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そして、お嬢様は旅に出る。~ニーナの大冒険~  作者: 沢山空蔵
オリオポース皇国~武闘大会編
267/461

大武闘会~本戦、総合部門~決勝戦と表彰式

予告なく修正することがあります。

 ヤヨイとティアの眼が不気味な光を放っていた。


「ふっひっひっひ。流石はゼン。いえ、ゼン様。いやいや、ゼン大明神。これでうちらの賭け金は白金貨を超えました。どの事業に投資をすればええやろか。うちは儲けるで。」

「これだけの資金が有れば辺境区の大きな問題が解決する。生活保護の充実、街道整備と警備。むっ、忙しくなるな。コリン、ジェイク。明日は辺境区で会議だな。」


 ヤヨイとガイトス辺境伯は別の方向で眼を輝かせた。アリオン伯爵とスターライト騎士団は更に別の方向で、それぞれの眼を輝かせていた。いや、涙を流す者もいた。


「これだけあれば借金が帳消しになるぞ。」

「これで無理をしてダンジョンにアタックすることも無くなる。」

「ああ、私の杖を取り戻せる。長かった。本当に長った。」


 アリオン伯爵を筆頭にスターライト騎士団は、借金返済と質入れのアイテムを夢見ていた。涙を浮かべて震えるスターライト騎士団を見たニーナ達は、不思議そうな表情で首を傾げた。


「良い事。あんな大人にはなってはいけないのよ。」

「よく判らないけど、キキ様の言う通りだと思うな。です。」

「アリオン卿、色々と我慢を知った方が良いのじゃ。」


 キキの言葉にニーナとロロが反応し、ミリアンとララが残念な視線をアリオン伯爵達に向けた。

 舞台に出たアシルと魔法師は対照的だった。全くの無傷で観客に手を振る魔法師と、ギルスに付けられた傷が光を放つアシル。誰が見ても魔法師の勝ちは揺るぐ事は無かった。当然、賭けも魔法師の人気が圧倒的に多かった。


「この試合は賭けても駄目ね。増えるどころか、胴元に手数料を払ってマイナスね。」


 ヤヨイとティアは大きな溜息を吐いた。ガイトス辺境伯とアリオン伯爵も小さくは無い溜息を吐いた。決勝戦の前に三位決定戦が行われた。


「長引くとアシルが回復するかも知れないわね。」

「問題ない。」


 ゼンの言う通りギルスは姿を隠した盗賊を瞬殺して見せた。開始の合図と同時に姿を消した盗賊は、驚異的な踏込で迫ったギルスのタックルを受けて場外へと吹き飛ばされた。


「何故、俺の位置が判った。あの魔法師は魔道具を持っていた。しかし、お前は持っていない。」

「自在馬にすら気取られずに狩るハンターを知っている。その人に鍛えられたからな。」

「自在馬を欺くハンターか。盗賊ギルド始まって以来のアダマンタイトクラスがいると聞く。俺の穏行術は魔法に匹敵すると言うのに。」


 その頃、ゼンは再び老人に変装していた。勝ち上がった魔法師は老人のゼンを見つけると、笑みを浮かべて足早に近づいて来た。


「おお、御老人。おかげで勝つ事が出来ました。次はあの悪魔変化と決勝戦です。」

「格安アイテムなので一度、使用すると砕けてしまうのじゃ。」


 ゼンの言葉に驚いた表情を浮かべて、魔法師は眼鏡とガントレットを取り出した。魔法師の手の中で二つの魔道具がボロボロになって砕け散った。


「おお、壊れてしまうとは何事だ。」

「そんな貴方に朗報です。この一見、普通のガントレットに見えるこのガントレットは、悪魔に効果絶大の神聖属性が付与されています。これで強力なトゥルー・デーモンもあっという間に消滅です。魔石を補充して魔力の続く限り使える聖なるガントレット。今なら白金貨二百枚。」

「白金貨二百枚。そんな大金、持っている訳が無かろう。」

「そんな貴方に朗報です。三回まで使える廉価版、滅びろ悪魔君スリー。効果は同じですが三回までしか打てません。通常金貨千枚のところ、今日は私の誕生日。本日の特別価格はどどんと値引きの大銀貨一枚。しかし、これは一つだけの値段ではありません。何と両腕セットで大銀貨一枚。今なら、オマケの一発君が付きます。」

「買うのだ!」


 魔法師は勢いよくゼンが出したガントレットを買うと、満面の笑顔を張り付けて大股で歩き去った。

 決勝戦が始まると、悪魔変化したアシルは魔法師の攻撃を受けて塵となって消えた。予想外の威力に魔法師は目を見開いて、両腕のガントレットを見た。銀色に輝くガントレットは輝きを失うと、ボロボロと崩れ去った。

 大半の予想通りの結末だったが、客席からは大きな歓声と拍手が巻き起こった。賭けはダメージの残るアシルの敗北が予想されていた為、成立することは無かった。


「あの魔法師の魔道具は魔法師ギルドが作った物だろうか。」

「改良すると莫大な富を生むぞ。」

「商人ギルドに先を越されるな。」

「魔法師ギルドに戻る前に拉致するしかないな。」


 準決勝と決勝は魔法師より、勝利に導いた魔道具に注目が集まっていた。様々な場所で、様々な人間が固い決意を胸に、獲物を狙う肉食獣の視線を魔法師に向けていた。

 会場では総合部門の優勝者である魔法師と三位のギルス、武術部門の優勝者であるティアとが二人の貴族と立っていた。


「まさか、あの三人がまけるとわな。あの二人は何者だ。」

「仕方あるまい。運営に潜り込んだ奴らに殺らせよう。」


 黒いフード達が音も無く移動し始めた。また別の場所では三人の騎士が立って、ギルスとエレンを見詰めていた。


「バトルモード。下級氏族の二人がな。限られた氏族の限られた戦士が発現出来る伝説の技。俺でも無理だぞ。」

「グランレオのお前でも無理か。セイントウルフの俺も出来ねえな。お前はどうだ。ホワイトタイガー。」

「私も出来ないな。それにしてもあの二人ならリーン老も欲しがるだろう。」

「ふっふっふ、本当に欲しいな。それより、邪気を感じる。そろそろ、行くとしようか。ガイトスはスターライト騎士団と共に動いた。」


 三人の騎士は客席を離れ、舞台へと歩いて行った。

 舞台では進行役がそれぞれの名前を呼び、客席から改めて称賛の拍手が起こった。その中で、数人が怪しげな行動をしていた。ギルスのパーティーメンバーとしてニーナ達も、舞台の近くに招待された。

 ニーナ達の耳元に妖精がいる事に、誰も気付く事は無かった。ゼンとミリアンは別行動を取っていた。ゼンは会場内にいる事は確かだが、キキですら居場所を察知することは出来なかった。そして、ミリアンは自在馬のヴァルに跨り、会場の上空に待機していた。


「スコープは?」

「はい、問題有りません。他の眼鏡より軽い付け心地です。とても、良く見えます。」

「矢の弾道に連動している。」

「承知しました。」

「キキ、マーキング。」

「ミリアン。赤が敵よ。動いたらスナイプして。」

「はい。狙い撃ちます。」

「のじゃ姫達は皇帝に出来るだけ近づいて。私は少し後ろから援護する。ティア、マルスをお願いね。エンジュ、聞こえて?」

「聞こえていますわ。チビ姫達も私の声が聞こえていますの?」


 エンジュの声にニーナ達の返事が返って来た。皇帝の更に後ろに特別席が設けられていた。そこに五メートルを超える巨人と、背中に翼を持つ人間が座っていた。更に後ろの一段、高い場所にエンジュは座っていた。特別試合に出る巨神族と天使族は亜神であった。亜神故に皇帝より高い位置に座り、神格を持つエンジュは更なる高みに座っていた。


「ふっふっふ、遂に妾達の本番が始まるのじゃ。」

空♂:さて、これからが本番だな。

キ♀:特別試合ね。ゼンとエンジュの戦いは怪獣大決戦ね。

空♂:うにゃ、皇帝暗殺計画の発動。

キ♀:そう言えば、悪魔信奉者達の計画では表彰式で暗殺すると言うものだったわね。

空♂:それが少し、難しいのだ。

キ♀:そう聞いたわ。それでビリヤードでリフレッシュしたのでしょ。

空♂:うにゅう、シュート率が悪くて、逆にストレスが・・・。

キ♀:本末転倒ね。

空♂:でも、ブレイクキューを新たに購入。来週には届く。

キ♀:無駄使い?

空♂:失礼な。新しい境地を開拓するのだ。更にはシャフトも新しくするのだ。

キ♀:本当、無駄使いね。それより、皇帝暗殺に集中して欲しいものね。

空♂:勿論、真剣に臨みます。こっちもビリヤードも。

キ♀:はあ、ビリヤードはともかく、こっちは真剣にしてね。

空♂:やるのだ~!

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