました。」
「私もです。鶏とファイヤーボアを同じ量なら、銅貨と銀貨の違いが有りますよ。」
キラキラと目を輝かせて話すロイスとレインを無視して、ニーナ達は交換した物を積み込んで出発した。城塞都市まで一日半の距離で、馬車は両端を林に挟まれた街道に差し掛かった。
「ギルス、右だ。準備しろ。」
ゼンがギルスに並び、注意を促した。キキが馬車に並んで、御者のロロに声を掛けた。
「ロロ、ゼンの馬を受け取って。ゆっくりでいいから、進路を保って。魔物が出てきたら馬車を止めて。」
「主様、魔物ってどんな、です?」
「オーガです。でも、この数。レギオン。」
ロイスが会話に加わり、魔物の種類を告げた。キキは感心したように笑みを浮かべ、レインは青ざめた。ロロは左手で刀を引き寄せた。ララとミリアンは幌をたたみ、武器を確認した。ニーナは立ち上がり、何処なく山猫を思わせる、少し不気味な笑顔を浮かべた。
「ロイスの探知魔法は信頼できます。此処は城塞都市まで一日と少し。しかも、街道沿いです。アダマンタイトクラスの冒険者である、エルノワールに緊急クエストを発注します。オーガレギオンの出来るだけ正確な規模の調査。そして、その情報を城塞都市に届けること。報酬は城塞都市に着いてからになりますが、金貨十枚以上は確実です。どうか、お願いします。」
ニーナはキキが頷くのを見て、睨むゼンを無視して胸を張った。
「そのクエスト、エルノワールが受けたのじゃ。」
「討伐してもいいのでしょう。ねえ、クラーク。」
キキの言葉に驚く二人と、溜息を吐いたゼン。
「問題ない。」
何処か投げ遣りに答えるゼンを、蛸口で眺めるニーナ。緊張の欠片もないエルノワールに、ロイスとレインは驚いたように目を向けた。そして、林から黒い二メートルを超える影が飛び出した。影は二本の角を持ち、手に棍棒や斧、剣を持つものもいる。どれくらいの数がいるのか。
「その数・・・。」
ロイスは探知魔法で規模を探ると、顔を引き攣らせて固まった。ニーナは不思議そうに見つめ、何時まで経っても規模を言わないロイスの顔を覗き込んだ。
「数はどうしたのじゃ。」
「その数、五十四体。上位種オーガウォリアー、八体。オーガソーサラー、三体。そして、オーガキングが一体。エレン、ギルス。上位種は私とゼンで対処するから、貴方達はオーガ四十二体をお願い。ミリアン、後ろに気を付けて。」
キキはロイスの代わりに、オーガの群れをニーナ達に告げ役割の指示を出した。ロロに馬を預けたゼンは既に一体目のオーガの首を刈り取った。ギルスとエレンも馬を降り、剣を抜いて構え、馬車から降りたララとロロも油断なくオーガの群れを睨み付けた。
ロイスとレインにとっては絶望的な数だったのだろう、抱き合い震える二人の眼前で闘いの幕が上がった。
震える二人の前にニーナが立ち上がり、レイピアを抜いて天に向かって振り上げた。
「ふっはっはっは、狩の時間なのじゃ。」
「お嬢様!その笑い方は止めてください。端無い。」
ニーナはミリアンの言葉に少し怯んだが、持ち直して馬車から飛び出した。
「ミリアン、矢でギルス達の援護じゃ。ララ、ミリアンの護衛を頼むのじゃ。ロロ、後ろを警戒しながら、妾に続け。」
走り出したニーナの後ろを、ロロが刀に手を掛けて追い駆けて行った。ニーナの指示通り、ミリアンは弓を取り出し、天へ向けて矢を放った。
「散!」
ミリアンの言葉に一本の矢が無数に増え、オーガ達の上から雨のように降り注いだ。オーガ達は腕で頭を庇いながら、その進行は止まることがなかった。
ロイスとレインは目の前の光景を、息を飲んで見詰めていた。
「爆!」
ミリアンの次の言葉で、矢が爆発した。オーガにとっては小さな爆発だった。しかし、一体に数十本の矢が刺さった状態で、全身で次々に起こった爆発はオーガの身体をまるで、啄む様に削り取った。
「派手な援護だ。エレン、やるぞ。」
ギルスは目の前のオーガに剣を薙いだ。ロングソードがオーガの体を、抵抗なく擦り抜けた。
エレンは振り下ろされる丸太のような腕を、左の小盾で逸らし右手の剣をオーガの頭に突き入れた。
「ファイヤーボルト!」
ニーナの魔法がエレンの背後から、近づくオーガの頭を吹き飛ばした。ララとロロはミリアンの矢で、少なくないダメージを負ったオーガに、止めを刺して回った。
「お嬢様!」
「うにゃ!ララ、ロロ!ミリアンの守るのじゃ。」
ミリアンの言葉に気付いたニーナがララとロロを呼んだ。反対側の林からゴブリンが多数、飛び出してきた。
「お嬢!」
「問題ないのじゃ。妾達で充分じゃ。ミリアン。」
気付いたエレンが慌てたように声を掛けた。今にも走り出すところを、ニーナが不敵な笑みを浮かべて止めた。ミリアンが再び、矢を放った。
「散!」
ニーナとララがまるでダンスをするように、回りながらゴブリンを倒して行った。ミリアンに近づいたゴブリンが、ロロの刀の錆となって倒れて行った。
「凄い。ゼンさんの強さばかりが強調されているけど、みんな高い戦闘力を持っていたのね。」
「半数を手負いにしたとは言え、オーガを連携なしの単騎討伐。しかも、二人とも十体近くを仕留めている。」
ロイスとレインは殲滅されていくオーガを見ながら感嘆の声を上げた。
二体のオーガソーサラーと、五体目のオーガウォリアーを斬り伏せたゼンが、オーガキングの前に立った。ニヤリと笑うゼンに何を感じたのか、オーガキングが数歩下がった。
生き残ったオーガソーサラーが大きな杖を振り、奇妙な呻き声を出し始めた。
「魔物の詠唱って、新鮮ね。でも、遅い!」
キキのレイピアが消え、数本の銀光がオーガソーサラーの身体を走った。バラバラになって崩れ落ちるオーガを背にキキは、ニーナ達のいる馬車へと駆け戻った。
頷くキキを見て、ニーナは馬車に飛び乗った。
「さて、幕引きの時間なのじゃ。」
「ピキーィィィィィィィィィン」
紫の光がオーガキングの左脇腹から右肩へ抜け、頭上で反転し左肩から右脇腹へと抜けた。
「ピキーィィィィィィィィィン」
鍔鳴りが響くと、オーガキングの体がずれ始めた。右手が武器を取ろうとして、空を掴みオーガキングが驚いたかに見た。四つになって地面に落ちる寸前、やっと悲鳴が上がった。
ゆっくりと馬車に戻ってくるゼンが、マジックバックから弓を取り出した。歩きながら矢をつがえニーナ達に向けて放った。
「ゼンさん、何を。」
ギルスの驚きの言葉に、矢が空を切り裂く音が重なった。ドンと何かに当たり、エレンの足元に落ちた。落ちたものを見て、ニーナ達の目は大きく見開かれた。
「ゴブリンレッドキャップス。しかも、この大きさは、マスタークラスですよ。」
「あの距離から気付いて、視覚阻害を正確に撃ち抜いた。」
「今更、驚くことでもないのじゃ。」
「お嬢の言う通りだな。でも、助かったよ。」
「有り難う。お嬢を守ってくれて。」
ロイスとレインが仕留めたゼンの技量に驚き、ニーナ達は素直な笑顔でゼンを見た。
「さて、後片付けの時間よ。」
キキの言葉にゼンが溜息を吐き、ギルスとエレンも肩を落とした。年少組はナイフを出してポーズを取っていた。
「左耳だな。」
「仕方ないか。」
「私達が摂って行くので、二人はオーガを頼む。」
討伐部位を左耳に決めたゼンと立ち上がったギルスは、エレンの言葉に肩を落として歩き出した。
「ロイスとレインがいるからね。討伐部位なんて普段は集めないから。」
「どうしてですか。ギルドに持っていけば、褒賞金が出ますよ。」
「面倒なのじゃ。」
「普段は集めて、燃やして終わり。今日は貴方達がいるから、冒険者らしく討伐部位を集めるの。」
「レギオンの討伐ですから、金貨百枚以上は出ますよ。」
「それも今回が特別な理由なのじゃ。」
そう言うとニーナ達は耳を切り取りに向かった。キキは何処にあったか、椅子に座りテーブルに紅茶とクッキーを用意した。
「キキさんはどうしてお茶を飲んでいるのですが?」
「私は最後に仕事をするから。ほら、面白い物を見ることが出来るわよ。」
面白そうに言うと、キキは優雅に紅茶を口にした。ロイスとレインはニーナ達を見て、口を開けて固まった。
「このナイフはよく切れるのじゃ。」
「お嬢様、耳を切り取るのに斬撃の練習はしないでください。」
「本当によく切れる。お嬢、気を付けてね。」
「ロロ、新しい技を練習しない!」
「とりゃっ!」
エレンと年少組が耳を切り取り、ゼンとギルスが死体を集めて積み上げていった。
討伐部位は決めた部位を統一して切り取る必要があった。左と右の耳が混在していると、一体から取れるために水増しを疑われるためであった。殆どの冒険者は一番、嵩張らない耳を討伐部位に決めることが多かった。
「しかし、耳でオーガキングやウォリアーの区別がつくものなのか。」
「判ります。大きさと形が違うのですよ。私達にはウォリアーとソーサラーは無理ですけど、オーガとの区別はつきます。」
三体目を引き摺って来たギルスは、息を切らしながら聞いた。ゼンは二百キロを超えるオーガの死体を、無言で左右に一体ずつ引き摺ってきた。
ニーナ達は二時間ほどで耳を集め、ギルスは汗まみれになりオーガの山を作った。
「ゼンは汗一つかいていないのじゃ。ギルス、修練が足りんのじゃ。」
「冗談だろ。お嬢、ゼンさんと比べるな。」
「ファイヤーボール。」
ニーナとギルスを横目にキキはレイピアを抜いて、魔法陣を構築していった。
キキは出来上がったオーガの山に、酒樽程の火の玉を飛ばして死体を一瞬で焼き尽くした。
瞬きもせず口を開いたまま固まったロイスとレインを乗せて、ニーナ達は少し移動して野営の準備をし、ゼンは獲って来たアングリーブルを調理し始めた。
「美味しい。」
「明日は城塞都市に到着ですね。」
「のじゃ姫の出番が増えそうね。」
ロイスとレインは何処なく寂しそうに見えた。そんな二人に何を感じたのか、キキはニーナに言葉を掛けた。
「うにゃ、妾の出番とは何の事なのじゃ。」
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キ♀・微妙に増えているじゃない。
空♂:感想とかレビューとか、よく判らなかったのでデフォルト設定になっている。
キ♀:面白くもない、早く止めてしまえ!・・・って、書き込まれたどうするの?
空♂:(~∀~汗;;;)・・・(゜ノヽ゜)゜
キ♀:何それ?
空♂:焦ってから泣くかも。
キ♀:内容を語ろうかとかと思ったけど、ゼン。
ゼ♂: (-_-メ)ピッキィィィィィィン!
空♂:ε=ε=ε=(ノ^∇^)ノ
キ♀:また、逃げた。




