初めて事情を聴く
予告なく修正することがあります。
Sep-19-2020、一部変更。
夕暮れが近づき、一行は野営できそうな場所を探し始めた。
街道から少し外れたところに、開けた場所を見つけ野営の準備に取り掛かった。
冒険者や行商人をはじめ、旅をする者は少なくない。徒歩や馬車の速度の違いはあるものの、野営する場所は同じような距離になる。街道には何度も野営をしたため、開けた共通の野営場所、キャンプ場のような場所が点在する。ニーナ達はそんな場所を探したのだった。
「そんな場所があるのか。」
「私たちも驚いたわ。でも、魔法の研究するのには好都合だったの。」
「それでキキの魔法の威力は凄いのじゃな。」
キキはゼンと共に、時間が緩やかに流れる不思議空間で、魔法の研究をしていたと説明した。ドラゴンや魔法が存在する世界、そんな場所もあるだろう程度の理解かもしれない。
「不思議空間に入る前に、植えた小さな苗木が、出てきた時には森になっていて、驚いたわ。」
「それって百年以上は経っているのでは。」
「そんなわけで、私達はこの世界で判らないことが多いのよ。」
ゼンとキキの説明に、ニーナ達は頷いた。一人だけ静かに二人を見詰めていた。
「そちらの事情は理解した。出来る限り今の常識を教えよう。」
「こちらのことも話しておいた方がいいな。」
ギルスが請け負うと、エレンがニーナを見ながら言った。ギルスもニーナも軽く頷いた。
「すぐに戻る。」
「お願いね。処理はしてきてね。」
キキの言葉にうなずき、ゼンは森に向かって走って行き、すぐに見えなくなった。
「おい、この辺りでもまだ、森は危険だぞ。」
ギルスの言葉に、全員が頷いた。
「大丈夫。それより貴方達のことを簡単に教えて。」
少し間があったが、話が始まった。ゼンの身が心配だったのだろうが、昼間の戦闘を思い出して無用の心配だと思ったのかもしれない。
ニーナはバイマン男爵の三女で愛妾の子であった為、領都に住まわせてもらえず、辺境の母親の故郷で暮らしていた。母親を病で亡くしたため、町の統治を任されていた祖母と一緒に暮らしていたと語った。縁談相手は伯爵でニーナを、嫁にくれるなら男爵に融資すると提案したらしい。
「体のいい人身売買ね。」
ニーナを欲したのはキリオン伯爵と言い、特殊な性癖の持ち主で、幼女を娶っては殺していると黒い噂のある人物だった。表向きには病死や事故死になっているが、使用人たちから漏れたのか、噂となって知られていた。
バイマン男爵がキリオン伯爵の資金で力をつけると、鉱山開発を競っている、隣接するトルエル子爵が困る。この結婚を妨害すべく、トルエル子爵が刺客を送りニーナを殺そうとしたと確信していると、ギルスはキキに告げた。
「ゼンも装備が綺麗過ぎると言っていたわね。私も同感ね。抜剣って言っていたから。」
「この先も恐らく、襲撃があると思う。」
ギルスの言葉にニーナもミリアン、護衛達も何かを決意したようだ。
「ところで、ゼンは何処へ行ったのじゃ。」
キ♀:苦しい設定を信じてくれた。
ゼ♂:・・・
空♂:この世界は魔法師が少な目なので、魔法の知識を持っている人間は少ない。
キ♀:のじゃ姫は可哀想ね。