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そして、お嬢様は旅に出る。~ニーナの大冒険~  作者: 沢山空蔵
東部海域編
192/461

東方海洋共和国~歓迎祭り準備

予告なく修正することがあります。

May-2-2021、一部変更。

 ギルスは溜息を吐いて、エレンを見て頷いた。エレンはギルスに目で何かを伝えると、ギルスはニーナの横に立った。


「お嬢、ゼピュロス様も天竜様だぞ。見た目は同じぐらいに見えても、遥かに高貴で長生きしているのだぞ。」

「うにゅ、判っておるのじゃ。しかし、ボレアース様やノトス様には威厳があるのじゃ。それにとっても優しくしてくれるのじゃ。エウロス様は微妙じゃが、優しくしてくれるのじゃ。しかし、ゼピュロスは違うのじゃ。小物なのじゃ。」


 エディ子爵はギルスの言葉に大きく頷き、ニーナの言葉に青ざめて再度、椅子にぐったりともたれ掛った。

 ボレアースとノトスが大袈裟に頷き、エウロスが微妙な笑顔を作った。足をばたつかせるゼピュロスを見て、エレンは溜息を吐いて、ララとロロは口を押さえて肩を震わせていた。


「ゼンは屋台が忙しくなるはずだから、私がのじゃ姫と相手をするわ。海賊が十数人とリヴァイアサンね。後は何かあるのかしら。亜竜種がもう少しいると良いのだけど。ララとエレンも連れて行くわね。」


 キキがショッピングにでも行くと告げるように言うと、ギルスとロロは微妙な顔で首を傾げた。


「おいらは?」

「ゼンの屋台を手伝ってね。今回は女性陣だけで、クエストチャレンジよ。」


 キキの返事を聞いたロロは、少しだけ残念そうな表情を浮かべて頷いた。

 ゼンは静かに紫煙を吐き出して、微笑むキキと微妙な表情のニーナを見た。


「レベルアップ。」

「そうね。多分、三になるわね。それにララも戦闘スタイルを変更したのよ。ララは水と土の適性が高いの。水はミリアンと違って攻撃特化よ。土は防御特化でバランスは取れていると思うの。それに剣術から棒術に変えているから、丁度いい実践テストと行きましょう。」


 ゼンの呟きに、キキが答えた。二人の言葉は誰にも届かないのか、それぞれが思い思いに話していた。

 ゆっくりとボレアースとエウロスが立ち、ゼンとキキを細めた眼で見詰めた。


「このボレアースとエウロスが手ずから教えたのよ。ララ、活躍の報告を待っているからね。」

「はい!」


 ボレアースとエウロスがララの両脇に立ってララの肩に手を置いた。ララは二人の天竜からの励ましに、真剣な顔をして力強く頷いた。

 

「うにゅ、何時の間にそんなことをしておったのじゃ。」

「ノトスを泣かせた後ぐらいからか。ララは・・・ぐっ、と、特異種だからね。」


 驚いたニーナが声を上げると、ライ辺境伯やエディ子爵も驚いた目をララに向けた。ヴァルボルト総団長は、大きな溜息を吐いて椅子に腰を落とした。

 キキに睨まれてボレアースの顔が引き攣ったのを、ニーナとミリアンが首を傾げて見ていた。

 ヴァルボルト総団長はティムを呼び、頭を突き合わせて何やら話し始めた。

 ティムの言葉に目まぐるしく表情を変えるヴァルボルト総団長を、ティナとティガは涙目で口を押さえて肩を震わせた。暫くすると、真剣な面持ちでヴァルボルト総団長は部屋を後にした。

 後には溜息を吐くティムと、テーブルを叩いて笑うティナとティガがいた。


 そして、使節団が到着する前日になり、拡声の魔道具を持ったライ辺境伯が町の中央に立った。


「明日はポセドニア共和国からの使節団が到着する。五日間の滞在だ。エルノエンジュ、ドラゴニア、ハートランドの特産品を売り込む良い機会だ。皆の者、今日は予行演習だ。不備があればどんどん指摘する。明日に向けて改善するべき点は全て改善するぞ。今日は王国から資金援助を貰った。今日は全員、無料だ。」


 住人から大きな歓声が上がった。その中に赤い異国のドレスを着て、手を上げるエンジュがいた。

 ライ辺境伯は眼を剥いて一瞬、息を飲んで軽く頭を振って演説を続けた。


「おっと、全員じゃない。貴族は金貨五枚を商人ギルドに支払ってくれ。それと大商人や金持ち連中は金貨三枚だ。まあ、違うと思う奴は支払わなくてもいいぞ。」


 ライ辺境伯の言葉に数人の商人が拳を握って、我先にと商人ギルドに走って行った。

 ニーナの屋台に子ども達が集まっていた。


「美味しいご飯が食べたいかー!」

「おおっ!」

「報酬が欲しいかー!」

「おおっ!」

「エルノワールは最高かー!」

「おおっ!」


 何時の間にか用意した酒樽の上で叫ぶニーナに続いて、多くの子ども達が声を上げて拳を振り上げていた。ライ辺境伯は優しい笑みを浮かべて、シェリーナやヴァルキュリア達は目を丸くして眺めた。


「明日は妾達には別の仕事があるのじゃ。頼り無い男どもを助けてやって欲しいのじゃ。頼んだのじゃー!」

「おおっ!」


 女の子達が一際、大きな声で拳を振り上げた。ロロが拳を振り上げて途中で下した。

 手伝いに来た大人にゼンが調理法を教え、トロンが人数を数えてレシピの代金を徴収した。

 ゼンは屋台を四台に増やして、数人の大人に調理を任せた。子ども達が出来上がった料理を配り、順調に売り上げを伸ばしていた。海鮮焼きそばと唐揚げが好評で、住人の胃袋を満足させた。

 調理を手伝いの大人達に任せ、ゼンは屋台の近くに戦闘シミュレーターを設置した。


「あれは俺の屋敷に置いたあれか。」

「ふふ、あれの別プログラムよ。的が出て弓で射るのよ。点数が出て得点によって、特別料理が賞品としてもらえるの。」


 キキから話を聞いたライ辺境伯が、真っ先に魔道具の前に立った。高得点を叩きだし、ゼンから自分の腕ほどある、焼いた蟹の足を受け取った。シェリーナが慌てて魔道具に向かい、同じく高得点を出して満面の笑みで蟹の足を受け取った。

 ミリアンが二人の記録を遥かに上回って、見物人たちの盛大な拍手を受け取った。見ていた子ども達が行列を作ると、冒険者や盗賊ギルドの組合員達も子ども達の後ろに並んだ。

 無理矢理、列の前に入ろうとした貴族が、エレンの鉄拳制裁を受けて白目を剥いて動かなくなった。


「うにゅにゅにゅ、ミリアンの記録は誰も抜けないのじゃ。」

キ♀:日付を間違えたでしょ。

空♂;うにゅ、間違えていない。ただ、投稿するときに日付が変わっていた。

キ♀:まあいいわ。しかし、お祭りの多い町ね。

空♂;エンジュの町でもあるから。

キ♀:彼女は神格持ちだと言う事を忘れているわ。

空♂:世界の脅威を取り除いているとは言え、霞を食べて生きる存在ではないからね。

キ♀:神と言っても色々ね。ギリシャ神話は生々しいし、日本神話も同じような描写が多いわね。

空♂:多神教に多いね。ひょっとすると、多神教の神々は人間に近い存在だったのかも知れない。

キ♀:かもね。人間は自分達の能力を超えた全てを、神として敬ったのかも知れない。

空♂:一神教は・・・なんて言うと、色々と突っ込みが入るかも。

キ♀:そうね。ところで、今回は私達、女性陣でクエストチャレンジね。

空♂:今回は他にも目的が有るし、貴方がいれば充分でしょ。

キ♀:海上なら台風や大波で一瞬で終わるけど?

空♂:もう少し、見せ場を作って欲しい。

キ♀:どうせ作るつもりでしょ。まあ、いいわ。大人しくしてあげる。でも、見ているわよ。

空♂:はい、判っています。^^;

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