西方古代遺跡~調査後3
予告なく修正することがあります。
May-2-2021、一部変更。
険しい顔のアシャがキキと話し始め、ジャン辺境伯はミリアンの魔法で治療してもらっていた。
ゼンが呪装鎧をいじり始めると、飽きたのか年少組がゼンの周りで、見た事も無い部品を触り始めた。山の様な唐揚げとフライドポテトを出して、ゼンがテーブルに置くと年少組は大人しくなった。
四人の護衛騎士も座って、静かに食べ始めた。
ジャン辺境伯はゼンの手元を見て、驚いたり感心したりと百面相を見せていた。
ゼンは遺跡から持ち帰った金属と、分解した呪装鎧の部品と一緒に魔法陣の上に置いた。ゼンが両手を置くと、魔法陣が発動し金属と部品が融合した。
「凄いものだな。あれだけの数を一度に錬成するとは。それに、変わった形の錬成陣だ。」
「ドデカグラム、十二芒星。ゼンの苦心の作よ。大きく十二種類の役割に分けて、中の六角形や四角形、三角形にも細分化された錬成結果が出る。何度も錬成するのが面倒になって、数年を費やして作った魔法陣。」
出来上がった部品を、ゼンは別の魔法陣の上に置いた。同じように魔法陣を起動させると、置かれた部品が次々に組み上がった。
ジャン辺境伯は口を開けて、瞬きもせずに眺めていた。ゼンが近づいても、固まったように動かなかった。ゼンが指を鳴らすと、ハッとしてゼンを見た。
「動きは?」
「動き?動きは動くぞ。」
ギルス達は二人の会話を見て、俯いて肩を震わせた。ニーナに袖を引っ張られたキキが、ティーカップを置いた。
「ふふ、呪装鎧の動きに不満はない?例えば、反応速度とか。」
「おお、そういう事か。呪装鎧だからな。俺が反応しても、呪装鎧の反応は遅れる。あと、腕や足が斜めに動かん。縦に動かしてから横に動かす必要がある。」
「だそうよ。ゼン。」
ゼンの唇が横に広がり、不気味な笑みを作った。そして、呪装鎧の数か所を開き、幾つかの部品を取り出した。ゼンは五、六人が座れるテーブルを出して部品を置き、椅子に座って左目にルーペを着けた。
「小さな望遠鏡みたいなのじゃ。」
「拡大鏡よ。小さな物が大きく見えるの。」
年少組が不思議そうに見つめ、ジャン辺境伯も身を乗り出して覗き込んでいた。
「ジャン、そこにいると顔が焼けるわよ。のじゃ姫達も少し離れた方がいいわ。失敗すると爆発するから。」
魔道具の実験を知っているニーナ達は、脱兎の如くゼンから離れた。少し離れたジャン辺境伯達が首を傾げてニーナ達を見た。
「ブルース卿、気を付けるのじゃ。ゼンが失敗すると大爆発を起こすのじゃ。キキが魔法障壁を出さなければ、妾達の屋敷が吹き飛んでおったのじゃ。その時、ゼンは腕がちぎれて、お腹の中身が出ておったのじゃ。その距離は危険なのじゃ。」
真顔で言うニーナの言葉に、ジャン辺境伯は神速で飛び退いた。護衛騎士達はジャン辺境伯の後ろにいた。
「何故、お前達が俺の後ろにいる?」
「ニーナが言っただろう。爆発するのだ。盾は多いほどいい。」
「俺は盾か。お前達、俺は雇い主だぞ。」
「命あっての物種だ。」
ジャン辺境伯は大きな溜息を吐く姿に、年少組は腹を抱えて笑っていた。
ニーナ達は遺跡から持ち帰ったアイテムをキキに出してもらい、一つ一つを手に取って説明を受けた。ハーレイ達も興味深そうに参加して、様々なアイテムを手に取って眺め始めた。
「この髪飾りは綺麗なのじゃ。ミリアンに似合うのじゃ。」
「それは駄目よ。種族堕ちの髪飾り。着けた者を堕とすの。何処かの伯爵の様にね。」
「うにゅ、恐ろしいのじゃ。こっちの緑はララに似合いそうなのじゃ。」
「それは良いわ。運が少し良くなる耳飾りよ。」
ニーナ達に護衛騎士達が参戦して、アイテムを試し始めた。キキが危険なアイテムを収納すると、アシャが安心したように息を吐いた。
ゼンが呪装鎧を組み上げて、ジャン辺境伯を呼んだ。乗り込んだジャン辺境伯は驚きの声を上げた。
「凄いぞ。反応にずれが無くなった。それにこの動き。自分の身体と全く変わらん。よし、これを。おっ、持てたぞ。割らずに持つことも出来た。」
呪装鎧には小さすぎるティーカップを、器用につまみ上げた。護衛騎士達から驚きの声が上がった。
「ポンコツのせいで良く死にかけていたが、あの動きは本人そのものだ。」
「よく死ななかったものだ。シンクロシステムから関節等の中身は全て入れ替えた。ベーススペックは三倍に跳ね上がったはずだ。五つの魔力炉を搭載し、アースドライブも組み込んである。全方位スキャン可能で、危険にはアラートが鳴る仕組みだ。ディスプレイも変えた。目前を見ながら別の画像を見ることが出来る。ディメンションガードシステムを搭載して・・・。」
「キキ、ゼンがまた壊れたのじゃ。」
ニーナの言葉にキキがクスクスと笑うと、ゼンは少し寂しげに黙ってテーブルを片付けた。
ジャン辺境伯の呪装鎧は宙返りを披露して、ハーレイ達を驚かせていた。
「おいおいおい、ジャン卿の身体能力がそのまま、呪装鎧に反映されるなら無敵だぞ。」
「前よりも消費魔力が下がっているな。使用時間が見えるのか。むっ、丸一日じゃないか。その後は、魔石の交換が必要なのか。凄いぞ。」
「丸一日だと。破壊の権化の出来上がりだぞ。ニーナ、ジャンは槍の達人だ。呪装鎧無しの方が強いのだ。そして、彼は神槍グングニルを持ち、一人で百人を倒した事もある。それが、十倍になるなら千人とも戦えることになる。王国で一、二を争う実力を得た事になる。」
ハーレイ達は自在に動く呪装鎧を見て、目を剥いてその動きを見詰めていた。
「それは凄いのじゃ。しかし、ハーレイよ。千人ぐらいなら妾も戦えるのじゃ。多分、ギルスもエレンも簡単に戦えるのじゃ。ゼンとキキは万の軍勢にも負けんのじゃ。うにゅ、やっぱり始まったのじゃ。」
ニーナの言葉にハーレイは驚いた表情を浮かべた。ハーレイがニーナの視線を追うと、ゼンと対峙するジャン辺境伯がいた。呪装鎧がその巨体に見合った、幅広の大剣を出して構えた。
そして、鍔鳴りが鳴り響いた。
「うにゅ、ゼンが刀を抜いたのじゃ。」
キ♀:今、気付いたけどジャンの呪装鎧の描写が無いわね。
空♂:うにゅ、気付いたか。
キ♀:当然、気付くでしょ。まさか、貴方。また・・・。
空♂:今日の夕食はインスタントラーメン。昨日も、一昨日も、その前も。
キ♀:ここ七日間はラーメンばかりでしょ。やっぱり、考えてないのね。
空♂:うにゅ、ロボットは男のロマンだ。誰もが心に自分だけのロボットを持っている。
キ♀:いい加減な事を。そんな訳ないでしょ。一部のオタクだけよ。貴方を含めたね。
空♂:うにゅにゅ、どうしても魔人臥亜絶途が頭から離れない。
キ♀:その字を正しく読める人間が何人いるかしら。
空♂:この世界の呪装鎧は、鈍重な重機の様な扱いだな。
キ♀:パワーシャベルが鉄男やロボ戦士になれば、技術革新どころではないわね。
空♂:現時点では箱を繋ぎ合わせた様な、昔のロボットが呪装鎧のイメージ。
キ♀:それで今回のジャンの呪装鎧は?
空♂:3メートル位の鉄火男。
キ♀:鉄火男が意味するもの判る人間も少ないと思うけど。
空♂:ふっふっふ。
キ♀:考えていなかったのに、今考えたのね。
空♂:いずれ出します。いずれ。
キ♀:期待しているわ。蚊の溜息ぐらいにね。




