トリニティ・マジカル・ガールズ~ニーナ
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エルノワール最後のニーナが舞台に上がると、興奮していた観客達がぴたりと静まり返った。
ニーナはレイピアを抜き放つと、目の前に掲げた。集中しているのか目を閉じて、少し俯き加減に立っていた。ゆっくりと顔が上がると、猫に似た目が見開かれた。
「シャイニング・ノヴァ!」
ニーナがレイピアを振ると、的である石柱群の中心に魔法陣が現れた。白い光が全ての石柱を包み込むと、上の方からゆっくりと溶け始めた。溶ける速度は徐々に速くなり、数十秒で無数の石柱が地面に溶岩の様に広がった。
「石の融点を超えたと言うのか。ハーフのダーク・エルフは風を操り、真空刃を生み出した。しかも、超短文詠唱でだ。そして、あのエルフの血を引く少女は、同じ超短文詠唱で、数千度の炎を生み出したと言うのか。」
貴賓席から身を乗り出して、アストリアは目を見開いていた。横に立つメフィストは薄ら笑いを浮かべて、アストリアとニーナを見ていた。
そして、三回目の披露となった。
「あの上級魔法を見て、挑む者がいるとは。流石は古の氏族ね、でも、決着の時よ。あの子達、竜種から手ほどきを受けた。この世界では前代未聞のはず。人間種が竜種の魔法を使う。見せてやればいいわ。」
腕を組んで立つキキは、笑みを浮かべて独り言の様に呟いた。キキが呟いた時、客席の一番後ろの人影の口元に笑みが浮かんだ。
三回目の披露に進んだのはニーナ達の他に、二人のエルフと一人の魔人族だけだった。三人とも緊張した面持ちで、舞台に拳を固く握って立っていた。最初に魔人族が進み出た。
手に持っている大杖には苔が生えている。魔人族の女性は、目を閉じたまま大杖を頭上に掲げた。目を開くと黒い瞳がエメラルドに輝いた。
「深き森を歩む私は木漏れ日を見た。生まれ生まれて死を超えて生まれ。永遠に繰り返される死と生の果てに、大いなる力を得ん。」
魔人族の女性は長い詠唱を始めた。十メートル程の魔法陣が出現し、詠唱と共に模様が増えて行った。魔法陣から光が立ち上り、その光は徐々に強くなっていった。
「我、古の契約に従いて、偉大なる貴方の力を借りんと欲す。深き森の賢者よ。今、我が前にその力を示さん。」
魔法陣に様々な模様が浮かび上がり、強い光を放ち始めた。十分近い詠唱は、魔人族の女性を極端に疲弊させていた。額には珠のような汗が浮かび、魔人族の女性はやつれている様に見えた。実際、その目の下には黒い隈が出来、唇は渇いてひび割れさえ作っていた。
「フォレスト・ラッシュ!」
魔人族の女性が最期の呪文を唱え終えると、地面から無数の木々が突き出て来た。その先端は鋭く、まるで巨大な槍の様に見えた。
客席に近い場所に突き出た木の槍は、闘技場の結界に阻まれて無残に砕け散った。
それでも、目の前に突き出して、砕け散る木の槍に驚いた観客が悲鳴を上げた。
「ロックなら一秒なのじゃ。」
「お嬢様、あの方は一生懸命に魔法を発動したのですよ。そんな風に言ってはなりません。」
欠伸を噛み殺したニーナが言うと、ミリアンが咎める様な目で窘めた。次に進み出たエルフはタクトの様な杖を持っていた。
キキの眼が金色に光ると、口元が笑みの形を作った。
「風のタクト。ゼン、見ている?貴方が喜びそうなアイテムを持っているわ。」
「見ている。あれは英雄級の風のタクトだ。俺は伝説級を持っている。あと、シルフが変化した風のタクトもある。」
「それって、神話級でしょ。何時の間に手に入れたのよ。」
「何年か前の風の谷だ。青い衣の王女はいなかったが、面白いアイテムを幾つかゲットした。」
その後もキキとゼンは取り留めのない会話をしている間に、エルフの長い詠唱は終わりに差し掛かっていた。
長い詠唱に船を漕ぎ始めたニーナは、エルフの最後のキーワードに驚いた様に目を開いた。
「シルフィード・バースト!」
魔法陣が光り輝くと、上空に竜巻が出現した。目にも止まらない速度で、集束する風が地上に降り立った。風は地上に衝突すると、四方八方に四散した。闘技場の結界に罅が入り、観客達から小さくはない悲鳴が上がった。
「詠唱の長さは置いといて、威力はヒューイのソニック・バーストに匹敵するのじゃ。」
「そうですね。あの詠唱が短くなれば実用性が有りますね。」
「ミリアンならやるのじゃ。」
ニーナとララがミリアンに目をやると、話しを聞いていたのか少し得意気なミリアンがいた。
「ふん、あの魔人族はドライアドだろ。一族の秘術だと思うが、エルノワールの上級魔法を見た後では、あれが禁呪だとは思えんな、」
「同感ですね。プラトーワイズ氏族の奥義は、ハーフのダーク・エルフに見劣りしましたね。」
「エルノワールの三人はキキと言う魔法師から、色々と教えらているのだろう。お前の言う、到達者は見る価値があるな。」
「御意。」
興奮していたアストリアは、二人の魔法を見て少しだけ落ち着いた様に見えた。
三人目が出て来るまで間、アストリアは饒舌に語り始めた。アストリアの言葉に笑顔で、相槌を打つメフィストは時折、何かを気にする様に視線を巡らした。
「そろそろ、私も限界に近いのですが、準備はまだですか。流石に、私も切れそうです。」
「準備完了。」
「あら、シルヴァンワイズの技を見て見たいのよ。それに、のじゃ姫達の魔法も見たいでしょ。ドラゴニック・マジックよ。私も見たいのよ。引き延ばしてくれたら、私の禁呪を見せてあげる。」
「とっても、魅力的な提案ですね。ゼン、貴方も取って置きを見せて戴けますか。」
「ダンジョン・コア。」
キキとゼンは誰にも気付かれずに、テレパシーの様な会話をしている、同じ様にメフィストは、傍にいるアストリアにさえ、気付かないようにキキ達と会話していた。
ゼンの言葉を聞いたメフィストは、アストリアの横で凄まじい笑顔を浮かべた。その笑顔を見れば、全員が悪魔の笑みと言ったに違いない。そう、メフィストはロードを冠する悪魔なのだから、何ら間違っている訳ではない。
「ほう、お前でも最古のエルフ、シルヴァンワイズの秘術は気になるのか?」
「それは勿論です。あの森に棲む最古のエルフ。ここで見せる術式には興味があるます。」
「ふん、私の知らない一族の魔法は無い。もしも、私の知らない魔法なら、私はここで私の生に終止符を打つと誓うよ。」
「ほう。まっ、貴方の知らない術式は出して来ないでしょう。私も貴方同様、エルノワールの三人が見たいのでしょ、三人の魔法少女をね。」
暗く危険な表情で話すアストリアと、無邪気に期待しているメフィストは対照的に見えた。
最古のエルフと呼ばれる、シルヴァンワイズ氏族のエルフの女性が舞台に上がった。
作戦について訊いて来るティアを手で制したキキは、舞台に何の気負いも無く堂々と立つエルフを見た。
「うにゅ、お婆様の氏族なのじゃ。妾も前で見るのじゃ。」
キ♀:時々、思うの。前書きは頻繁にしているわね。
空♂:うにゃ、誤字脱字は仕方ないのだ。
キ♀:誤字脱字だけは無いでしょう。
空♂;最近、ほぼファースト・テイクになって来たから、後でこっそりと・・・。
キ♀:それは許されるの?最初に読んだ読者と、修正後に読んだ読者はどう思うのかしら、
空♂:うにゅう。出来るだけ流れは変えていない・・・はず。
キ♀:今後も有るのかしら、
空♂:無いと確約は出来ないのだ。まあ、自己満足が大きいから、これでいいのだ。
キ♀;どうなのかしら。私としてはしっかりとファースト・テイクを決めて欲しい。
空♂:出来る限り善処します。まだまだ、続きます。




