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そして、お嬢様は旅に出る。~ニーナの大冒険~  作者: 沢山空蔵
西部辺境区編
166/461

西部戦線異状あり~終わり

予告なく修正することがあります。

May-1-2021、一部変更。

 その頃、ヴァルファルニア王国の王宮では、大臣達が緊急招集された。


「ペルシアナ王国の王城が消えた。」

「あそこは城と言うよりは、要塞と言った方が良い代物だぞ。噂では真竜のブレスすら防ぐとか。」

「ゼンの力はトゥルードラゴンをも凌ぐと言う事か。よくよく恐ろしい男だな。」

「エンジュ様はあの二人には、絶対に勝てないと仰っていたからな。星龍様をも凌ぐと言うことになる。まさに化物と言う事だ。事によると魔王より脅威になりかねない。」


 一人の大臣の言葉に、集まった者達は沈黙に包まれた。

 国王が手を上げると、中央に画像が浮かび上がった。大臣達の目が釘付けになった。


「牙の一人が映像を送って来た。彼に許可を貰ったそうだ。」

「恐ろしい物だ。」

「城が一瞬で崩れ落ちる。あれがアシャ様の仰っていた、御業と言うものなのか。」


 部屋に浮かび上がった映像は、ゼンの一振りで崩壊する城が映っていた。その場にいた全員が呆然となった。ただ、静かに見詰める事しか出来なかった。


「しかし、これで大公閣下の思惑通りと言う事ですかな。」 

「まさか、これ程のものとわな。」


 ゼルス大公は映像から目を反らして、俯いてから小さく呟いた。


「アシャ様から見せて頂いたものが、我等を説得するための誇張ではなかった。それと、ショアガード大公に伝言だ。今回は許すそうだ。意味は分かるな。皆も肝に銘じておけ。今後も彼等に関わる事は許さん。これは彼等にクエストを発注する職を作らねばならんな。軍務卿、財務教、外務卿。それと、内務卿は彼等に発注する案件を精査せよ。対国家の問題は今回限りだ。彼等への連絡はショアガード大公を筆頭にヴァンゼルト・レオ・ギルフォード子爵、アリオン・シル・クロス伯爵がよかろう。二人はショアガード大公の直属とする。ゼルス、頼んだぞ。」

「もう一人、キュリウス・ミラン・ナザレウス男爵を加えて頂きたい。彼もエルノワールと親しいと連絡があった。ハート辺境伯は独立させるしかないな。」

「国王陛下、大公閣下。恐れながら申し上げます。ハート卿にこれだけの裁量を与えては危険かと。」


 一人の貴族の言葉に賛同する貴族達が、口々に持論を喋り始めた。国王が手を上げると、騒がしかった部屋に静寂が戻った。

 国王が視線を向けると、ゼルス大公が立ち上がった。


「あの男はこの王国を絶対に裏切らん。王国のためなら儂や国王陛下と言えど、間違っていれば殴ってでも正す男だ。ここの誰よりも王国の未来を案じておる。ハート卿は王国の手綱だと知れ。」


 ゼルス大公の言葉に大臣や出席していた貴族達が、一斉に頭を垂れ臣下の礼を取った。少なくない貴族の顔に、どす黒い表情が見て取れた。

 国王の言葉で会議が終了した。ゼルス大公は一人で、バルコニーに出て空を見上げた。


「ゼンよ。感謝する。」


 私室に戻った国王は椅子に座り、長い溜息を吐いた。そして、顔を上げて呟いた。


「ライ、シェリーナとミレーナを頼むぞ。そして、許してくれ。お前に厄介な仕事を押し付けた事を。」


 アシャは光の中を歩いていた。光しか存在しない世界。歩みを止めたアシャが手をかざすと、光りに裂け目が生じて左右に開いた。

 そこには光の中に無数のモニタが浮かんでいた。無数の映像の中には、様々な場所が映されていた。一際、大きなモニタにはニーナ達が映っていた。

 大きなモニタの前に三人の影が座っていた。アシャが近づくと、床から椅子がせり上がった。アシャは静かに座り、他の人影を見渡した。


「ヴァルナ、クエストを発注たのね。結果は満足?」

「月の雫が一樽、五百本ぐらいかしら。さすがに堪えるわね。集めるのに三千年程かしら。」

「国を救ったのだ。妥当と言えるだろ。邪神討伐の時には十の樽が用意されたと聞く。」

「何にせよ、彼等への依頼は高くつくの。ミティスの様には成りたくないでしょ。」

「あれはあれで楽しんでおるのだろう。まっ、今まで通り観察だけに留めよう。」


 アシャは溜息を吐いて、三人の人影を見詰めた。ヴァルナと呼ばれた人影は、立ち上がると部屋を出て行った。アシャは残った二人を見据えて、仁王立ちになった。


「私に彼等への連絡係を押し付けて、貴方達は観察しているだけ。でも、ヴァルナはもう、逃げられない。複数の国に加護を与えている貴方達は、私やヴァルナ以上に注意しなさい。あの二人が敵だと認識すれば、私達と言えど・・・。」

「心配はないよ。アシャ。僕達は見ているだけさ。これまでもこれからもね。」

「その通りよ。私達は見ているだけ。私達は観察者。神なんて存在ではないわ。」

「そっ、観察だけね。面白半分に妙な魔物をけしかけたりしない事ね。ニーナ達が傷つけば、あの二人は貴方達を敵だと認識するわ。あの殺気を受けると良いわ。滅びを覚悟するしかない、あの殺気をね。」


 アシャは溜息を吐いて、部屋を後にした。一人、光りしか存在しない場所にアシャはいた。


「彼等には関わるな・・・か。忠告だと思わなかった。大袈裟な話だと思った。我々を滅ぼす存在など、考えもしなかった。本当にいたのね。存在自体が理不尽よ。もう、誰か変わってよ!」

「要求の回答です。否、百パーセント。全ては貴方様方に任せられています。」

「はあ、何となく判っていたけど、命懸けって・・・ぞくぞくするわね。良いわ、見せてあげる。この世界の物語を。見ていればいいわ。あの二人のイレギュラーが、どんな影響を及ぼすか。」


 ニーナ達を観察しているもう一つのグループがあった。


「嘘、ですわ。」


 エンジュと天竜達は世界から隔離された、竜族の秘匿領域でニーナ達を見ていた。


「あれは想定外ですの。」

「エンジュ様、チビ姫の魔法の威力が跳ね上がっています。」

「あれを喰らえば我等とて、無傷と言うわけにはいかんな。まあ、結界があるから問題は無いがな。」


 エンジュは扇子で口元を隠して、呟きが天竜達に聞こえていなかったのを確認して小さく息を吐いた。ゼピュロスとエウロスは顔を見合わせてから、落ち着かない様子で他の天竜を見た。


「二人ともどうかしたの。」

「い、いや、何でもないよ。なあ、エウロス。」

「ゼピュロスの言う通り、何でもないのよ。あっ、ボレアースの好きなたこ焼きって言ったかしら。また、食べたいものね。」


 ノトスとボレアースの眼が細められた。ゼピュロスとエウロスは視線から逃れるように、立ち上がると部屋を出ようと足早に歩き始めた。


「待つのですわ。貴方達、私に報告することがあるのではなくて。素直に話しなさい。」

「うっ、エンジュ様。実はエウロスが・・・。」

「はっ、ゼピュロス。貴方が先に言い出した事でしょ。」


 騒ぎ出した二人をエンジュは目で合図すると、ボレアースとノトスが後ろから拳骨を落とした。

 エンジュの背に燃える炎を見て、四人の天竜は片膝をついて平伏した。


「ゼピュロスがミリアンに爪を与えました。」

「エウロスはララとミリアンに爪を与えました。」


 地面に頭を擦りつけて、お互いの隠し事を言い合った。


「何だ、そんな事か。儂はギルスとロロに爪をやったぞ。」

「私もエレンとララに渡してあげた。」

「私はゼンに鱗を渡して、全員の耳飾りにしてもらいましたわ。」

「へっ。」


 ボレアースとノトスを口を開けて見ていた二人は、エンジュの言葉に呆然と座り込んだ。


「お前達の加護では精々、ステータスアップが関の山ですわ。チビ姫の上昇が可笑しいのです。キキと話す必要が出来ましたの。」


 エンジュが消えると天竜達は顔を見合わせた。


 そんな会話を知らないニーナ達は夕食を摂り、翌朝の調査に備え眠りに就いた。


「うにゃむにゃ、もうお腹一杯なのじゃ。」

キ♀:ヴァルファルニア王国は良いとして、アシャもエンジュも出歯亀が趣味とわね。

空♂:いや、そういう事ではなくて、アシャは世界の観察者で、エンジュはこの世界の神だよ。

キ♀:観察者の割には積極的に動いているわね。

空♂:舞台になっている世界は、二千年以上前にある文明が栄えていた。それが滅びかけた。

キ♀:そこでエンジュとアシャ達が、白き凍滅の魔女を支援したのね。

空♂:そう、前文明は滅び、魔法が存在する世界となった。これはエンジュやアシャの思惑通り。

キ♀:魔法があると科学の発達が無くなるわね。

空♂:動力は魔力になり、魔石と言う高効率の燃料で賄える。

キ♀:公害も無く環境に優しい世界が出来上がるのね。

空♂:それでも争いだけは無くならない。人間の業と言うものかも知れない。

キ♀:そうかもね。まっ、次回から遺跡調査ね。楽しみにしているわ。

空♂:頑張ります。

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