表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/461

初めての別れ

予告なく修正することがあります。

Sep-19-2020、一部変更。

 翌朝、朝食を摂りゼンとギルス達、護衛は出発の準備をしていた。年少組に混じってエレンも練習に参加していた。

 ドルノン達は夜明けとともに、礼を言って出発した。ジョエルとドルノンは手に入れたマジックバッグを、撫でながらニヤニヤとだらしない笑みを浮かべていた。


「何とも嬉しそうにしておったのじゃ。」

「馬車一台の大きさが二つですよ。今までより三倍の商売が出来ます。」

「うにゅ、それは笑いが止まらなくなるのじゃ。」


 ハンターウルフを討伐したり、ゴブリンやオークの小さな群れを討伐したりの数日を過ごした。


「お嬢、明日の野営が終われば次の町に到着する。」

「ベットが恋しいのじゃ。」


 そして、夜が明けた。

 いつもの朝練に珍しくゼンが、ニーナとミリアンの練習相手をしていた。

 ギルス達は野営の後を片付けて、馬車に積み込んでいる時、ズンターが荷物を落とした。


「毛布でよかったのじゃ。」

「お嬢の食器なら大事になっていたな。給料が当分、無くなるところだ。」

「・・・ははは。」

「今日はズンターの乗りが悪いのじゃ。」


 ギルスとニーナの言葉に、ズンターは苦笑を浮かべて荷物を積み込んだ。


「よし、忘れ物は無いな。そろそろ、出発しよう。エレンはいつものように確認を頼む。」

「了解。お嬢、早く来てくれ。忘れ物になるなよ。」

「大変なのじゃ。ミリアン、走るのじゃ。」

「お嬢様!御淑やかにお願いします。」


 いつもの出発前の光景だった。ララとロロも笑顔で、御者台に座って手綱を持って待っていた。珍しく、走り出すニーナをゼンが襟をつかんで止め、馬車まで付いて行った。

 ニーナ達が馬車に乗ろうとしたとき、剣を抜いたズンターとベンがニーナに向かって振り下ろした。

 ゼンのマントが翻り二人の視界を遮った。同時に抜いたナイフを振り向きもせずに、二人の胸に突き立てると、ズンターとベンの動きが止まった。


「馬鹿がっ!」

「よかった。」

「ありがとう。」


 ゼンが吐き捨てると、ズンターとベンが寂しそうな笑顔を浮かべて返した。


「別れを済ませろ。のじゃ姫、話を聞いてやれ。二人が最後の暗殺者だ。」

 

 いつもの声とは違うゼンの声に、キキは何かを感じたのか顔を伏せた。鍔広のトラベラーズハットがゼンの表情を隠していた。何が起こったのか理解できないようなニーナの横に、ゼンが脛のナイフを抜いて立っていた。


「お嬢、俺達はキキさんが話していた暗殺者だ。俺は二代目だった。」

「昨夜、記憶が戻った。へっ、止められるまでお嬢を殺そうと思っていた。」


 苦しそうに時折、血に咽て咳をすると、その度に口から血がこぼれた。そんなズンターとベンを、ニーナは大粒の涙を流しながら黙って見つめる。


「これでよかった。赤ん坊の頃から知っている、お嬢を殺さずに済んだ。」

「お嬢、俺達はこれで解放される。だから、泣かないでくれ。」

「隊長、すまねえ。」

「驚かせたかよ。ごめん・・・ごふ。」

「時間だ、ギルス!エレン!逝かせてやれ。」


 ゼンは脛にナイフを戻しながらギルスとエレンに告げ、二人に刺さったままのナイフを掴んだ。ギルスがズンターの、エレンがベンの後ろに立った。

 二人が目を固く閉じると、一筋の涙が頬を流れ落ちた。二人はゆっくりと剣を取り出して、振り上げたところで固まった。


「殺すことも慈悲だと知れ。」


 ゼンの言葉に決心したのか、目を開くと首の後ろに剣を振り下ろした。

 ゼンは二人からナイフを抜きニーナに振り返り、頭にそっと手を置いた。


「二人は前に話した暗殺者だったのね。昨日、早馬に乗った男が命令を持ってきて、何とかの加護が鍵だったのでしょう。それまで二人は、自分達が暗殺者だったことを忘れていたはずよ。」

「ゼンさんが居なければ、お嬢は殺されていた。何が起こっているのか判っていた。でも、信じられなかった。俺は未熟だ。」


 エレンはベンの頬に手を置き、ズンターの頭を抱えて俯いていた。肩を小刻みに震えさせ、ベンの顔に涙が落ち続けた。

 キキがニーナを抱きしめると、一際大きく声を上げキキに抱き着いて泣いた。


「よく判ったわね。」

「二人の感情が抜け落ちた。」

「貴方と同じね。」


 キキの言葉にゼンの返事は無かった。キキは何を感じたのか、ゼンを静かに見詰め溜息を吐いた。

 ニーナの希望で深い穴を掘って、埋葬することになった。

 石に二人の名前を刻み、花を添え墓石に言葉が刻まれた。


「優秀な護衛、勇敢に戦って、此処に永眠る。」


 姉弟も泣き腫らした目を懸命に前に向け、口をきつく結んで操車に集中していた。ズンターとベンの馬はゼンとキキが乗って進んだ。馬車のなかではミリアンがニーナを抱いていた。

 誰も何も話さない沈黙の道行。その日は早めに野営場所を探し、食事の準備をした。


「ゼン、私がのじゃ姫達の練習に付き合うわ。料理をお願い出来る。」

「了解。」


 キキがニーナ達の練習に付き合い、ゼンが料理を始めた。ギルスがぽつんとゼンの近くに座って、調理を眺めていた。


「俺は何も出来なかった。何もしてやれなかった。」

「彼等は笑って逝った。そして。彼女を全力で守ると誓え。」

「うん。」


 ギルスの頬を一筋の涙が落ちた。その手にはズンターとベンの騎士メダルが有った。


「彼等はお前に託したのだ。」


 ニーナ達、女性陣の練習は激しく、ララもロロも一心不乱にナイフを振った。

 エレンはキキに模擬戦を挑み、何度も倒れ起き上がって向かって行った。何度倒れただろう。仰向けに倒れ、腕で隠した目から涙がこぼれた。


「強くなる。私はお嬢を守る騎士になる!」

「真直ぐに進むのよ。」


 キキの言葉にエレンだけでなく、ニーナ達は大きく頷いた。


「乗り越えて見せるのじゃ。妾は強くなるのじゃ!」

キ♀:悲しい別れ。

空♂:ズンターとベンはトルエル子爵の暗殺者だった。

ゼ♂:ゴゴゴッ。

キ♀:怒っているわね。

ゼ♂:ゴゴゴッ。

キ♀:血の報復ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ