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そして、お嬢様は旅に出る。~ニーナの大冒険~  作者: 沢山空蔵
東部海域編
178/461

変わりゆく南部辺境区

予告なく修正することがあります。

May-2-2021、一部変更。

 エルノエンジュに戻ったニーナ達は、冒険者ギルドに顔を出して帰ってきたことを告げた。

 受付にアカネが座ってニーナ達を迎えた。


「うにゅ、アカネがいるのじゃ。」

「お帰りなさい。いない間にライ様がギルドマスターに就任されました。エルノエンジュは私が副マスターになりました。エルエルドラゴニアも副マスターが新設されました。魔法師ギルドと商人ギルド、盗賊ギルドにもギルドマスターが派遣されました。こちらはエルエルドラゴニアとハートランドに副マスターが新設されています。」


 アカネから説明を聞いたニーナ達は、少し驚いた様な表情を浮かべて領主館に向かった。

 

「うにゅ。また、ゼンがいないのじゃ。」

「途中でエイゴオックスの群れを見つけたのよ。大きい個体が多かったわ。久しぶりに血相を変えたゼンを見たわ。」

「主様、絶対に逃がさず狩って来る。です。」


 ニーナ達は唾を飲み込み、キキまで喉を鳴らした。そんな時に、シェリーナがトライ・ヴァルキュリアとやって来た。


「ニーナ、何かいいことがありましたの?」

「うにゃ、何でもないのじゃ。知れると取り分が減るのじゃ。」

「何が減るのだ?」

「うにゃ、何でもないのじゃ。それより、王妃殿下は何用なのじゃ。」


 ニーナは挙動不審になってシェリーナに聞いた。シェリーナは値踏みするような眼を向けて、ニコリと笑って話を続けた。


「トライ・ヴァルキュリアはエルエルドラゴニアの各ギルドの副マスターになりました。アリスが冒険者ギルド、クレアは魔法師、ジルが盗賊ギルドです。」


 ニーナ達は驚いた表情を浮かべ、黙って聞く事しか出来なかった。突然の出来事にニーナ達の理解が追い付いていないと思われた。


「三つの町の各ギルドは冒険者ギルドを除いて、エルノエンジュにギルドマスターが常駐します。冒険者ギルドはライ卿がギルドマスターになりましたので、ハートランドに常駐することになります。国境の森もダンジョンも近いので、ハートランドに居る方が都合が良いでしょう。」

「なんだか、各ギルドも南部辺境区を独立させたように感じるな。」

「各ギルドもエルノワールを持て余しているのです。遂にトロンもエルノエンジュで商人ギルドで、マスターに就任しました。ティム達は盗賊ギルドに登録して、ここに住むことにしたようです。しかし、トロンは七星剣、ティム達は国王直轄の牙であることは変わりません。」


 年少組は内容を理解出来ないのか、ゼンの帰りを待ち切れずに外に出た。ギルスとエレンは神妙な面持ちで、シェリーナの話を聞いていた。


「この辺境区でほぼ、独立した自治を認めると言う事ね。まあ、その方がこちらもやり易いけどね。シェリーナ、ここの扱いも決まったの。」


 黙って聞いていたキキは、悪戯猫の様な表情でシェリーナに聞いた。


「昨日、王宮から連絡がありました。私は側室を離れ、エルドラゴニア竜友伯となります。シェリーナ・ララ・エルドラゴニアです。ミレーナとレイが成人すれば、レイが婿入りしてエルドラゴニア竜友伯となります。今後の私は竜友伯夫人ですね。」

「ロイも爵位を?」

「ロイは冒険伯になるそうよ。竜友伯は公爵相当、冒険伯は男爵相当の位置づけになるそうです。そして結婚は二年後よ。貴方達エルノワールにも式典には参加してもらいます。エルドラゴニアに大きな貢献をしていますからね。これでやっと私も堅苦しい言葉使いや気遣いから解放されます。」

「そう、三つの町を独立したものにしたのね。ライの思惑通りと言うわけね。でも、不満に思う貴族も居るでしょうね。」


 ヴァルキュリア達が溜息を吐いて、ギルス達に肩を竦めて見せた。

 帰って来たゼンと一緒に年少組が戻って来た。年少組の目が輝いている様に見えた。


「本題を話さなければね。一か月後、ポセドニア共和国から使節団がやってきます。エルノエンジュで歓迎の宴を開くことになりました。ここなら魚と肉の両方を楽しめますからね。」

「うにゅ、屋台の出番なのじゃ。」

「ふふ、それもあります。使節団には共和国の商人や料理人、薬師や鍛冶師などの職人達も来ます。文化交流も目的の一つです。本命はエウロス様からの情報です。使節団が持ってくる積荷を狙い、海賊達が集結しているそうです。エルノワールにクエストの発注です。海賊達の規模と動向の調査。そして、海路の資源確保です。」

「うにゅ、最後が重要な気がするのは何故じゃ。」

「エウロス様は海賊の中に従魔師がいると仰っていました。魔物を連れて来るなら近海の魚を食べるでしょう。大型の魔物になれば沢山の餌を必要とします。それは断固として阻止しなくてはなりません。」


 ニーナ達もヴァルキュリア達も溜息を吐いた。キキはティーカップを置いてニーナを見た。視線に気付いたニーナはシェリーナに向き直った。


「うにゅ、報酬はなのじゃ?」

「規模と動向の確認は大銀貨五枚。規模によりますが、討伐は金貨十枚から百枚です。」


 ニーナはキキの微妙な表情を見て、小さく頷いた。


「少し報酬が少ないのじゃ。」

「仕方が無いの。天竜様の鱗を大量に仕入れることになったから、他の予算が大幅に削られたのだから。」


 煙草を吹かしていたゼンが咽て、キキが肩を竦めて見せた。


「お嬢、後で冒険者ギルドに行こう。しかし、偵察は盗賊ギルドのクエストだぞ。」

「王妃殿下は百年種の蟹を丸っと一体、食べていたな。」

「本当に申し訳ない。我が主人ながら食欲に弱い方なのだ。まあ、私達もですから、微力ながら手伝いをさせてもらいます。」


 ヴァルキュリア達は申し訳なさそうに言うと、ゼンから蟹の足を貰って食べ始めたシェリーナを見た。

 ゼンはシェリーナを一瞥して、何かの作業を再開した。

 ゼンの出した山の様なフライドポテトを摘まみながら、ニーナ達はヴァルキュリア達と打ち合わせを始めた。

 キキは何かの作業を続けるゼンを、ティーカップ片手に眺めていた。ゼンが大きく伸びをすると、キキがティーカップを置いて立ち上がった。


「のじゃ姫。キュイ達を呼んで。ミリアンもアンヴァルを呼んで。ゼンの装備を試すわよ。」


 フライドポテトを慌てて飲み込んで、ニーナ達は指笛を吹いた。すぐにキュイ達とアンヴァル達が舞い降りた。ゼンから渡された青いメタリックに光る鎧の様なアイテムをキュイ達に装着した。


「兜はキュイ達の視覚強化とフェアリーとの連携強化。鞍は物理防御を強化するの。足には移動速度と移動負荷を軽減するわ。特にロックの足に着けた物は飛べないけど、水面は陸上と同じように走ることは出来るの。今度のクエストには必要ね。試してみると良いわ。」

「じ、自在馬。」

「あら、私も自在馬なら欲しいわ。」

「すぐに子を産むでしょう。ライに貰うと良いわ。鞍はゼンが用意してくれるわ。」


 キュイ達はキキに頼み、色を変えて貰っていた。


「キュイ、緑は似合わないのじゃ。赤が良いのじゃ。」

空♂:本当はこの話が終わって、新年がやって来る予定だった。

キ♀:この話を先にすればよかったのに。

空♂:西方遺跡に行かないと、新たな装備が手に入らなかった。

キ♀:遺跡で色々な物を持ち帰ったからね。

空♂:そうです。ヴァルキュリアとティムのギルド加入も予想外だし。

キ♀:貴方の物語よ。

空♂:だよね。でも、何故か少し予定から外れる。武闘大会はどうなる事やら。

キ♀:楽しみにしているわ。

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